高校時代のサックスが復活
──先ほどアルバム全体の印象を「穏やか」だと言いましたけど、1曲目の「Miracle Shine」はすごく勢いのあるナンバーで、ユッコさんらしい表情がグッと見えるこういう曲があるからこそ、穏やかな曲がより映えるなと。
ありがとうございます。今作ではソプラノサックスを使ったふんわりした曲をいくつも作ったので、制作の途中で「四つ打ちのノリノリなヤツも作らなきゃ!」と思って(笑)。ライブでもお世話になってるベーシストの中村ヒロキさんと一緒に練習スタジオに入り、セッションに近い雰囲気で作ったんですよ。たまにそういう作り方をするんですけど、そこで生まれるものは普段、自分1人で作ってるものは違ってくるなという感覚があります。この曲には私のカラーに加え、けっこう中村カラーが入ってる(笑)。一番ノれる曲になったので、アルバムの1曲目に持ってきました。
──ユッコさんの武器であるアルトサックスの持つ多彩な表現力を存分に感じさせてくれる曲でもありますよね。
実は私、高校1年で吹奏楽部に入ったときはソプラノサックスを吹いていたんです。2年生からアルトになったんですけど、そのとき親におねだりして買ってもらったアルトサックスがあって。それがこのアルバムジャケットで持っているサックスなんです。レコーディングでもアルトの曲は全部それを使いました。
──へえ! ユッコさんが最初に自分のものにしたサックスの音が、メジャーデビュー10年のタイミングでリリースされるアルバムで鳴り響いているわけですか。
そうなんです。高校生のとき以来、ずっと実家で眠らせていたんですけど、2年ぐらい前かな、「あのサックスをまた吹いてみたいな」と思って。親に送ってもらって吹いてみたら、「絶対プロになるんだ!」と意気込んでいた高校生のときの思い出が一気によみがえってきたんですよ。それ以降はそのアルトサックスをメインで使うことにしました。これからも使っていくつもりです。
ポケカ仲間とコラボ
──アルバムには和太鼓奏者である一彩さんが参加された曲も収録されていますね。「3-3-7」と「AKUJYO」の2曲です。
今回のアルバムでは「10年経った今の私はこれです」と提示することをテーマにしています。でもメジャーデビューから10周年だからといって、いつもと違うことをしたり、変に着飾ったりするのは違うなと思っていて。最近の私は“和”の要素を取り入れたプロジェクト「Yucco Miller Japan Project」でライブをやっていて、そこで一彩さんの和太鼓ともコラボしてるんです。日本の伝統的な楽器と一緒にやることがすごく楽しいので、今回のアルバムにも自然な流れで参加していただきました。
──この2曲は、一彩さんと一緒にやることを想定して作ったんですか?
はい。今年の頭にやったライブでは「春の海」とか「越天楽」をジャズアレンジで演奏したんですけど、アルバムにはオリジナルの曲を入れようと思って。
──「AKUJYO」はメロディにも和のニュアンスが感じられますよね。
そうですね。私は和を想起させる音階がすごく好きなので、それを使った曲を前から作ってみたかったんです。レコーディングに関しては、和太鼓以外のパートをまず「せーの」で録り、その上に一彩さんに和太鼓を重ねてもらいました。そのときに「もっとこうしてほしい」というイメージをたくさん伝えさせてもらって。
──例えばどんなオーダーをしたんですか?
「3-3-7」はすごく激しい曲で、私も激しくサックスを吹いているんです。でも一彩さんはすごく真面目な方なので、最初は冷静な太鼓を入れてくれていて。なので、「私のソロは人を殺すぐらいの勢いで吹いているので、一彩さんもそれを越えるくらい人を殺す感じで叩いてください!」って(笑)。
──あははは。言い方(笑)。
そうしたら「わかりました」と言ってくれて、グワ―ッと最高の演奏をしてくださったんです。そのときちょうど東京で軽い停電があったんですけど、一彩さんの太鼓をきっかけに照明が一瞬、チカッと点滅して。「一彩さんのパワーが電力にまで影響した!」と、みんなで盛り上がりました(笑)。
──そのお話の通り、本当に力強い和太鼓の音が音源に刻まれています。ちなみに一彩さんとのお付き合いは長いんですか?
だいぶ前に一度、イベントでご一緒してから知り合いではあったんですけど、仲よくなったのはこの1年くらいかな。きっかけはポケモンカードゲーム。私が「誰か一緒にポケカやろうよ」とInstagramで呼びかけたら、一彩さんから「一緒にやりましょう」とDMが来て、そこから仲よくなったんです。私の周りにはポケカをやってる人が多いんですよ。さっきお話ししたベーシストの中村ヒロキさんや演歌歌手の中西りえさん、ピアニストの平手裕紀さんもポケカ仲間です。
──みんな「Japan Project」のメンバーじゃないですか。
はい。みんな最初はポケカでつながったんですけど、「どうせだったらこのメンバーでライブをやろう!」と始まったのが「Japan Project」なんです。
──今作は中村さんを筆頭に「Japan Project」の面々がレコーディングにも参加されていますよね。
そうなんです! 今回は気心知れた方々と一緒にやりたかったんですよ。レコーディング前には3日間くらいスタジオで一緒に音を出す時間を設けて、アレンジに関するいろんなリクエストをさせてもらいました。そうすると皆さん私の想像を超えた提案をしてくれるんです。ずっとそういう作り方がしたかったので、このメンバーで実現できたのがすごくうれしいですね。
これが私の“序曲”
──アルバムの最後に収録されている「My Prelude」についても聞かせてください。ご自身が初めて作った楽曲とのことですが。
高校2年生のときにめっちゃ一生懸命作った曲です。譜面はもう残ってないんですけど、細かいところまで全部覚えていて、「もしかしたらソプラノサックスと合うんじゃないかな?」と思いついたんです。「My Prelude」というタイトルも今回のタイミングで付けました。これが私の“序曲”だなと思ったので。作りながら当時のことをたくさん思い出しましたね。
──トイピアノが使われているのも印象的ですよね。
トイピアノにも実は意味があって。私は3歳からピアノを習ってたんですけど、家にはちゃんとしたピアノではなくトイピアノしかなかったんです。あるとき教室のグループレッスンがあって、ほかのお姉ちゃんたちはみんな上手に弾いている中、私は弾けなかった。「家にトイピアノしかないんだから弾けるわけないでしょ!」と思って、教室からピュ―ッと飛び出しちゃったんですよ。その思い出がめっちゃ記憶に残っていたので、今回トイピアノを入れました。あそこが私にとっての序曲でもあるなと思ったので(笑)。
──10周年のアルバムの最後に配置されたことに意味を感じますよね。10年のキャリアを“序曲”と捉えている気もするし、ここから新たな“序曲”が始まるという意味にも受け取れます。
確かにそうですね。全部の曲が出そろったときに、なんとなく「My Prelude」を最後にしたいなと思ったのが理由なんですけど……今後は「これからの“序曲”という意味を込めて」と言っていくことにします(笑)。
──素敵なアルバムがリリースされたので、それを携えたライブにも期待したいところです。
実はもう決まっていて。7月24日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで10周年記念ライブをやります! まだ詳しいことは決めてないんですけど、10年の軌跡が見えるものにしたい気持ちもあるし、お祭りのような1日にしたいですね。アルバムの曲たちもライブではさらにいい形になると思うので、それが私としても楽しみです。
──ここからのユッコさんにも期待してます。
ありがとうございます! アルバムのタイトル通り、これからも変わらず「今を咲き続けたい(Blooming)」という気持ちを持ちつつ、その時々のやりたいことを楽しんでいこうと思います。
公演情報
YUCCO MILLER 10th Annivesary Live "Bloomin'"
2026年7月24日(金)東京都 SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
プロフィール
ユッコ・ミラー
三重県伊勢市出身のサックスプレイヤー。高校生時代に吹奏楽部へと入部し、アルトサックスの演奏者として活動を開始。在学中からパリやウィーンなどへ演奏旅行を行い、河田健、川嶋哲郎、エリック・マリエンサルらに師事してきた。2016年9月にキングレコードよりリリースしたアルバム「YUCCO MILLER」でメジャーデビューを果たす。2018年発表の2ndアルバム「SAXONIC」で「JAZZ JAPAN AWARD 2018」のアルバム・オブ・ザ・イヤー枠でニュー・スター部門賞を受賞した。テレビ番組にも数多く出演し、2018年からはYouTuberとしても活動している。2026年2月にメジャーデビュー10周年を記念したオリジナルアルバム「Bloomin'」をリリース。
YUCCO MILLER OFFICIAL WEBSITE|ユッコ・ミラー公式ウェブサイト
ユッコ・ミラー Yucco Miller (@yuccomiller) | X



