yonawo|バンドの新たな一面が垣間見える2ndアルバム「遙かいま」完成

結局歪ませるからね

──「ごきげんよう さようなら」は、しっとりしたジャジーなフレーズから入りますが、後半はいつの間にか激しいロックサウンドに変わっていきますよね。

荒谷翔大(Vo) 斉藤雄哉(G)

荒谷 そうですね(笑)。「ミルクチョコ」(2019年11月配信のメジャーデビューシングル)という曲があるんですけど、そのもとになったのが「ごきげんよう さようなら」なんです。全編英詞だったところから日本語に訳して先に出したのが「ミルクチョコ」で、「ごきげんよう さようなら」はだいぶ前に書いたまま寝かしていて。

──なるほど。

荒谷 音源化するにあたって改めてコードを付け直したんですけど、サビはOasisっぽいコードを意識しました。先ほど言っていただいたジャズっぽいフレーズから、なんとかそっちに持っていけないかなと思ってアレンジをしていって、だったら最後はブチ上げようかということでこの形になりました(笑)。

斉藤 最後のギターソロは、あらちゃんと2人でアンプを2台並べて、せーの!で向かい合って弾いて作りました。爆音で鳴らしたので、ヘッドフォンをしていても何も聴こえないままやっていましたね。

荒谷 お互い相手の手の動き見て「上に行ったな」みたいな(笑)。

──「beautiful Day to Die」も通ずるところがありますよね。この楽曲も非常にダイナミックな曲だと思います。

荒谷 これは作るときにジェフ・バックリーをイメージしました。

──なるほど。トム・ヨークっぽさも感じます。

野元 まさにミックスのリファレンスにはRadioheadが挙がってました。

──Radioheadがルーツにある斉藤さんとしては、こういう楽曲を作るときに一番上がるんじゃないですか?

斉藤 そうですね(笑)。音作りは一番テンション上がります。この曲はアウトロにノイズを入れたいねと話していて、持ってるエフェクターをスタジオに全部並べてガー!っとやったらこれが録れました。

荒谷 あれ、よかったよね。この曲は僕がPortisheadみたいなコードを弾いて、そこにみんなが即興で合わせる形で作っていきました。

──yonawoはメロウなイメージがありますが、実はこういう楽曲も得意ですよね。

田中 得意かはわからないんですけど、スタジオに入って遊びでセッションするときはこっちの方向に行くことが多い気がします。

斉藤 こっちに行くの好きだよね(笑)。スタジオでセッションしたときに、曲が小綺麗にまとまったことがない。

野元 結局歪ませるからね(笑)。

──なんで歪ませたくなるんだと思います?

荒谷 セッションしてたら眠くなってくるから?

斉藤 うん。それで歪ませようって。

はかどらないときは脱ぐ

──今作には荒谷さんと斉藤さんの2人で作られた曲がありますね。

荒谷 「The Buzz Cafe」ですね。

斉藤 今年から福岡にプライベートスタジオができたんです。そこで僕が進行を考えた曲にあらちゃんが歌詞を付けてくれて、「じゃあそのまま録ろうや」と話してレコーディングしました。ドラムはのもっちゃん(野元)が電子ドラムを叩いて付けていったんですけど、肉付けしていくうちに、わりとセッションっぽい感じの曲になっていきました。

──「はっぴいめりいくりすます - at the haruyoshi / Take 5」は、素朴なサウンドが心地いいです。

野元喬文(Dr) 田中慧(B)

斉藤 これも同じプライベートスタジオで録った曲です。マイク6本くらいで、クリックを聴かずに一発録りで。

野元 自分が持っている小さいラディックのセットを使って、楽しんでレコーディングしました。

荒谷 ほかの曲に比べたら何も考えてなかったよね。

野元 本当にそう(笑)。

斉藤 一番素が出ている気がする。これ録るとき、俺ら気合い入らんくて1回みんな服脱いで演奏したもんな?

田中 いや、俺は脱いでない。

──(笑)。はかどらないときは脱ぐんですか?

田中 僕以外は脱ぐのが好きなんですよ。雄哉はすぐ脱ぎます(笑)。

荒谷 のもっちゃんの場合は、気合いが入ってないときによく脱がされますね。でも、そうしたらいいテイク録れるんですよ。

──「美しい人」も、素材を生かしたようなサウンドに感じます。

田中 実はベースはだいぶ手を加えています。プレシジョンベースで録音したんですけど、たぶん音源を聴いたらウッドベースで録っているように感じますよね。ミュートを効かせて、弦が擦れるときのニュアンスをウッドベースに近い感じに仕上げたので、オーガニックな印象を受ける楽曲なんですけど、ベースはミックスで魔改造されていて。

荒谷 魔改造(笑)。

──とにかく音がきれいですね。

野元 そうですね。ドラムはskillkillsのビートさとしさんにテックで入ってもらって、音作りしてもらいました。ヤマハのセットで録ったんですけど、オープンの音を聴かせたくて大きいハイハットを使ったので、ハイハットの伸びがよく、音が少ない曲の中でも耳に残るきれいなサウンドになりました。本当はパーカッションも入れようと思っていたんですけど、音がよすぎたのでこれでいきましょうって話をして。締めに相応しい曲になりました。

自分自身との対話

──1stアルバムのブックレットには荒谷さんが書かれた短編小説が載っていましたが、今作にも短い文章を添えていますね。

yonawo

荒谷 自分なりに「遙かいま」というタイトルを表現するような、アルバム全体の世界観をイメージできるような言葉を書けたらと思って今回も短めの詩を載せています。

──「恋文」の「私は私じゃないわけない 貴方は私じゃないわけない」というラインも印象的で、全体的に自分自身との対話と言いますか、もう1人の自分=あなたと話しているような印象を受けました。

荒谷 芯のところは前作「明日は当然来ないでしょ」と変わっていなくて、「遙かいま」というタイトルも、前回同様に相反する言葉を並べているんですよね。“遙か”という遠いものと、“いま”という自分たちの所在を表す言葉を1つの言葉として書くような表現が僕は好きなんですよ。その言葉を聞いたときに落ちていくような感覚を要所要所に入れることで、楽曲を聴いてくれた人たちにも共有できるのかなと思って。

──なるほど。

荒谷 「木綿のハンカチーフ」のような対話形式の詞が素敵だと思っていて、「美しい人」の歌詞はそのイメージで書きました。ただ「木綿のハンカチーフ」は恋人同士の対話ですけど、自分がそうした歌詞を書く場合は恋人同士ではないなと思って、自分なりの対話を書きました。“私は私、あなたは私”という感覚を最後にうまいこと曲に落とし込めた思っているので、「美しい人」は自分自身アルバムの中でも気に入っている楽曲です。

──心の中にいる自分と対話するような感覚は、荒谷さんにとって重要なテーマなんですか?

荒谷 “誰かと対話すること=自分と対話すること”という意識はありますね。なので誰かを本当に理解したかったら、自分と対話することが近道なんじゃないかなって。

──小説を読むのが好きとお聞きしましたが、ここ1年くらいで感銘を受けた作品はありますか?

荒谷 小説ではないんですけど、量子力学や物理学を、詩や哲学者の言葉を交えて解説していくという授業形式の本(佐治晴夫「量子は、不確定性原理のゆりかごで、宇宙の夢をみる」)があって。ひと目惚れして買ったんですけど、めちゃくちゃ面白いんですよ。自分の詩はそこにルーツがあるのかなと思いました。

──そこ、というのは?

荒谷 僕は物理学者になりたかったんです。昔から国語より数学のほうが好きで、そこに表現のルーツがあるなって感じました。そして僕は学校の国語が嫌いだっただけで、言葉そのものは好きだったんだなと最近気付いたんですよ。詩や言葉って数字を扱う人たちとは交わらないように見えて、意外と表現したいことは一緒なのかなと。その本を読んでいると、どの分野も最終的に伝えたいことや、行き着くところは一緒なんだなって。数学者が方程式で表現していることを、詩人は言葉で表現する感覚があって、僕は物理学者にはなれないけど、言葉で同じものを追求できるのかなって思います。

──その追求するものというのが、「遙かいま」で歌われていること?

荒谷 そうですね。“私に会えた”みたいな感覚です。

外に出てみようか

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──最初に大衆的な楽曲を意識したという話がありましたが、それはバンドとして次のステージにいきたいという気持ちが反映されているんでしょうか?

田中 1stアルバムには内に向かっている感じがあったと思うんですけど、今作は「外に出てみようか」みたいな感覚があります。外に出て人と会って、自分の新しい一面を知る、そういうアルバムになったのかなと。プロデューサーと一緒に作品を作ったというのも、まさに外に出て人と会った感じですよね。

──なぜ外に出られたのでしょう?

野元 外にいる人たちと関係を築けたからですかね。1stアルバムを出したことで、いろんな人と関われたのが大きいです。

荒谷 あと1stアルバムでyonawoの音楽というものを、自分たちなりに表現し切れたからなのかなって。揺るがないものとしてあるのがわかったので、これならどういう状況でも、僕たちを僕たちとして表現できるんじゃないかって自信になりました。

──ライブの規模もどんどん大きくなっていますね。

荒谷 そうですね。それに関しては少しプレッシャーを感じてます(笑)。今回のツアーではもっとバンドとしての音を追求できたらと思っていて。前回は同期を流してやる曲が多かったけど、それも使わず4人の音で演奏したいです。

ツアー情報

yonawo 2nd full album「遙かいま」release one man live tour
  • 2021年10月2日(土)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2021年10月3日(日)大阪府 なんばHatch
  • 2021年11月13日(土)宮城県 Rensa
  • 2021年11月14日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2021年11月20日(土)福岡県 UNITEDLAB
  • 2021年11月21日(日)広島県 広島セカンド・クラッチ
  • 2021年12月2日(木)東京都 USEN STUDIO COAST