自分の声の整え方がすごく納得いくものに
──アルバムには4編の新録曲が収録されています。まず1曲目は「fortunes」ですね。
この曲はカンテレ「グータンヌーボ2」のエンディングテーマに使用していただいていて。番組を見てくださった方から「早くフルで聴きたい」という声をたくさんいただけているので、私としてもいい手応えを感じることができています。アルバムは「アシンメトリー」で始まって、2曲目にこの「fortunes」、そして次の「Answers」とアップテンポなラブソングが3曲続くんですよ。そういった流れは今までのアルバムにはなかったものなので、ちょっと新しいんじゃないかなと。
──歌のレコーディングはいかがでしたか?
最近、アッパー系の曲のレコーディングのときに、自分の声の整え方がすごく納得いくものになっているんです。だからこの曲もすごく気持ちよく歌うことができて。スタジオに1人でこもって2時間くらい歌ってから本番に臨むので、サウンドプロデューサーの玉井(健二)さんには「お、またスタジオ行ってきたね。声出てるね」って言ってもらえたりもして。「アシンメトリー」で手に入れた感覚が、よりいい形でカチッとハマり始めていることを実感できた曲でもありました。
──しかし本番前に2時間歌うってすごいですよね(笑)。
ほかのアーティストさんがどういう感じでやってるのかわからないですけど、私の場合はそういうやり方が合ってるみたいで。要はスロースターターなんでしょうね(笑)。ノドがあったまるまでに時間がかかるという。
──長年一緒に楽曲制作を続けてきた玉井さんから、歌の成長に関して何か言われることってありますか?
えー、どうだろうな。あんまり言われないかも(笑)。あ、でもテイク数は明らかに減りましたね。昔は声の出し方やニュアンスに関して玉井さんから細かくディレクションしていただいていましたけど、最近はそれもあまりなく。すごくスムーズ。
──それは安田さんの歌のスキルが上がったことの証明ですよね。あれこれ言わずとも曲が求める表現を出してくれると玉井さんは安心してるんだと思いますよ。
そうなのかな。まあ、元気ロケッツ時代にさかのぼれば、ワンフレーズを30から50テイクくらい録って、その中からいいものを選ぶみたいなときもあったので。そこからしたら確実に成長を感じてくれてるとは思うんですけど(笑)。
自分の本性を出していきたい
──続いては「Answers」。こちらもアップテンポなラブソングですが、ちょっと切ない内容が歌われていますね。
そうですね。お互いに気持ちが離れ始めてきた2人が、それぞれの答えを知ろうとするっていうストーリーですね。すごく切ないですけど、でもマイナスすぎないメッセージにはなってるかなと思います。
──答えを求めることって実は怖いことでもありますよね。ときに傷付いてしまうこともあるわけなので。でもこの主人公は前を向くために答えを知ろうとしている。安田さんもそういうタイプですか?
どうだろうなあ。答えを確かめたい気持ちはあるんですけど、その答えを知ったときの自分の心の状態を想像して、「ちょっと時間をください」と先延ばしにするタイプかな。で、結局聞かないかも。ホントに私は弱いんですよ(笑)。こういうインタビューとかでも「私は大丈夫!」みたいにずっと強がってきましたけど。
──でも、今回のアルバムをきっかけに弱い部分もさらけ出すことを決めたわけですよね。裏を返せば、自分の弱ささえも吐露できる場所が音楽でもあるということで。そういう場所を持っていることは安田さんにとってすごく大きなことだと思うんです。だって例えばファッションショーで自分の弱さを見せることなんてできないわけじゃないですか(笑)。
確かにそうですね(笑)。振り返ると私は12歳の頃からこの世界で活動していますけど、そのときって周りに大人の人しかいなかったんですよ。だから、どこかで「なめられちゃいけない」「もっとしっかりしなきゃ」っていう気持ちがあったんだと思うんです。それがその後の活動の中でもずっと残っていったんじゃないかなって。
──なるほど。もしかしたら、そういう強い気持ちを持っていなかったら、ここまで歩んでこられなかった可能性もありますしね。弱さを押し隠すことがサバイブするためには必要だったのかもしれない。
そういう意味では今までの自分を褒めてあげてもいいのかも(笑)。そのうえで、ここからは被っていた皮を脱ぎ捨てて、いよいよ自分の本性を出していきたいです。そのためには音楽がやっぱり必要。ここからの私には音楽が今まで以上に大事な、重要なものになっていくことは間違いないですね。
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私は“息フェチ”