音楽ナタリー PowerPush - 安田レイ

彼女の“新年”を飾る 3人のヒロイン

自分の言葉と人の言葉、全然違う2つを楽しむ

──これまで安田さんは元気ロケッツのボーカリストとして、そしてソロのボーカリストとして活動してきている。別段役者の経験があるわけでもないのに、今回の「恋詩」がそうであるように、なぜ演じるように歌えるんですかね?

安田レイ

これも以前にもお話させていただいたことなんですけど、小さい頃から妄想癖があったので(笑)。

──あはははは(笑)。いい映画を観ると主人公になりきっちゃうって言ってましたよね。

しかも単にセリフや振る舞いをマネるだけじゃなくて、その人になりきって安田レイとしての1日を過ごしたりするんですよ。けっこう楽しいので、皆さんにもぜひやってみてもらいたいなって思ってます(笑)。

──その妄想術を育んだ結果、歌えている?

それは半分冗談半分本気っていう感じなんですけど(笑)、あとは小学6年生のときにオーディションを受けて、中学生のときに元気ロケッツのメンバーとして歌い始めたっていうこともあるんだと思います。元気ロケッツのLumi、「地球を見たことがなくて、その地球に憧れている少女が歌う」っていうコンセプトのユニットだったから、自分でありながら、どこか自分じゃない。曲を通じて別の誰かになりきりながらも、自分も表現してきたことも影響しているんでしょうね。

──「恋詩」もしかり、元気ロケッツ時代の楽曲もしかりなんですけど、そのほかの誰かになりきることや、ほかの誰かから受け取ったメロディや言葉を歌っているときの安田さんってすごく楽しそうですよね。

やっぱり妄想癖があるので(笑)。曲ごとにメロディや使われている言葉も違うし、主人公像も違うんですけど、そうやっていろんな世界、キャラクターを歌うことで自分が変化していくこと自体、すごく楽しんじゃってます。あと単純に歌うこと自体が好きだから、いろんなメロディを歌えるのは楽しいんですよね。

──ただその一方でご自身も作詞しますよね?

まだ数曲しか書いてないんですけど、それが安田レイと元気ロケッツの一番の違いなんだと思います。いろんな主人公になりきれる楽しさと同時に、自分の思ったことをストレートに表現して、しかもファンの方から「レイちゃんの素の部分が見られてすごくよかった」って言ってもらえる楽しさも知っている。全然違う楽しさが2つあるっていうことが、元気ロケッツにはなかった、安田レイらしさなのかな、って。

勝因は自分に染みついた何か

──一方「恋詩」のアレンジなんですけど、比較的原曲に忠実。ブラスをフィーチャーしたキャバレージャズっぽいサウンドになっています。実はこれも安田さんにとっては珍しいことですよね。

安田レイ

そうですね。この曲は1月からのツアーでもやったんですけど、裏拍を強調したアレンジなので、皆さん最初は戸惑ってらっしゃったみたいで。「あれっ、どっちで手拍子すればいいの?」って。

──1拍、3拍でクラップすればいいのか? 2拍、4拍でクラップするべきなのかって?

そうみたいです。すぐに「あっ、2と4か」って感じでノってくださったんですけど、やっぱり普段の安田レイの楽曲に馴染んでくださってる方にとっては珍しかったみたいで。

──ご本人的にはいかがでした?

普段からけっこうブラックなサウンド、R&Bとかソウルも好きで聴いているので、最初にオケを聴いたときはうれしかったですね。やっとこういうサウンドを歌わせてもらえるんだ!って。もともと私自身、J-POPをベースに幅広く歌いたいと思っていたので、歌詞の話と同じ。これでまた安田レイの新しい一面を見せられるかな? 実はいろんな曲を歌えるんだぞ、っていうところを見せられるなと思ってドキドキしました(笑)。それにこの曲はやっぱり「J-POP」だから歌っていてすごく楽しかったですね。

──黒っぽいリズムとアレンジに和テイストあふれるメロディが乗るのって、いわゆる「歌謡曲」的な手法ですもんね。確かにJ-POP的、日本のポピュラーミュージック的1曲です。

そうなんですよね。

──ただ安田さんは今21歳。いわゆる歌謡曲を聴いていた世代でもないし、自身のディスコグラフィにこういう黒っぽい曲もなかった。それでも楽しく歌いこなせたのってなぜなんでしょう?

やっぱり今までブラックミュージックを聴いてきていたおかげなのかなあとは思っています。

──レコーディング前に具体的に誰か特定のアーティストを聴き込んだりは?

それはなかったですね。たぶん私の中に染みついたものがうまく発揮できた、それを上手に武器にできたのかな、っていう気がします。それは歌詞を読み込むときと同じなんですけど。

安田レイ

──歌詞を読み込むときと同じって?

いろんな主人公になりきるときって別にその歌詞と似たシチュエーションの映画を観たり、小説を読んだりするわけじゃないんです。ホントに妄想というか、自分の中で「この人はこういう感じかな?」「こういうときはこういうことを言うんじゃないか」ってとにかく想像してみて主人公になりきるようにしているので。あくまで自分の中にあるものを引っ張り出してきているだけだから、別の誰かになりきりながら新しいジャンルのメロディやリズムを歌っても、安田レイらしくなるのかなって思ってます。

ニューシングル「恋詩」2015年2月25日発売 / SME Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / SECL-1651~2
通常盤 [CD] 1260円 / SECL-1653
iTunesにて配信中!
CD収録曲
  1. 恋詩
  2. Just for you
  3. My way, My life
初回限定盤DVD収録内容
  • 恋詩 ビデオクリップ
安田レイ TOUR 2015“WILL”~JUST FOR YOU~
  • 2015年5月22日(金)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2015年5月23日(土)大阪府 SUNHALL
  • 2015年5月31日(日)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
安田レイ(ヤスダレイ)
安田レイ

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たし、12月には配信限定の「Let It Snow」を発売。2014年2月に「Brand New Day」をリリースし、同年6月にはテレビアニメ「金田一少年の事件簿R」のエンディングテーマ「パスコード4854」を発表。そして同年10月、個人名義としては初めてのアルバム「Will」をリリース。翌2015年には初のワンマンツアーを成功させ、2月にTBS系ドラマ「美しき罠~残花繚乱~」の主題歌にして、いきものがかりのカバー曲「恋詩」を発表した。