音楽ナタリー Power Push - やなぎなぎ

エレクトロへ原点回帰 巨匠・鷺巣詩郎と示す鎮魂とダークネス

「純粋に残酷」な子供を歌った「キミミクリ」

──一方カップリングの「キミミクリ」は、同じくエレクトロニカ路線ではあれど、こぢんまりとした童謡的なかわいらしい曲になっています。

やなぎなぎ

「瞑目の彼方」がすごくスケールの大きい、ダークな世界を歌っている曲なので、「キミミクリ」は身近にあるダークなものを曲にしようかなと。先ほど言ったように「瞑目の彼方」の歌詞は客観的だったんですけど、「キミミクリ」のほうは主観的というか、私の子供時代を思い出して書きました。

──童心、ないし子供の遊びがテーマになっていますよね。

そうですね。ごっこ遊びとかそういうものをモチーフにしたんですけど、子供って純粋に残酷というか……。アリの巣を潰して回ったりとか、昆虫の足をもいだりとか。そういう行為を当時は悪いことだと知らずにいたんだけど、今思い返すとなんてむごいことをしていたんだっていうのを、曲調も含めて童話っぽい雰囲気に落とし込んでみました。

──曲名の「キミミクリ」って、どういう意味なんですか?

あなたを意味する「君」と、モノマネやごっこ遊びのような擬態的な遊びを意味する「ミミクリー」という言葉を組み合わせた造語です。私も小さい頃は、例えばセーラームーンのポーズをマネしてみたり、セリフを言ってみたりとか、そういうごっこ遊びをよくしていました。

お客さんが味方になってくれるという安心感

──やなぎさんは今年の4月から6月にかけて、3rdアルバム「Follow My Tracks」のリリースにあわせたワンマンツアー「Follow Your Tracks」で全国8カ所(全9公演)を回られましたが、いかがでした?

「Follow Your Tracks」は従来のツアーと比べて、かなりエンタテインメント性を意識して構成したツアーなんですね。というのも今までは基本的に、自分の楽曲をいかにライブで再現していくかに重きを置いていたんですけど、今回はそこを超えて、ライブを観に来てくださった方々と一緒に、いかにアルバム「Follow My Tracks」を体感するかを重要視していたので。

──「Follow My Tracks」自体が「旅」をテーマにした、いわばコンセプトアルバムですもんね。

そうなんです。ライブでもお客さんを旅にご案内する感じで、私がガイドとして「次の曲はこういう旅ですよ」と。そういうMCもパフォーマンスとして見せていく、自分でお客さんを引っ張っていくことを強く意識したツアーでしたね。もともと私のライブって淡々と歌っていく感じだったので、お客さんも「どういうふうに聴けばいいんだろう?」って戸惑う部分もあったと思うんです。でも、ライブを重ねるにつれて、お客さんもだんだんとこう……。

──ノリどころがわかってきた?

そういう実感がちょっとあって。今回のツアーでも、初めて行った新潟や広島でも、最初からすごく熱く迎えていただいたんですよ。それを見て私も「こういうふうにやっていっていいんだな」っていう自信をもらえたので、今後のライブでもまた表現の幅が広がるかなって。

──淡々と歌っていたスタイルから、MCでお客さんを先導するスタイルにシフトするというのは、けっこうなチャレンジですよね?

そうですね。私はもともと、そんなにおしゃべりが得意でもないし、話して誰かを動かすみたいなタイプではなかったので。まあ、話すことでうまくメッセージを伝えられないから、音楽をやっていたんですけど(笑)。でも、デビューして5年目を迎えて、だんだんライブに来てくださるお客さんとのコミュニケーションもとれるようになってきたし、もちろん不安はあったんですけど、きっとみんな味方になってくれるだろうと。

──やなぎさんのファンなんだから、そりゃあ味方になってくれますよ(笑)。

そういう安心感を、丸4年間の活動で得られたっていうのは大きかったですね。

野外ステージでプラスアルファを伝えたい

──そして9月25日にはコンセプチュアルライブ「color palette ~2016 Green~」がありますが、こちらはどのようなステージに?

今回は日比谷野外大音楽堂、つまり野外でのステージになるんですよ。過去にも「color palette ~2014 Blue~」の上野恩賜公園水上音楽堂で、野外というシチュエーションは経験しているんですけど、そのときに野外ステージならではの特性というか、環境音や陽の光、あるいは夕暮れの空のグラデーションといったものが音楽と一体化しているのを感じたんですね。なので今回は、それをグレードアップさせたライブにしたいなと思ってます。

──「キミミクリ」は夕焼けに、「瞑目の彼方」はより闇が濃くなった時間帯に合いそうですね。

「瞑目の彼方」と「キミミクリ」はこのライブで初めてお客さんの前で披露することになると思うので、野外ステージとのマッチングも非常に楽しみですね。バンド編成になるので若干アレンジが変わるかもしれないんですけど、曲自体のよさと、プラスアルファ的な何かをお伝えできたらいいですね。

ニューシングル「瞑目の彼方」2016年8月31日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / GNCA-0440
通常盤 [CD] 1296円 / GNCA-0441
CD収録曲
  1. 瞑目の彼方
  2. 瞑目の彼方(English ver.)
  3. キミミクリ
  4. 瞑目の彼方(Instrumental)
  5. キミミクリ(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 瞑目の彼方(ミュージッククリップ)
ライブ情報

やなぎなぎコンセプチュアルライブ
「color palette ~2016 Green~」
2016年9月25日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂

やなぎなぎ

関西出身の女性シンガーソングライター。2006年にライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始するや注目を集め、2009年発表のsupercell「君の知らない物語」にnagi名義でゲスト参加。2012年2月にはテレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーデビューした。その後も2013年7月に1stアルバム「エウアル」、2014年12月に2ndアルバム「ポリオミノ」、2016年4月に3rdアルバム「Follow My Tracks」をリリース。8月31日には自身13枚目となるシングル「瞑目の彼方」を発表し、表題曲はテレビアニメ「ベルセルク」のエンディングテーマに使用されている。