ナタリー PowerPush - やなぎなぎ
ネット発・癒しの歌姫が誕生するまで
ネットデビュー1カ月で客演依頼
──そして、プレイヤーズ王国で発表した曲をきっかけに、ほかのクリエイターから客演のオファーが寄せられるようになったわけですね。
ええ。最初の曲をアップして1カ月くらいしたら、何人かの方が「私の作る曲で歌ってみませんか?」って声をかけてくださって。そうやって誘ってくださる方や感想をくださる方がいることがわかって、初めて自分の声を好きになれたというか。「この声はこの声でいいものなのかな」「世界にひとつしかない特別なものなのかも」「もうちょっと歌ってみようかな」って思えるようになったんです。しかも、特に楽曲制作に誘ってくださる方ってやっぱり趣味が似ていて、一緒に作業するのはもちろん、音楽の話をしているだけでも楽しいんですよ。そういう交流を続けていたら、だんだん輪が広がっていって。
──ハウスからストレートなギターロックまで、膨大な客演のディスコグラフィができあがった、と。
はい(笑)。それにオリジナル曲を公開する気になったのも、いろんな方と共演させていただいたおかげなんです。自分以外の人の作った曲を歌って、その感想をいただいているうちに、だんだん「自分の曲も聴いてもらいたいな」っていう願望が芽生えてきて。試しにアップしてみたら「いいですね」っていう感想をいただけて、ちょっとずつ自信を持つことができましたから。
supercellからのメール
──supercell「君の知らない物語」への参加も、その客演やオリジナルが評価されたことがきっかけなんですか?
多分……。
──多分?
友達から(supercellの代表曲のひとつ)「メルト」のことを教えてもらって、ニコ動にアクセスしてみたら投稿者コメント欄に私の歌をよく聴いていると書いてあって。「私のことを知ってるの!?」ってビックリしつつも、確かにいい曲だったし、すぐに大好きになってたので、「歌ってみた」動画をアップしてみたんです。そうしたらかなりの反響があって。その後、しばらくしてからsupercellのryoさんからご連絡をいただいて、「一緒に曲を作ろう」って話になったんです。そしてしばらくは一緒に曲を作ったりして活動を続けていたら、ある日ryoさんが「今度アニメのテーマソングをやるんだけど」って連絡をくれて、唐突に「だから、なぎさん歌ってよ」と。もちろん最初は「えっ!?」って感じだったんですけど、ryoさんが真っ先に私に声をかけてくれたことがうれしかったので、歌わせていただくことにしたんです。だから「多分」なんです。
──そしてこのたび、満を持してメジャーソロデビューを飾ることになったわけですが、肩書きが「ネットの人気者」から「プロのアーティスト」に変わることで意識に変化ってありました?
supercellさんやほかのクリエイターの方との活動はもちろんすごく好きなんですけど、やっぱりやなぎなぎっていう名前で作った自分らしい曲を聴いてもらいたい、っていう気持ちは常に持っていて。ソロ活動のためのレーベル探しは意識していたので、プレッシャーはあまりなかったですね。これからどんなふうに進んでいこうかな、というワクワク感のほうが強かったです。
やなぎなぎ(やなぎなぎ)
関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーデビュー。