音楽ナタリー Power Push - 山内惠介×松尾潔対談

演歌界の貴公子がR&Bのヒットメーカーと初タッグ 山内惠介物語・新章へ

「六八九トリオ」のようなトライアングルが描けたら

松尾 そういえばこの前、ユーミンの番組に出てたじゃないですか?(2017年1月にオンエアされたニッポン放送「松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD」)。

山内 はい。ゲストで呼んでいただきました。

松尾 あのユーミンが惠ちゃんのことが気になるって、ずっと言ってくださってて。やっぱり本当に才能がある人は届くところに届くんだなと思って。

山内惠介

山内 初めて松尾先生とお食事したとき、いただいた忘れられない言葉があるんです。「山内くんはこれから自分が一緒に仕事すると思わなかった方たちといっぱい出会うと思う」って。それが僕の中でずっと残っていて。だからユーミンさんにお会いしたとき、おっしゃってる通りになったと思って。

松尾 どの仕事でもある程度キャリアを重ねると全部見ちゃった錯覚に陥ることがあると思うんです。僕だってポップスはひと通りやったぐらいのつもりだったけど、知らない部分がまだまだ多いんだなって気付かされたし。だからあれは「惠ちゃんもこれから広いところにどんどん出て行くことになるよ」ってことを言いたかったんです。しかもその扉を開いてくれたのがユーミンだなんて最高じゃないですか。番組の中では惠ちゃんに曲提供したいっておっしゃってたし。

山内 ありがたいお話です。本当に。

松尾 これ、僕としては水森さんにも「ユーミンより僕のほうがいい曲作ると思うんだよねえ」って火を点けたいんです(笑)。先生の刺激にもなるんじゃないかなと思って。自分の秘蔵っ子だと思って大事に育てていたら、「ちょっと待って! この子、日本の宝になろうとしてるよ」って。

山内 この環境に自分がいること、両先生、そしてスタッフに感謝しかないです。

松尾 それは惠ちゃん自身が呼び寄せてるんだけどね。欲を言うなら、僕が大尊敬している永六輔さん、中村八大さん、坂本九さんの「六八九トリオ」。あんなトライアングルとなって、ワン&オンリーの景色が描けたらっていう野望があるんです。これは惠ちゃんにも初めて言いますけど。

山内 素晴らしい。うれしいです。

若者にも演歌、歌謡曲の扉を開いてもらいたい

松尾 ポップスの世界にずっといると詞を書くこともあれば曲を書くこともあるし、歌い手さんやアレンジャーと一緒に作ることもある。よくも悪くも境目がないんです。最近の洋楽のクレジットを見ると、作詞作曲が全部一列になってたりするでしょ? だけど歌唱、作詞、作曲、編曲と分かれてる分業制だからこそ、しのぎを削るわけですよ。このシステムが持つ効用っていうのは、すごいなあと思って。僕はプロデュースするときは全部の権限持ってやっているから、プリプロを何回かやるうちにメロディをちょっと変えたり、詞を変えたり、初めからきっちりと決めずにいくこともあるんですよ。それって「18時ぐらいに渋谷で」ってざっくり決めておいて「今どこ?」で少しずつ合わせていく、今のスマホ時代の待ち合わせみたいなもので。

山内 漠然とした感じで。

松尾 でも、携帯以前のコミュニケーションはそうじゃなかったじゃないですか? 改札の前で何時集合、遅れる人がいたら駅の伝言板にチョークで書いて。だからこそみんな時間をきちっと守ったわけですよ。そういう意味でも、さすが惠ちゃん。伊達にガラケー使ってない!

山内 連絡取りづらくてごめんなさい(笑)。

松尾 「惠ちゃん、LINE教えてくれる?」って言ったら「僕、ガラケーなんです」。あ、そういえば「情熱大陸」で同じこと言ってたなあと思って。「演歌歌手はガラケーでしょ」って、名言だよね(笑)。

──それでは最後に。昨年の「紅白歌合戦」でも山内さんと乃木坂46とのコラボが話題になりましたが、若者の間に演歌が広がっていくことについては、いかがお考えですか?

山内 とてもうれしいです。これをきっかけに演歌、歌謡曲を聴いていただきたいですし、その扉を開いてもらうのに「愛が信じられないなら」はふさわしい楽曲だと僕は思っています。「えっ、これが演歌なの?」と思う方に「そうなんだよ」って。そこになんの理由もいりません。だって歳をとって演歌や歌謡曲を聴くのは自然なことだし、当たり前なんです。だったら、今好んで聴いているものばかりじゃなく、いろんな音楽を知ってるほうがいい。そのほうが絶対生活が豊かになりますよ。

松尾 歳に応じて食べるもの、飲むお酒って変わってくるじゃないですか? 刺激をやたらと求めていた年代もあれば、過剰な味付けがちょっと気になってくる年代もある。音楽の好みにしても、昔から存在してるものだってある人にとってはすごく新しく響くかもしれない。そういう意味では、初めてなのに懐かしさを含んでいるところが、山内惠介という人の歌の素晴らしさじゃないかと思いますね。

左から山内惠介、松尾潔。
山内惠介 ニューシングル「愛が信じられないなら」 / 2016年3月29日発売 / Victor Entertainment
カフェ盤 [CD]1300円 / VICL-37256
ダイヤ盤 [CD] 1300円 / VICL-37257
唄盤 [CD+DVD]1800円 / VIZL-1132
カフェ盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 珈琲カップ

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  3. 愛が信じられないなら(オリジナルカラオケ)
  4. 珈琲カップ(オリジナルカラオケ)
ダイヤ盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 黒いダイヤ

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:伊戸のりお]

  3. 愛が信じられないなら(オリジナルカラオケ)
  4. 黒いダイヤ(オリジナルカラオケ)
唄盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 愛が信じられないなら 男性用オリジナルカラオケ(KEY=Cm)
  3. 愛が信じられないなら 女性用オリジナルカラオケ(KEY=F#m)
唄盤 DVD収録内容
  1. 愛が信じられないなら ミュージックビデオ
  2. 愛が信じられないなら 男性用カラオケ・ミュージックビデオ(KEY=Cm)歌詞テロップ入り
  3. 愛が信じられないなら 女性用カラオケ・ミュージックビデオ(KEY=F#m)歌詞テロップ入り

山内惠介 新曲「愛が信じられないなら」
発売記念イベント(※終了分は割愛)

2017年3月30日(木)
兵庫県 阪急西宮ガーデンズ 4階 スカイガーデン 木の葉のステージ
START 14:00
2017年3月31日(金)
愛知県 アスナル金山 明日なる!広場
START 14:00
2017年4月2日(日)
東京都 ゲートシティ大崎 アトリウム
START 14:00
※スカパー!「歌謡ポップスチャンネル」にてノンスクランブル生中継放送。
2017年4月3日(月)
福岡県 イオンモール福岡伊都 1F セントラルコート
START 14:00
山内惠介(ヤマウチケイスケ)
山内惠介

1983年5月31日生まれ、福岡県出身。“演歌界の貴公子”の異名を取る演歌歌手。1999年に作曲家・水森英夫にスカウトされ、2000年に福岡から上京。2001年4月に“ぼくはエンカな高校生”というキャッチコピーのもと、シングル「霧情」でデビューした。2014年3月に発売したシングル「恋の手本」は、オリコン週間シングルランキングで初のトップ10入りを果たす。デビュー15周年を迎えた2015年には、2月にアニバーサリーシングル「スポットライト」をリリースし、この年の年末に初めて「NHK紅白歌合戦」に出場。2年連続出場となった2016年末の「紅白」では、「流転の波止場 ~究極の貴公子編~」と題し、乃木坂46とのコラボステージを披露して話題を集めた。2017年3月にニューシングル「愛が信じられないなら」をリリースした。

松尾潔(マツオキヨシ)
松尾潔

1968年1月4日生まれ。福岡県出身の音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。早稲田大学在学中にR&BやHIP HOPを主な対象として執筆活動を開始する。久保田利伸との交流をきっかけに、1990年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。その後自身がプロデュースした平井堅、CHEMISTRYにミリオンセラーをもたらし、彼らをスターダムへと押し上げた。また東方神起やKといった韓国人アーティストの日本デビューに関わり、K-POP市場拡大の原動力となる。2008年、EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲・プロデュース)で「第50回日本レコード大賞」の大賞を受賞。2011年、JUJU「この夜を止めてよ」(作詞・プロデュース)で「第53回日本レコード大賞」優秀作品賞を受賞するなど、ヒット曲、受賞歴多数。プロデューサーおよびソングライターとして鈴木雅之、EXILE、JUJU、由紀さおり、坂本冬美、三代目J Soul Brothers、Flowerなど数多くのアーティストに提供した楽曲の累計セールス枚数は3000万枚を超す。2014年、初めての音楽エッセイ集「松尾潔のメロウな日々」を上梓し、翌2015年には続編「松尾潔のメロウな季節」を出版。NHK-FMの人気番組「松尾潔のメロウな夜」は放送8年目を数える。