音楽ナタリー Power Push - 山内惠介×松尾潔対談

演歌界の貴公子がR&Bのヒットメーカーと初タッグ 山内惠介物語・新章へ

惠ちゃんは愛を歌う資格がある人

松尾 僕もですけど、惠ちゃんも新しいことをやりたい気持ちがすごくあったと思います。「黒いダイヤ」と次の2曲を書く間に1回、飲みに行ったよね?

山内惠介

山内 行きましたね。西麻布の素敵なワインバー。そのとき僕が生まれた年の白ワインを先生が開けてくださって。

松尾 今考えるとオシャレなことしちゃったね(笑)。

山内 僕が女だったら確実に落ちてますよ(笑)。そのとき僕も恋愛観の話とかをさせていただきました。

松尾 あっ、けっこう深いところまで話してくれるんだと思ってうれしかったな。

山内 それこそ先生がプロデュースされた由紀さおりさんの「愛だとか」の話だったり。

松尾 あれ褒めてくれたね。

山内 いやいや、褒めるだなんて。僕はあの世界が衝撃だったんです。「ひとつのパンを分けあえれば それだけで幸せでした」。先生が書かれる詞は本当にきれいなんですよね。

松尾 いろんな愛がありますから。惠ちゃんと話したとき「この人は愛を歌う資格がある人だ」と思った。もし仮に声が奪われたとしても、歌ってものが好きな人だなって。つまり、この人自身が歌に愛された人だと。愛の定義付けは人それぞれですけど、惠ちゃんならいろんな形の愛を歌い上げることができるんじゃないかって。

愛を歌いたいから歌手・山内惠介は生まれた

松尾 今回のシングル3曲もそれぞれ違う愛を描いてますけど、山内惠介という歌うたいがいろんな角度から歌う愛を聴くことで、聴き終わったあと、人が愛おしくなるんじゃないかなと思ったんです。

山内 「愛が信じられないなら」の「人が信じられないなら ひとりになればいい」という歌詞も、要は愛に気付いてほしいんですよね。僕は先生のこの詞をいただいてから、自分の愛に対する価値観が変わりました。愛を歌うって大きいことですから。愛があるから歌がある。愛を歌いたいから歌手・山内惠介は生まれたといっても過言ではない。それを歌うためは僕自身も愛と向かい合って生きていかなくちゃいけないと思わされたので。

松尾 「愛と向かい合う」って、いいね。その通りだね。

山内 だからこそ人を傷付ける愛し方は絶対いけないし、独りよがりの愛もいけない。いろんな意味で愛について考えさせられたんです。それは僕がこれから歌っていくうえでとても大きな気付きであり、ここから本当の人間関係が生まれていくんだなと思いました。

──歌との向き合い方という意味でも大きな意味のある作品だったんですね。

松尾潔

松尾 いや、そこまで言われると感無量です。「愛が信じられないなら」というフレーズは、歌詞を書いた時点で水森先生が「とにかくここで決まった」みたいなことをおっしゃってたんです。「ずいぶん持ち上げてくださるな」と思ったんですけど、そのあと届いた水森先生のメロディを聴いたら、なるほど、あの方は有言実行の方だなと思って。つまり「愛が信じられないなら」というサビの歌い出しが一番輝くように全体が構成されているんです。僕自身、黒人音楽への強い興味から仕事を始めたこともあって、水森先生のいろんな作品の中でも特にリズミックなものが好きなんです。

山内 はい。

松尾 僕は先生自身が歌われた「たった二年と二ヶ月で」(1976年2月発売。作詞・阿久悠、作曲・水森英夫)、いつもiPhoneに入ってるぐらい好きなんです。あの曲に含まれている魅力を水森先生はいまだに失わずに発展させてらっしゃるから、メロディ自体にリズムが含まれているんです。演歌という言葉でくくるよりも歌謡曲という言い方が一番ふさわしいかもしれない。かつては演歌もポップスも分け隔てなく、すべて「流行歌」というくくりでした。

山内 “はやりうた”と言ってましたもんね。

松尾 もともと水森先生はラテンっぽいリズムも非常にお上手ですし。

自信作「愛が信じられないなら」に夢を見ている

松尾 「愛が信じられないなら」はアレンジも素晴らしいんです。

山内 馬飼野俊一先生が編曲してくださいました。

松尾 山内惠介、水森先生、馬飼野俊一さんの並びに自分の名前が連なるのは感慨深いです。しかも俊一さん、イントロの帝王ですから。細川たかしさんの「北酒場」なんて発明ですよ。サビに近いキャッチーさがありますよね。

山内 イントロが鳴ると、世界がガラッと変わりますね。

松尾 そして「愛が信じられないなら」では、そこに連なる山内惠介の歌声。もう、言うことないじゃないですか。

──その「愛が信じられないなら」を実際にステージで歌われて、反響はいかがでしょう。

松尾 大阪の座長公演(2月に大阪・新歌舞伎座で行われた「新歌舞伎座初座長『山内惠介 特別公演』」)で、ずっと歌ってくれてたんだって?

山内惠介

山内 はい。あそこから歌わせてもらってますけど、反応よすぎます。これはちょっと気を引き締めていかなくちゃいけないなってぐらい、「いいね、いいね」ってファンの皆さんが喜んでくださって。

松尾 チームみんなが自信作だと思ってるし、この曲に夢を見ています。「ここから山内惠介物語の新しい章が始まったね」って言えると思うし。

──そうした意欲はミュージックビデオにも表れています。

山内 歌の世界をあんなふうに表現していただいて。松尾先生にもぜひ出ていただきたかったです。

松尾 「俺、どこに出てんのかなー」と思いながら見てました(笑)。あと、2人そろってのメディア初露出がナタリーってところがまた面白いですよね。普段、演歌や歌謡曲になじみのない人たちにもこの対談が刺さるといいなあ。

山内 ぜひ刺さっていただきたいです。

山内惠介 ニューシングル「愛が信じられないなら」 / 2016年3月29日発売 / Victor Entertainment
カフェ盤 [CD]1300円 / VICL-37256
ダイヤ盤 [CD] 1300円 / VICL-37257
唄盤 [CD+DVD]1800円 / VIZL-1132
カフェ盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 珈琲カップ

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  3. 愛が信じられないなら(オリジナルカラオケ)
  4. 珈琲カップ(オリジナルカラオケ)
ダイヤ盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 黒いダイヤ

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:伊戸のりお]

  3. 愛が信じられないなら(オリジナルカラオケ)
  4. 黒いダイヤ(オリジナルカラオケ)
唄盤 CD収録曲
  1. 愛が信じられないなら

    [作詩:松尾潔 / 作曲:水森英夫 / 編曲:馬飼野俊一]

  2. 愛が信じられないなら 男性用オリジナルカラオケ(KEY=Cm)
  3. 愛が信じられないなら 女性用オリジナルカラオケ(KEY=F#m)
唄盤 DVD収録内容
  1. 愛が信じられないなら ミュージックビデオ
  2. 愛が信じられないなら 男性用カラオケ・ミュージックビデオ(KEY=Cm)歌詞テロップ入り
  3. 愛が信じられないなら 女性用カラオケ・ミュージックビデオ(KEY=F#m)歌詞テロップ入り

山内惠介 新曲「愛が信じられないなら」
発売記念イベント(※終了分は割愛)

2017年3月30日(木)
兵庫県 阪急西宮ガーデンズ 4階 スカイガーデン 木の葉のステージ
START 14:00
2017年3月31日(金)
愛知県 アスナル金山 明日なる!広場
START 14:00
2017年4月2日(日)
東京都 ゲートシティ大崎 アトリウム
START 14:00
※スカパー!「歌謡ポップスチャンネル」にてノンスクランブル生中継放送。
2017年4月3日(月)
福岡県 イオンモール福岡伊都 1F セントラルコート
START 14:00
山内惠介(ヤマウチケイスケ)
山内惠介

1983年5月31日生まれ、福岡県出身。“演歌界の貴公子”の異名を取る演歌歌手。1999年に作曲家・水森英夫にスカウトされ、2000年に福岡から上京。2001年4月に“ぼくはエンカな高校生”というキャッチコピーのもと、シングル「霧情」でデビューした。2014年3月に発売したシングル「恋の手本」は、オリコン週間シングルランキングで初のトップ10入りを果たす。デビュー15周年を迎えた2015年には、2月にアニバーサリーシングル「スポットライト」をリリースし、この年の年末に初めて「NHK紅白歌合戦」に出場。2年連続出場となった2016年末の「紅白」では、「流転の波止場 ~究極の貴公子編~」と題し、乃木坂46とのコラボステージを披露して話題を集めた。2017年3月にニューシングル「愛が信じられないなら」をリリースした。

松尾潔(マツオキヨシ)
松尾潔

1968年1月4日生まれ。福岡県出身の音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。早稲田大学在学中にR&BやHIP HOPを主な対象として執筆活動を開始する。久保田利伸との交流をきっかけに、1990年代半ばから音楽制作に携わり、SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。その後自身がプロデュースした平井堅、CHEMISTRYにミリオンセラーをもたらし、彼らをスターダムへと押し上げた。また東方神起やKといった韓国人アーティストの日本デビューに関わり、K-POP市場拡大の原動力となる。2008年、EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲・プロデュース)で「第50回日本レコード大賞」の大賞を受賞。2011年、JUJU「この夜を止めてよ」(作詞・プロデュース)で「第53回日本レコード大賞」優秀作品賞を受賞するなど、ヒット曲、受賞歴多数。プロデューサーおよびソングライターとして鈴木雅之、EXILE、JUJU、由紀さおり、坂本冬美、三代目J Soul Brothers、Flowerなど数多くのアーティストに提供した楽曲の累計セールス枚数は3000万枚を超す。2014年、初めての音楽エッセイ集「松尾潔のメロウな日々」を上梓し、翌2015年には続編「松尾潔のメロウな季節」を出版。NHK-FMの人気番組「松尾潔のメロウな夜」は放送8年目を数える。