「好きだな」と思える人間とじゃないとやれないよ
──ELPISのメンバーについても聞かせてください。まずギターの木村祐介さんについてはいかがでしょう?
祐介とは、あいつが高校生の頃から知り合いだったんだよね。そのときはピロウズのファンだったんだけど、20歳になってから飲みに行くようになって。祐介とは美学が一緒なんだよ。ロックンロールをやるうえでどんなギターを弾きたいか?という感覚がすごく近いし、すべてに対して向上心が強い。ELPISのほかのメンバーは祐介よりもキャリアがあるし、言ってみれば格上なんだよ。その中であいつは追いつきたい、追い越したいという気持ちでやってるだろうし、wash?の大ちゃんにもかわいがられている。……ただね、ちょっと前に「興味あるエフェクターがあったら、買ってやるよ」と言ったら、めちゃくちゃ高いエフェクターを頼んできて(笑)。ほぼノイズしか出ないトリッキーなビンテージもので、滅多に使わないんだけど、めちゃくちゃカッコいい音になるっていう。まあ、そんなやつだね(笑)。
──ベーシストは関根史織(Base Ball Bear)さん、安西卓丸(ex. ふくろうず)さんの2人体制です。
まず史織ちゃんはベースがとにかくうまい。自分から前に出ようとするタイプではなくて、ちゃんと周りのことを考えてくれるし、こちらから「こうやってほしい」と伝えると100点のベースを弾いてくれるんだよね。卓丸はタイプが違っていて、「え?」と思うような我の強いアイデアを出してきたりする。もちろんケースバイケースだけど、そのアイデアにピントを合わせることも多いかな。プロデューサー気質だね。ベース以外の全体にも意見をくれるし。頼りになる。
──メンバーの意見や演奏によって楽曲が変化していくのは、完全にバンドのやり方ですよね。ドラムの楠部真也(Radio Caroline)さんはメンバーの中でも一番付き合いが長いのでは?
そうだね。真也は本来、50'sや60'sテイストのロックンロールが一番得意というか、そういう曲を叩かせると生き生きするタイプのドラマーだけど、ELPISでは彼のルーツにないテイストの曲もたくさんあるんだよね。オルタナテイストの16ビートとか変拍子とかね。真也はドラム自体が大好きだし、向上心もあるので幅を広げてくれていて。あとは、大前提として「彼と一緒に音楽をやっていきたい」という気持ちが強いから、真也らしくないこともお願いしながら、時間をかけてしっくりくるところまで持ってこれたという感じ。とにかく真也と一緒にやりたいんだよ。
──人間性も大事ですからね。
もちろん。バンドをやるというのは、スタジオに十数時間いるだけじゃなくて、ツアーのときは全員で移動して、食事して、ライブをやって、要はずっと一緒に旅をするからさ。長い時間一緒にいてストレスにならない、「好きだな、いいやつだな」と思える人間とじゃないと今の俺はやれないよ。
──ミュージシャンとして優れていて、気の合う人たちと音楽をやれているのは素晴らしいじゃないですか。
そうなんだけど、「セカンドバンドだったから」というのもあると思うよ。俺はピロウズと並行しながらソロをやってたからさ。メインのバンドは好きとか嫌いとかを超えたところで続けたり、解散してしまったりすることが多いと思うんだよね。ELIPISは俺が好きな人間を集めて、たまたまメインのバンドになっていったというか。気分よくやれてるのはありがたいし、幸せだと思うよ。
自分の反射神経を信じたいんだよ
──アルバムのタイトル「Daydream again」についても聞かせてもらえますか?
ピロウズもソロも含め、俺の作品は収録曲のタイトルをアルバム名にしているものがほとんどで。今回の「Daydream again」もそうだけど、タイトルを決めるときに悩んだことがほとんどないんだよね。リードになるような強い曲がいくつかあったとして、その中でミュージックビデオやジャケットのイメージがパッと思い浮かぶ曲を選ぶことが多いかな。その予感を信じたい、自分の直感に頼りたいということで、今までずっとやってきているので。このアルバムのジャケット、iPhoneで自分で撮った写真なんだよ。いつも家でウイスキーの水割りを飲んでるんだけど、グラスの底に、部屋にあるテレビなんかがグニャッと歪んで映ってて。そのイメージが「Daydream again」につながったのかな。グラスの底の向こう側にパッと見よくわからない画が映ってる。中途半端に疑問が残るというのではなく、ハッキリと「何がなんだかわからない」というのはある意味キャッチ—な武器にもなると思ってるんだよね。
──「Daydream again」の「全ての眩しかった記憶よ / good bye good bye」という一節も、このアルバムのムードや気分を象徴しているように感じました。
年齢を重ねても、どんなに賢い人間であっても、理路整然としない部分が必ずあるじゃないか。それをそのまま歌にしたのが「Daydream again」なんだ。アルバムのタイトルに大した意味はないよ。若いときはもうちょっと時間をかけて考えていたし、「これが最後のアルバム」「これで引退する」という状況だったらすごく考えると思うけど、まだ次があるからね。「すべては通過点だ」というつもりでここまでやってきたし、自分の反射神経を信じたいんだよ。
──アルバムのリリース後にはツアーが控えています。すでに次作の制作も進んでいるそうですね。
まだはっきりとは決まってないんだけど、次はミニアルバムを出したいと思ってます。来年もフルアルバムを出すだろうし、曲もだいぶそろっていて。
──山中さん、本当に休まないですよね。35年以上、まったく止まってない。
スケジュール的には休みはけっこうあるんだよ。4日連続オフとかもあるんだけど、音楽の予定を入れないと、ただ無意味に酒を飲んでるだけだから(笑)。それは人としてよくないからさ、シャワーを浴びて、身なりを整えて、ちょっとおしゃれをしてスタジオに行くようにしてる。手ぶらでなんのアイデアもない日もあるけど、なんとかイントロを考えて、気に入ったらエンジニアのタッキーと一緒にとりあえず録音して。次にAメロを考えて、気に入ったら録って、Bメロとサビを作って、デタラメな歌詞を乗せて歌ってみて、その中から「これはよかったんじゃないかな」という部分を残して。ほぼボツに近いようなものをたくさん作り続けてるんだけど、結局、だいたいはちゃんと形になるんだよ。まあ、しつこく追い込む才能があるんだろうな(笑)。
公演情報
Daydream again tour
- 2026年5月2日(土)東京都 Top Beat Club
- 2026年5月9日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
- 2026年5月16日(土)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
- 2026年5月17日(日)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)
- 2026年5月23日(土)新潟県 CLUB RIVERST
- 2026年5月24日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2026年5月26日(火)京都府 KYOTO MUSE
- 2026年5月28日(木)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2026年5月30日(土)福岡県 DRUM Be-1
- 2026年5月31日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2026年6月2日(火)香川県 DIME
- 2026年6月4日(木)静岡県 Shizuoka UMBER
- 2026年6月7日(日)群馬県 前橋DYVER
- 2026年6月10日(水)北海道 cube garden
- 2026年6月12日(金)青森県 青森Quarter
- 2026年6月14日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2026年6月20日(土)愛知県 伏見JAMMIN'
- 2026年6月21日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2026年6月28日(日)東京都 LIQUIDROOM
プロフィール
山中さわお(ヤマナカサワオ)
北海道小樽市出身。1989年から2025年まで活動したthe pillowsでボーカル&ギターを務め、ほとんどの楽曲の作詞作曲を担当した。1999年には自身が主宰する音楽レーベル・DELICIOUS LABELを設立し、noodles、シュリスペイロフ、THE BOHEMIANSなどの作品をリリースする。the pillows解散後も音源制作も積極的に行なっており、2026年4月には木村祐介(G)、安西卓丸(B)、関根史織(B / Base Ball Bear)、楠部真也(Dr / Radio Caroline)というバンドメンバーとともに山中さわお&ELPIS名義でアルバム「Daydream again」を発表した。



