「山人音楽祭2021」特集|挑戦し続ける茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)がローカリズムで狼煙を上げる (2/2)

感謝のトライアングルがあるイベントに

──今回は会場が劇場です。「山人音楽祭」がホールや劇場で開催されることはこれまでありませんでしたが、そこに対してはどのように考えていますか?

これまでは俺自身が、ホールでライブなんてやれる気がまったくしなくて、ホールでのイベントは誘われてもずっと断ってたの。「みんな椅子に座ってんだろ? そんなところでライブやるなんて意味ねえよ」と。だけど、世の中が変わってしまった今は、そこにアジャストしていかないといけないんだなと思って。そこで気付いたんだよね。俺は、お客さんと火の玉になることが楽しいっていう、自分の気持ちを押し付けていたんだなって。もしかしたら、今までも、周りの人とちゃんとディスタンスを保って、涼しく、しっかり音を聴きたい、話を聞きたい人たちもいたのかもしれないのに。この気付きを生かして、自分のものにしていかないと、本当にコロナで失ったものばっかりになっちゃう。だからこそ、例えばホールでチケット代が1万円になっても見てもらえるバンドにならないと、この先生きていけないとも思ったし。それには今のままじゃいけない。自分の中の何かを上げていかないといけない。演奏のクオリティなのか、バンドの発信力なのか、人間力なのか。お客さんの反応だけじゃなくて、お客さんの気持ちにもっと入り込んでいけるライブをしないといけないなと、今は思ってるかな。

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

──コロナ禍におけるライブハウスでのライブは、ホールでのライブと近いものがあると思いますが、実際にやってみていかかですか?

最近ようやく慣れてきたけど、でもまだまだ。ワンマンだったらまだいいんだけど、フェスだと30分とか35分の持ち時間で、全然スイッチが入らなくて。そこはまだ模索中だね。

──先日、別のイベントのMCで「バンドとオーガナイザーとお客さんは三つ巴でなくちゃだめだ」とおっしゃっていたのが印象的でした。バンドとしてイベントに出演するだけでなく、「山人音楽祭」のオーガナイザーも務めているからこそ感じていることだと思うのですが、改めてどういう意図での発言か教えていただいてもいいでしょうか?

イベントとかフェスって、オーガナイザー、演者、観ている人のトライアングルで成り立ってるんだと思うんだけど、その3つが「ありがとう」でつながっていないといけないんだよね。オーガナイザーは出てくれたバンドに「ありがとう」と思うべきだし、観に来てくれた人に「ありがとう」と思うべき。演者も、こんな時期に企画をしてくれたオーガナイザーに「ありがとう」と思うべきで。そこに「出してやってる」と思っているオーガナイザーとか、「出てやってる」と思っているバンド、「観てやってる」と思うお客さん、どれか1つでもあると、もう噛み合わせが悪くなる。それがいいとか悪いとかじゃなくて、少なくとも、俺がやりたいのは感謝のトライアングルがちゃんとあるイベントなんだよね。

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

──特にコロナ禍の今は、余計にそれぞれ葛藤があるでしょうしね。

そう。だからこんな時期に会場に来てくれるお客さんって、絶対に付き合いとかそんな気持ちじゃないはずなんだよ。そこに対して、オーガナイザーも演者も、束になって「どうですか? 音楽」「どうですか? フェス」というのを見せていかないといけない。それって、今までの“この中でトップを取ろう”とかそういう次元じゃないんだよね。8月に福岡で開催予定だった「TRIANGLE'21」というイベントがコロナで中止になって。そこで使うはずだった消毒キットを、「東北ライブハウス大作戦」(東日本大震災の被災地にライブハウスを建設するプロジェクト)が全部買い取って、9月にやった「東北ライブハウス大作戦GIG 2021」で使ったんだよ。そうやってフォローし合えるのって、いわゆる“顔が見える”フェスならではだし、さらに言えば、ローカルの人たちが作ってきた関係性なんじゃないかって、最近はすごく思ってる。

──そんな、ローカルを大事にした今年の「山人音楽祭」、どんなイベントになりそうですか?

いやー、全然わかんないよね。とりあえず、会場を見た限り「OAUが圧勝だな」ってことはわかります(笑)。

──「そこに負けないように」とはならないんですか?

もちろんそのつもりではいるけど、OAUというホールの横綱がいて、細美武士(MONOEYES、ELLEGARDEN、the HIATUS)というお歌の神様がいて、HAWAIIAN6という人間力満載の人たちがいるから。そこに対して、G-FREAK FACTORY含め、地元のバンドに何ができるのか。ただそれだけだね。あとは来年以降に恩返しができるように、まずは狼煙を上げられたらそれで十分かな。

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)

プロフィール

G-FREAK FACTORY(ジーフリークファクトリー)

茂木洋晃(Vo)と原田季征(G)が中心となり、1997年に群馬県にて結成。約9年間リリースがない時期を経て、2012年9月にBADASSよりシングル「EVEN」を発表し、以降はミニアルバム「fact」、シングル「Too oLD To KNoW」「ダディ・ダーリン」と精力的にリリースを重ねる。また地元・群馬を盛り上げるため2012年より主催イベント「GUNMA ROCK FESTIVAL」を企画および運営し、2016年から「山人音楽祭」と名前を換えて開催している。2018年7月には初の東京・日比谷野外大音楽堂公演を開催。2020年7月15日に約3年4カ月ぶりとなるニューアルバム「VINTAGE」をリリースした。