lilyをどう登場させるのか
──デビュー15周年記念アニバーサリー公演「TRIO ERA 2」のお話もぜひ。2017年12月8日に開催された10周年記念ライブ「TRIO ERA」では、弾き語りの第1幕、バンド編成の第2幕、ビッグバンドTHE PRETAPORTERSを迎えた第3幕、そしてラストの第4幕という4部構成でした。あれから5年、今回のライブで新たな取り組みや初めてチャレンジすることなど、現時点で考えていることについて教えてください。
大橋 ………………。
lily この沈黙が正しいんですよね(笑)。
大橋 (笑)。今のところは、ゆり子さんにゲストで出ていただくことだけが決まっている感じですね。これまでのツアーもリハーサルをしながら演奏する楽曲を決めたり、演出のアイデアを出したりしてきたので。ただ僕のライブでは“1本マイクのコーナー”というのが必ずあるので、石田さんにそのコーナーに参加してもらうのはありかもしれないです。
lily あれ素敵ですよね。マイクを1本立てて、そこに素晴らしいミュージシャンたちが集まっていって。
大橋 バンドでlilyの曲を1曲ちゃんと歌って、次におまけでマイク1本とか。
lily はい。ふふふ。面白そうだなと思うと、すぐ「はい」って言っちゃいます(笑)。
大橋 実現するかはさておき、いつもノリで全部決めてるんです。自分が「これいいじゃん」と思うことは、お客さんも絶対に喜ぶ内容だと思うので。スタッフからしたら無茶振りをされたと思われるかもしれないですけど、いつもそうやって土壇場で決めていってるので、今回も実現する可能性は非常に高いと思います(笑)。
──WOWOWではこれまでもプロデューサー兼監督の松井菜穂さん、撮影監督の勝田正志さんを中心に大橋トリオのライブ番組を制作しています。昨年4月に放送されたオリジナルライブ番組「大橋トリオ LIVE AT MUSIC HOUSE」もプライベートな雰囲気満載の素晴らしい映像でした。同番組では勝田さんが「第2回WOWOWクリエイターアワード」の優秀賞を受賞しています。
大橋 WOWOWさんは“ライブをめちゃくちゃカッコよく撮る集団”なので、映像に関しては本当に楽しみでしかないですね。なので、演出の部分で我々が絵的に面白くなるものを考えなきゃな、というのは思っています。前回の「TRIO ERA」は布袋寅泰さんと持田香織(Every Little Thing)さんにゲストで来ていただいたんです。バンドが乗っている台が割れると、真ん中から布袋さんが登場して。
lily へえー!
大橋 だから、今回はゆり子さんをどう登場させようかなって。上からがいいのか。下からポーンと出てくるのがいいのか。
lily 登場の仕方って、そんなにいろいろあるんですね(笑)。
大橋 ただツカツカツカと歩いて来るだけじゃ、芸がないじゃないですか。そういうこともいろいろ考えていかなきゃいけないんです。
lily ……とてもとても緊張してきました(笑)。当日の収容人数は5000人と聞いてますけど、なにせ初めてのことなので、どんな気持ちになるのか想像もつかないです。2000人くらいまでは舞台で経験があるんですけど、5000人ともなるとむしろ緊張しすぎて開き直るかもしれない。
大橋 開き直るなんて、そんな技があるんですか?
lily はい。「ああ、もう緊張してもしょうがない」と思うときがあるんですよ。
大橋 それは便利な機能ですね。
lily 私はカメラの前で泣いたり笑ったりしなきゃいけないので、それとちょっと似ているのかもしれない。実際はもう緊張しているんですけどね(笑)。
──そんな石田さんが当日聴いてみたい大橋トリオの楽曲は?
lily 言ったら、やってくださるんですか?
大橋 やります。
lily 本当に? たくさんあるからなあ。
大橋 たくさんですか。じゃあ、いっぱい挙げていただければ、その中の1曲は必ずやります。
lily 私、「くるみ」(2015年発表のアルバム「PARODY」に収録)という曲が大好きです。あれがかかると、冷たい風がふわーっと吹いてくるような気持ちになるんです。候補に入れていただけますか?
大橋 入れます。ストリングス隊もいるから、それが加わったらまたいい感じになるかもしれないですね。
lily あとは「Lady」(2009年発表のアルバム「I Got Rhythm?」に収録)とか。いっぱいありすぎて、ちょっと今出てこないですけども。
大橋 おいおい言っていただければ、候補に入れさせていただきますよ。
大橋トリオは海の男になりたい
──大橋さんは今年2月に、ご自身で監修した2枚組ベストアルバム「ohashiTrio best Too」をリリースしました。これまでの15年を振り返って、節目になったなと思う楽曲があれば教えてください。
大橋 それはいっぱいあります。ただ、僕の場合しっかりヒットした経験が一度もないので、世間的な意味でのターニングポイントがないんですよ。なので節目というと、自分のプライベートのタイミングとか、あとは作業的に「ひと山越えたな」という曲ができたときになってくるんです。アルバムの中に必ず1曲はそういう「ひと山越えたな」と思える曲が入っているので、毎年節目を迎えているような感覚ですね。シングル曲やアルバムのリード曲じゃなく、全然日の目を見ない曲だったりするけど、自分の中で“音楽的満足度の高い曲”があるんです。その曲を挙げて「一番いいです」と書いてくれているツイートとかを見ると「わかってるねえ」と思います(笑)。
lily 私は今年で芸能活動35周年を迎えたんですけど、大橋さんはまだ15周年とは思えない貫禄がありますよね。音楽を生業にしようと志したときから数えたら、もっとでしょうけど。
大橋 明確にここって言えるのは高校2年生なので17歳。27年前ですね。でも、音楽の場合は流行り廃りが激しいから、15年もやってこれたのは本当に奇跡だと思っています。というのも、最近フェスに出ると、今をときめく若いバンドの子たちが「小さい頃めちゃくちゃ聴いてました」と言ってくれるんです(笑)。とてもうれしいんですけど、もうそんな立ち位置になってるのかと思って。これまでバカ売れしたこともないし、不思議な感覚なんですよね、15年続けてこれたのは。
lily 憧れの存在だと思います。
大橋 刺さるところには刺さってくれているんだな、というのは実感しましたね。
──ちなみにお二人は、5年後はどんなことをしていたいですか?
大橋 5年後か……。5年だったら可能かなと思うんですけど、海に出ていたいですね。
lily 海に出ていたい? どういうことですか?
大橋 海の男になりたい。
lily ちょっと待ってください。サーファーですか?
大橋 船乗りです。
lily 予想外の言葉が(笑)。音楽はどうするんですか?
大橋 音楽は「今の状況がずっと続けばいいな」という感じです。男というのは、いつか必ず海に出たくなるものなんですよ。
lily どう捉えたらいいんだろう。船乗りになりたい……。
大橋 でも僕、めちゃくちゃ船酔いするんです(笑)。船酔いを5年で克服したい。
lily 面白い(笑)。大橋トリオさんの新しい面を今、知りました。
大橋 最近そんなことばっかり考えてます。
lily じゃあ、船舶免許も取らなきゃ。持ってます?
大橋 これから取ります。1年以内に。
lily そうか。じゃあ、私は自分がやりたいことを突き詰めて、生きていけるスタイルを作りたいですね。
大橋 僕から見ると、すでにやれているんじゃないかなと思いますけど、そんなこともないんですね。
lily そうですね。今ももしかしたらそうかもしれません。でも、もっともっと勉強しなきゃいけないことがまだまだいっぱいあるので。
2人が思う人生のゴール
大橋 僕は最近、自分の年齢が上がってきたせいか、人生のゴールについて考えることが多くなってきたんですけど、石田さんもそういうことは考えますか?
lily すごい質問。何をもって人生のゴールとするか?ということですよね。……でも、結局いつも思うんですけど、人生なんて一瞬の積み重ねでしかないから“時間”という概念なんて実は存在しないのかなと思っていて。
大橋 はい。わかります。
lily みんな“今”という瞬間だけでつながっている。だけど、記憶があるから時間はあると思っているという。だから……難しいですね。
大橋 じゃあ、もう1つ質問です。僕は“脳内カレンダー”と呼んでいるんですけど、1年間ってどういうふうに頭の中でイメージされてます? 僕は4月から5月、6月と右に行くんです。
lily 4月始まりということですね。
大橋 そうです。学校のイメージがあります。
lily 私はいつも8月が終わると1年が終わったなと思うんですよね。気分的に10月、11月、12月がものすごい速さでウワーッと過ぎていくんです(笑)。だから1月、2月はすごく長く感じます。
大橋 僕は10月、11月、12月は気候的に好きな時期だから、あっという間に終わっちゃう感じがします。
lily そんな季節に「TRIO ERA 2」は開催されるんですね。私は自分のミニアルバムのために5曲レコーディングして、その曲が仕上がるたびにすごく幸せな気持ちを味わってきましたけど、オーディエンスと一体化する空間を味わったことがないので、どういう気持ちになるのか楽しみです。
公演情報
大橋トリオ「TRIO ERA 2」
2022年11月3日(木・祝)東京都 東京国際フォーラム ホールA
<出演者>
大橋トリオ / lily
プロフィール
大橋トリオ(オオハシトリオ)
2007年にアルバム「PRETAPORTER」でデビュー。シンガーソングライターとしての活動のほかテレビドラマ、CM、映画音楽の作家としても活躍しており、代表作には映画「余命1ヶ月の花嫁」「雷桜」「PとJK」の劇伴などがある。近年ではNHK Eテレの子供向け番組「にゃんぼー!」の音楽や、TBS系「世界遺産」のテーマ曲も担当。2022年には2月にデビュー15周年を記念したベストアルバム「ohashiTrio best Too」を発表し、5月から7月にかけてホールツアーを開催。同年11月には15周年記念ライブ「TRIO ERA 2」を東京・東京国際フォーラム ホールAにて行う。
大橋トリオ ohashiTrio Official Website
衣装協力
ジャケット 68200円(エトセンス オブ ホワイト ソース)
パンツ 45100円(エトセンス オブ ホワイト ソース)
タートルネックカットソー 31900円(エトセンス オブ ホワイト ソース)
その他 スタイリスト私物
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lily(リリー)
女優・石田ゆり子の歌手名義。大橋トリオプロデュースのもと、カバー楽曲「MAGIC」で2021年12月にデビュー。2022年には、2月に2ndシングル「うたかた」、4月に3rdシングル「東京の空」を配信リリースし、10月に初のミニアルバム「リトルソング」を発表する。同年11月には東京国際フォーラム ホールAで開催される、大橋トリオデビュー15周年記念アニバーサリー公演「TRIO ERA 2」にゲスト出演する。
Yuriko Ishida Official Homepage
石田ゆり子 Yuriko Ishida (@yuriyuri1003) | Instagram
衣装協力
ブラウス 46200円(マリオンヴィンテージ / MOUR Co.,Ltd.)
デニムパンツ 68200円(マリオンヴィンテージ / MOUR Co.,Ltd.)
その他 スタイリスト私物
MOUR Co.,Ltd.:03-5787-8911