ナタリー PowerPush - WORLD ORDER
ポップなタイアップ曲引っさげ成長期から成熟期に突入
だってあのダンス、モテないでしょ?
──最近ではWORLD ORDERはNHK Eテレ「Rの法則」で高校運動部の子たちとコラボレートしたり、そのワンアンドオンリーなダンスやアイデアを広く共有する方向に向かっているような印象も受けます。
須藤 もちろんいろんな人とコラボレートはしてみたいし、その人たちとダンスの面白さを共有したいとも思っているんですけど、それを進めたからといってWORLD ORDERのダンスが若い子たちの間で流行るとは思えないんですよ(笑)。だってあのダンス、モテないでしょ?
落合 モテないです! モテたためしがない……。
野口量 でもこれしか踊れない(笑)。
森澤祐介 僕も完全にそうですね。
須藤 祐介もそうだし、ウッチー(内山)もそうか。
内山隼人 ですね(笑)。
野口 だから、続ける。僕らがWORLD ORDERで踊っている理由って簡単で明白なんですよ(笑)。
──あははは(笑)。
森澤 ただ、実はスーツを着て踊っている人ってたくさんいて、無表情のダンサーも少なくはない。でもそれを融合させるっていうアイデアは誰も持っていなかった。だから元気さんからWORLD ORDERの話を聞いたとき「面白そうだしやりたいな」ってすぐに乗った部分はありますね。
落合 それに今となっては、WORLD ORDERを通じてロボットダンスというジャンルに興味を持ってくれる人は少なからずいますから。実際に「始めました」っていう声もよく聞きますし。やっぱり人口の少ないジャンルだから、裾野を拡げることに多少は貢献できればいいな、という思いもありますね。
須藤 WORLD ORDERって、そうやってダンスの世界に興味を持ってもらうきっかけにはなるはずなんですよね。ただ、こう言っちゃうと傲慢に聞こえるかもしれないんですけど、ある意味横綱相撲的というか。存在を広く認知していただいた今となっては、もう代えはきかない。誰にも真似できないステージには上がれたかな、とも思っています。そしてそれは今だけの話じゃなくて。WORLD ORDERって50歳になってからのほうがもっとカッコよくなるはずなんですよ。
おじさん化=導入期突入
──モテ狙いのグループじゃないだけに、年齢を重ねたらまた別の味わいが生まれますよね。
須藤 もちろん「モテたい」という動機を否定しているわけじゃないんです。僕自身、モテたくて格闘技を始めてますから。ただモテたくて表現をしていると、もっと若いモテたい人が現れたときにそのポジションを取って代わられてしまう。でも僕たちは動機が違うから、それこそ野口がハゲちゃったり、ウッチーは白髪になっちゃったりしてもまだロボットダンスを続けられる(笑)。そしてそれはそれでカッコいいし、面白いはずなんですよね。このままWORLD ORDERが成熟期に入れば、あとは衰退期を迎えるしかない。ただそのときの展開の仕方次第では、また二段階目の導入期を迎えることができるかもしれない。そういう長期的な戦略もあって、モテではない、歳をとってからも活動できる形態のグループを作った側面はあります。で、実はこのサイクルってやり方次第ではもっと早くすることもできるんです。
──どうやれば?
須藤 野口がもっと早くハゲてくれれば(笑)。おじさん化=導入期突入ですから。
野口 WORLD ORDERの未来って俺にかかってたんですか!?
須藤 あとはウッチーの白髪。今も白髪が多いんだから、早く真っ白になってよ(笑)。
内山 イヤですよ……(笑)。
須藤 まあそれは冗談としても(笑)、あとは作品に物語性を持たせることが重要なのかな、とは個人的に考えていて。「ああ、面白い映像だね」っていうだけだと、僕自身つまらないし、皆さんもいずれ飽きてしまう。でもその人なりグループなりにストーリー性やメッセージ性があれば、飽きられないんですよね。人って、ほかの人の中にあるストーリーにこそ魅力を感じるし、引き込まれていくものなので。「あれ、この人は何を言いたいんだろう?」と一度でも気になり出すと止まらなくなる。興味は持続しやすいんです。だから僕たちに対してそういう興味を持ってくれる人を一定数以上獲得できれば、たとえ衰退期を迎えても、そのあと第二段階に進むことができるはずなんですよ。
面白いだけでもダメだけど、笑いがないのもダメ
──だからこそ「PERMANENT REVOLUTION」のような物語性のあるビデオを作りたかった?
須藤 そうですね。WORLD ORDER=世界秩序を名乗るグループとしては、世界の在り方や秩序について切り込んでいきたいし、だからこそ「PERMANENT REVOLUTION」=永続革命(ロシア革命の英雄、トロツキーらが提唱した世界革命論)という楽曲を発表して、WE ARE ALL ONE(世界はひとつ)的なメッセージを込めたビデオを作ったんです。
──とはいえ「PERMANENT REVOLUTION」の映像ってシリアス一辺倒ではないですよね。韓国の路上で突然ダンスを始めたメンバーに対して、道行くおばさんがビックリしながら、いかにも不審なものを見るような視線を投げかけているシーンは本当に面白かったです。
須藤 「面白い映像だね」だけでもダメなんですけど、笑いがないのもダメなんですよね。スーツでロボットダンスをすることや、政治的なメッセージも臆せず発信することといった主軸はしっかりとこなしつつも、そればかりではない。つかみどころをなくすというか、また別の側面や帯域幅を持たせておくと、そのコンテンツやタレントって息が長くなるんですよ。「シリアスなんだけど、笑えるじゃん」「あれっ!? コイツら、路上でバカなことをやってるんだけど、歌ってることは意外とマジメだぞ」と、いろんな魅力を持った存在になれるので。
──ちなみに、あのおばさんってエキストラなんですか?
須藤 いや、現地の一般の方です。韓国の人たちってリアクションはいいし、撮影慣れしている感じもあるんですよ。日本でビデオを撮影していると、必ず誰かに注意されていたんですけど、今回は全く注意されなかった。それどころか道を封鎖までしたんですけど、当たり前のように車が迂回してくれた。やっぱり映画産業に力を入れていたりするからなんでしょうね。
- 1stシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」[CD+DVD] / 2012年11月28日発売 / 1500円 / PONY CANYON PCCA-03756
- 1stシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」
CD収録曲
- FIND THE LIGHT(「洋服の青山」CMタイアップ曲)
- PERMANENT REVOLUTION(「アシアナ航空」タイアップ曲)
- FIND THE LIGHT - Remix -
- PERMANENT REVOLUTION - Remix -
DVD収録内容
- PERMANENT REVOLUTION
- PERMANENT REVOLUTION(アシアナスペシャルバージョン)
- 「洋服の青山」CMオリジナルメイキング
WORLD ORDER(わーるどおーだー)
元格闘家で、タレントや作家などとしても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(野口量、内山隼人、森澤祐介、高橋昭博、落合将人、上西隆史)とともに結成した7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにメガネ、きっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を活かしたロボットダンスが、アジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。また、独創性の強い映像作品も各国で高評価を獲得。2012年6月にはDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」、同年11月には初のシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」をリリース。