ナタリー PowerPush - WORLD ORDER

ポップなタイアップ曲引っさげ成長期から成熟期に突入

僕らは今、待つタイミングではない

──確かに「PERMANENT REVOLUTION」のビデオは高橋さんの負傷を全く意識させない作品に仕上がってますよね。足をケガしてるという話を聞いてビックリしたくらいですから。

須藤 そこを観ている方に悟られないだけのクオリティを維持できたのが、今回の一番の収穫でもあるんですよ。

──ただ「それなら高橋さんの回復を待って映像を撮ればよかったんじゃないか」という気もするんですけど……。

須藤 いや、僕らは今、待つタイミングではないんですよ。物事にはなんでも春夏秋冬があって。導入期、成長期、成熟期、衰退期と言い換えてもいいんですけど、WORLD ORDERの季節は今ちょうど、春=導入期を過ぎた夏=成長期のまっただ中、いや、秋=成熟期にさしかかってきている。自分で言うとちょっとイタく聞こえるかもしれないし、陳腐な言葉になっちゃうかもしれないんですけど、WORLD ORDERは今が「旬」なんだと思ってますから。

──いや、事実そうですよね。両A面シングルのいずれの楽曲にも大手企業のタイアップがついているわけですから。

須藤 そうやって皆さんにWORLD ORDERを認知してもらって、グループ自身にも勢いがついている状況である以上、やっぱり立ち止まるわけにはいかなかった。実は今回、洋服の青山とアシアナ航空のタイアップの話だけじゃなくて、インターネット調査会社のマクロミルからもコラボムービーの制作依頼があって。シングル2曲と洋服の青山のテレビCMと、アシアナ航空のCM、そしてそのマクロミルのコラボムービーと「PERMANENT REVOLUTION」のWORLD ORDERバージョンのビデオ制作を同時に進めていたんです。で、質と量って得てして反比例しがちじゃないですか。たとえ高橋のケガがなくても、仕事の量が増えれば1つひとつの作品の質は低下してしまうかもしれない。メンバー全員に結構な負荷がかかっていたわけですから。だけど、それでも乗り切りたかったし、実際に質を落とさずに乗り切ってみせた。これが今回のシングルを中心としたプロジェクトのもうひとつの収穫かもしれませんね。

インタビュー写真

──乗り切れたのは「旬だから」「チャンスを逃してはなるまい」という意地があったから?

須藤 あとはメンバーみんなが日本のトップ、一線級でやってきたダンサーとしてのプライドや意気込みですよね。だから一切妥協はしなかった。……よね?

落合高橋 はい(笑)。

ひと目で認識してもらえるオリジナリティを発揮できた

──以前のインタビューでは、その一線級であっても国内のダンサーはダンスだけでは食べていけない。その状況をWORLD ORDERで変えたい、というお話もなさっていましたよね。今まさにその目標を実現しつつあるわけですけど、勝因はどこにあると思いますか?

須藤 メンバー全員、気持ちをひとつにして上を目指したことと、あとは以前お話したことでもあるんですけど、代えがきかないポジションに立てたからだと僕は理解してます。「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」っていう言葉がありますけど、もし僕らがオシャレな服を着たヒップホップのダンスグループだったら、レッドオーシャン=血で血を洗う赤い海で戦わざるを得なかった。そういうグループは既にたくさんいるし、若いヤツらにはかなわないじゃないですか。でも、スーツでロボットダンスというスタイルのグループはどこにもいない。だからWORLD ORDERは完全なブルーオーシャン、誰もいない未開拓の青い海を悠々と泳げるんです。先程お話したように、今の世界にはオリジナルなものなんてひとつも存在しないと思ってはいるんですけど、そんな中にあってWORLD ORDERはダンスに詳しくない人でも、観ればひと目で「あっ、WORLD ORDERだ」と認識してもらえるくらいのオリジナリティを発揮できた。これが強みなんでしょうね。

──ただ、成長期から成熟期に入りつつある=世間に認知されつつあるということは、今後WORLD ORDERフォロワーが増えることも考えられますよね。そうなるとヒップホップの例のように、若くてフレッシュなグループに負けてしまうおそれもあるのでは?

須藤 いや、それはないんじゃないですか。例えば誰かが、とあるヒップホップのダンスグループに憧れてヒップホップダンスを始めても、その人はそのグループのマネをしているとは言われない。ほかにもヒップホップダンスをやっている人たちはたくさんいるから、単に影響を受けただけという扱いを受けるはずなんです。だけど、WORLD ORDERを見てスーツを着てロボットダンスを始めようものなら、それはただのWORLD ORDERのマネになってしまう。途端にダサいものになってしまうんですよ。

ワンアンドオンリーであるための戦略

──須藤さんの独特なセンスって格闘家時代に培ったものなんでしょうか? 90年代後半、パンクラスやリングスに参戦していた頃から仮面を被ってダンスをしながら入場していたり、須藤さんには常に誰よりも一歩早くて、しかもワンアンドオンリーなイメージがあります。

インタビュー写真

須藤 そうですね。2000年代中盤、格闘技の大会がメガイベント化してからはみんなド派手な入場パフォーマンスをするようになりましたけど、それまでは誰もやっていなかった。やれば「須藤元気のマネか」と言われかねませんから。あと日本の道場に通うのではなく、アメリカの総合格闘技のジムに渡って「逆輸入ファイター」という肩書きを引っさげて国内参戦したこともそうだし、デビュー当時ドレッドヘアにしていたこともそう。「海外に移住して、向こうのジムの所属になった格闘家はいないだろう」「格闘家でドレッドヘアなんていないだろう」という、ワンアンドオンリーであるための戦略でしたから。

──タトゥを入れているファイターも珍しかったですよね。

須藤 タトゥにもそういう意味はありましたね。それとインタビュアーに「次の試合の意気込みを」って訊かれても「がんばります!」としか答えられない格闘家って多いんですよ。でもそれじゃあ記事にならないから、必ずなんらかのコメントを出すようにもしていました。だからWORLD ORDER結成以前から「僕が格闘界でうまくやるために採用したパターン、戦略をラテラルシンキング(水平思考)的にダンスや音楽の世界に応用すれば、格闘界の人たちが僕を面白がってくれたように、ミュージックシーンの人たちも面白がってくれるんじゃないか」っていう狙いはありましたね。

1stシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」[CD+DVD] / 2012年11月28日発売 / 1500円 / PONY CANYON PCCA-03756
1stシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」
CD収録曲
  1. FIND THE LIGHT(「洋服の青山」CMタイアップ曲)
  2. PERMANENT REVOLUTION(「アシアナ航空」タイアップ曲)
  3. FIND THE LIGHT - Remix -
  4. PERMANENT REVOLUTION - Remix -
DVD収録内容
  1. PERMANENT REVOLUTION
  2. PERMANENT REVOLUTION(アシアナスペシャルバージョン)
  3. 「洋服の青山」CMオリジナルメイキング
WORLD ORDER(わーるどおーだー)

プロフィール画像

元格闘家で、タレントや作家などとしても活躍する須藤元気が、男性ダンサー6名(野口量、内山隼人、森澤祐介、高橋昭博、落合将人、上西隆史)とともに結成した7人組ダンスパフォーマンスユニット。スーツにメガネ、きっちり整えた髪型という統一感のあるファッションと、須藤が歌うポップなダンスミュージック、ダンサーたちの高い身体能力を活かしたロボットダンスが、アジアをはじめアメリカ、カナダ、ヨーロッパ圏で熱烈に支持されている。また、独創性の強い映像作品も各国で高評価を獲得。2012年6月にはDVD / Blu-rayとCDからなる2枚組作品「2012」、同年11月には初のシングル「FIND THE LIGHT / PERMANENT REVOLUTION」をリリース。