アーティストとファンをつなぐ企画を提案する“共創型クラウドクリエイティング”プラットフォーム・WIZY。レコチョクが運営するこのサービスと四星球がコラボし、新曲「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」のミュージックビデオを制作した。
このプロジェクトは、段ボールを使ったMVを作りたいと熱弁する“段ボーラー”のまさやん(G)のアイデアが、レコード会社の担当ディレクター“ビク田”氏の反対を受けたことから始動した。ファンがサポーターになり完成したMVは、四星球が段ボールで作られた機材や楽器を使い、人型に切り抜いた“段ボールの観客”の前で熱演を繰り広げるという段ボール尽くしの映像作品となっている。
音楽ナタリーでは、中心人物であるまさやんにインタビューを実施。MV完成に至るまでの悲喜交々、WIZYとコラボした感想などを聞いた。さらに北島康雄(Vo)、U太(B)、モリス(Dr)にもMVの見どころや今後WIZYでやってみたことなどを話してもらった。
取材・文 / 中野明子
- “共創”をコンセプトにアーティストとファンをつなぐ企画を提案し、その実現を支援するプラットフォーム。ファンは“サポーター”として各企画に参加し、アーティストと一緒にプロジェクトを実現させることを目指す。これまでに山下達郎、BOØWY、ゆず、ナオト・インティライミ、GACKTなどが参加した。
- WIZYのプロジェクトを見る
四星球にとって新しい一歩になるMV
──“段ボールMV”を作ることになった経緯を教えていただけますか?
シングルの表題曲のMVを段ボールを使ったものにしたいという話がもともとあって。どんな曲にしようかメンバーで話し合っていたときに、MVのコンセプトに合った曲を作ろうという話になったんです。それで最初はシングルの2曲目に収録されている「発明倶楽部」を表題曲にして、MVも作ることにしてたんです。
──その時点で内容はどこまで決まっていたんですか?
ライブハウスを舞台に、機材も楽器もお客さんも段ボールで、その中で四星球がライブをしているというところまでは決まってました。「発明倶楽部」が青春パンク寄りの曲調なので、熱い曲なのにMVがバカバカしいというギャップを狙ってたんです。でも、シングルのカップリング曲を作り始めたときに、康雄が「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」の歌詞を持ってきて。それにメロディを付けてレコーディングをしてみたら、バンド内で「『鋼鉄の段ボーラーまさゆき』、けっこういいな。表題曲こっちにしようか」みたいな感じになりまして。段ボールを使ったMVにすることが決まってたし、MVを作るなら「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」のほうがリスナーにわかりやすいってことになったんです。
──歌詞ではまさやんさんのことが大々的にフィーチャーされていて、曲内では名前が連呼されています。
はい(笑)。去年からライブで披露してるんですけど、キャッチーなサウンドとわかりやすい歌詞なので、お客さんもすぐになじんでくれた気がします。ライブでは自分もテンションが上がっているのであんまり気にならないんですけど、普段のスタジオ練習で自分の名前をコールするのは恥ずかしいですね。
──メンバーの名前がシングルの表題曲になることってあまりないですよね。
普通ないと思います(笑)。ただ、昔から段ボールを使ってライブの小道具とかを作ってきたことが曲になってうれしいです。あと、僕のことを歌っているようで、実は聴いた人の背中を押すような応援歌になってるんですよ。例えば「作れないものはない」って繰り返し歌ってるんですけど、「段ボールで作れないものはない」っていう表面的な意味だけじゃなくて、「できないことはない」とか新しいことに挑戦する大切さも伝えているんです。四星球らしい1曲だし、バンドにとって新しい一歩となるMVが生まれたと思います。
お客さんとバンドの信頼関係があって成り立つ
──ファンからサポート(資金)を募ってMVを作るという話になったとき、どう感じましたか?
正直なところ不安のほうが大きかったです。出資してもらってMVを作る資格が俺らにあるのかというのがあって……なので、ファンの方がプロジェクトに参加することを楽しんでもらえるように、企画にストーリー性を持たせたんです。
──ディレクターの“ビク田”さんが「メジャーアーティストなんだから段ボールでMVなんて作るな!」と反対しているという設定でしたね(笑)。いざプロジェクトが始まってみれば、多くのファンが参加して大成功と言える結果になったと思います。
僕もそう思います。特設ページでサポーターの方のコメントが見れるんですけど、温かい勇気付けられる言葉ばかりで。コメントを読みながら、ちょっと泣きそうになりました。励まされた部分も大きいし、「こんなに僕らのことを愛していただいてありがとうございます」っていう気持ちになりました。あとコメントを読んでいたら、うちの母親も参加していたことがわかって(笑)。
──親も応援してくれるプロジェクトだったと。
そうなんです。
──四星球にとってこういったファンの方と協力して、何かを作るプロジェクトは初めてだったと思います。
やってみてよかったですね。こういうのはお客さんとバンドの信頼関係があって成り立つ企画なんだということを実感しました。バンドを信頼してくれてるからこそ参加してくれる。僕たちも参加してくれた人が納得できる、楽しんでもらえるものを作りたいという気持ちになって。想像していたよりもずっと人間味がある企画だなと思いました。
──ファンとの“共創”が体験できたんですね。
はい。
──完成したMVには、まさやんさんが作ったあらゆる段ボールのアイテムが登場してます。どれくらい制作にかかったんですか?
段ボール工場の敷地内のスペースを借りて作ったんですけど、そこを4日くらいお借りして。ただ、僕がスケジュールの都合上、工場では2日間しか作業ができなくて、たくさんのスタッフにも手伝ってもらいました。
──まさやんさんが手がけたものは?
主にステージで使うものや、自分たちが直接手に取って使うもの。例えばアンプとか楽器とか。お客さんを模した段ボールはプロトタイプを僕が作って、あとはスタッフの皆さんに作ってもらいました。
──ちなみに作るのに一番時間がかかったものは?
ドラムですね。ギターとベースは表から見える面を作れば十分だったんですけど、ドラムは平面というわけにもいかず。立体的に作るために、実際のドラムの円周を測ったりして、かなり忠実に作ったので時間がかかりました。
──もはや模型作りの範囲ですよね。昔から図画工作は得意だったんですか?
全然得意じゃなくて。四星球に入って段ボールで小道具を作るようになってから、「こうしたらもっとうまくできるな」「こうやったらちょっと本物っぽく見えるな」とか試行錯誤していく中でノウハウを貯めていった感じです。技術は向上中ですが、もっともっとうまく作れるようになりたいです。
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ファンの人と一緒に曲を作ってみたい
- 四星球「鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.」
- 2018年1月31日発売 / Getting Better / Victor Entertainment
-
完全限定生産盤 [CD+DVD]
2138円 / VIZL-1296 -
通常盤 [CD]
1382円 / VICL-37347
- 収録曲
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- 鋼鉄の段ボーラーまさゆき
- 発明倶楽部
- 3:00 a.m.
- はじめてのたいあっぷ
- 六文役者
- 直りかけのCamera
- シークレットトラック
- 完全限定生産盤DVD収録内容
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「四星球 at OTODAMA’17~音泉魂~“夏フェスというボケ編”」
- <サウンドチェック~今年出てないひとメドレー>
- <大トリ入場>
- Mr. Cosmo
- お告げ
- クラーク博士と僕
- 妖怪泣き笑い
- 四星球十五年史 ~上巻~
- <まさやん卒業祭り>
- WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント
- 我ら吉野川同盟
<Bonus>
- 鋼鉄の段ボーラーまさゆき -Music Video-
※四星球「鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.」はプレイパス対象作品です。プレイパスとは、CD、DVD、Blu-rayの収録曲をすべてスマホで簡単にダウンロード・再生することができるサービスです。ご利用にあたっては、CD、DVD、Blu-rayに封入されているプレイパス専用カードをご確認ください。
ツアー情報
- 四星球1st e.p「鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.」レコ発ツアー
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- 2018年2月4日(日)大阪府 なんばHatch
- 2018年3月3日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年4月12日(木)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2018年5月10日(木)香川県 高松オリーブホール
- 四星球(スーシンチュウ)
- 2002年に北島康雄(Vo)とU太(B)を中心に鳴門教育大学の音楽サークルで結成。2009年に北島、U太、まさやん(G)、モリス(Dr)という現在の編成に落ち着く。オーディエンスを巻き込む型破りのライブパフォーマンス、さまざまな“あるあるネタ”をキャッチーなサウンドに乗せて表現するコミックソングが注目を集める。2010年代に入ってからは全国各地のロックフェスに出演し、度肝を抜くステージで話題を呼ぶ。約15年におよぶインディーズでの活動を経て、2017年1月にアルバム「メジャーデビューというボケ」でメジャーデビュー。8月にシングル「お告げ ~さあ占ってしんぜよう~」を発表した。2018年1月にシングル「鋼鉄の段ボーラーまさゆき e.p.」をリリース。