音楽ナタリー PowerPush - ワタナベフラワー

海外で活動するためにクマガイタツロウが考えたこと

子供たちが僕らの歌を聴いて踊り出した

──その保育園でワタナベフラワーは何をしたんですか?

まずね、さっき「有名人は誰も来てない」って言ったんですけど、1人ね、仙台のローカルヒーローの「りゅう」(※「破牙神ライザー龍」のこと)だったかな。っていうのが来てたらしいんですよ。だから僕らが2組目ってことになるんですけど、親御さんから「うちの息子たちの笑顔を取り戻してほしい」ってお願いされて。

──けっこう無茶ぶりですね。

クマガイタツロウ(Vo)

「じゃあがんばってみます」って行ったんですけど、別に保育園の園長先生に呼ばれたわけじゃないから先生たちも「オマエ誰やねん」って感じで。もう誰も僕らのこと知らなかったみたい。それで当日運動会だったんですけど僕らの「てんとうむし」をダンスでみんなで踊ったあとに、みんなが終わって教室に戻ってきたら僕らがいて、生で歌うっていう段取りになったんです。それでみんな踊ったあと教室に戻ってきて先生から紹介されて「てんとうむし」を歌ったんですけど、子供たちが僕らの歌を聴いて何も言わずに踊り出したんです。僕、その光景を見て歌い終わったあとに涙がめっちゃ出てきて。何も言えなくなっちゃったんですよ。

──感極まってしまったんですね。

そうしたら僕が泣いてるのを見て子供たちが「がーんばれ、がーんばれ」って言ってきてね。余計泣けてしまったという。そこで振り絞って出てきた言葉が「ありがとう」だったんです。そのときね、僕もありがとうって思いたいし、言いたい。で、向こうにも感謝してもらったりされたりしたらやっぱりうれしいだろうなって。そういう関係を作りたくて東北ライブを続けていこうって思ったんです。僕ね、そのことがあってからメンバーとかスタッフとかにももっと楽しんでもらいたいなって思うようになったんですよ。だから「ありがとう」って言うことから始めました。

何をしたら喜んでもらえるのか

──そんな感謝の気持ちが楽曲に詰め込まれていると。

やっぱり褒めるのっていいことだなって思って。メンバーに対しても感謝の気持ちはちゃんと伝えたほうがいいんですよ。だから僕はライブ中にイクロー(G)がギターソロ弾いてたらそこで「けっこううまい!」とか言いますもん!

──あはははは(笑)。

さらっと言うのがいいですね。それでお客さんも楽しそうだし、みんな褒められて悪い気はしないじゃないですか。

──バンドとしてもこの半年で絆が深まってきた感じでしょうか?

クマガイタツロウ(Vo)

なんかやる気になってるな、っていうのは感じてます。お客さんに喜んでもらうために何をしたらいいかっていうのをみんなで考えるようになりましたね。この間も兵庫県の明石市民会館大ホールってところでワンマンライブやったんですけど、いろいろと自分たちで企画を考えてやったり、物販の並ぶ列のことまで自分たちで考えてね。お客さんの立場になってやってみたかったんですよ。ゲストに対して1人ずつ手紙を書いたりもしたし。そういう気持ちがおそらく音楽にも出るんでしょうね。僕らの変化がこのアルバムで感じられると思います。

来日コンサートがしたいんです

──クマガイさん自身、自分のどんなところが変わってきたと思いますか?

自分がやりたいこととか絶対にこうなろうっていうこととかあって、いろいろと考えて動いてるんですけど……僕ね、海外行きたいんですよ。

──海外でライブですか? いいですね!

いや、そうじゃなくてね。海外に行きたいんですよ。まあちょっとね、タイミング的に先の話だからまだ言えないんですけど。僕、甲子園球場でライブするのが夢って話したじゃないですか?

──前回のインタビュー(参照:ワタナベフラワー「YOUNG!」インタビュー)でそれについてのプロセスを語ってました。

例えば僕らが甲子園でライブやったら、そのあとどうするんだって考えたときに何をしたら面白いかなって。で、考えたのが来日コンサートだなと。

──えーと、海外に活動の拠点を移すってことですか?

まあまだどこかわかんないんですけどね。今リサーチもしてます。海外でメンバーも探したいし。

──なんかいろいろ聞きたいんですけど、今はまだ構想段階ですよね?

クマガイタツロウ(Vo)

はい。まだなんともって感じです。ただ、僕はね、もともと海外でめっちゃウケる自信があって。だって雰囲気楽しそうでしょ? これが海外で大事なんですよ。先日フィリピンに行って歌ってきたんですけど、めっちゃ盛り上がったんです。言葉もわからんのにね。そのとき閃いちゃったんですよね。ボーカルが僕でメンバーが全員外人さんだったら面白いなって。メンバーはみんなカタコトの日本語でしゃべるの(笑)。「アレ? ライブハジマッテルノニ、クマチャンガステージニイナイヨー」みたいな。

──今のワタナベフラワーでやってることをそのままやるんですか(笑)。

おもろいでしょ? で、フィリピンでオカマにすごい気に入られて。「私は東大阪で手術した」とか言ううさんくさいやつに(笑)。

──もうそのオカマがメンバーで来日したら完璧じゃないですか。

むっちゃ面白い! あと韓国に行ったときに垢すりのおっちゃんと知り合ったんですけど、僕が垢すり頼んだら「私はミュージシャンです」とか言ってきて、どこからともなく縦笛を持ってきたんですよ。そこでおっちゃんが「上を向いて歩こう」を演奏し始めて。めっちゃヘタなんですけど、僕ももう盛り上がっちゃって一緒に歌って。

──そのおっちゃんもメンバー候補ですね。

フィリピンのオカマと韓国の垢すりのおっちゃんがメンバー!

──壮大なRPGみたいになってきましたね。

だからね、そういうのを来日コンサートでドカンとやるために、今僕らは大きくなっておかないといけないんですよ。最低でもホールコンサートができるようになってないと。まあ、海外行けるかどうかはまだわからないので、とりあえず今はもっと大きなところでライブできるように動いていきたいですね。

ニューアルバム「具体的な応援」 / 2014年10月8日発売 / 2484円 / three cheers / THCH-007
ニューアルバム「具体的な応援」
収録曲
  1. 一生懸命はやめられない
  2. 君の名前を考え中
  3. インスタントコーヒー
  4. ビバ結婚~YY mix~
  5. 誕生日
  6. 君が笑顔の真ん中さ
  7. ちゃんとしないとな
  8. ルールドライブ
  9. にんにく原人
  10. ゴーゴーレッツエンジョイサマー~来年の夏ver~
  11. 脱!一生秘密兵器
ワタナベフラワー

ワタナベフラワー

2001年に神戸で結成。現在はクマガイタツロウ(Vo)、ムサ(B)、イクロー(G)の3人編成で活動中。「ワクワクロックンロールバンド」と銘打たれた彼らのライブではクマガイの軽快なMCだけでなく、シャボン玉や風船を使ったエンタテインメント性の高いステージが繰り広げられ話題を集めている。2012年に「てんとうむし」がNHK「みんなのうた」に採用。翌2013年にはワタナベフラワー&ゆーゆで「タン・タン・タン」を発表し、2年連続で「みんなのうた」オンエアという快挙を達成する。2014年2月にはミニアルバム「YOUNG!」を発表。同年10月に2ndフルアルバム「具体的な応援」をリリースした。