ナタリー PowerPush - ワタナベフラワー
甲子園球場で歌うために クマガイタツロウが考えたこと
神戸出身バンド・ワタナベフラワーがミニアルバム「YOUNG!」を発表する。2年連続でNHK「みんなのうた」に楽曲が採用されるという快挙を達成し一躍その名を全国へとどろかせた彼ら。「ワクワクロックンロールバンド」と称される彼らの陽気な音楽はいかにして現在のバンドスタイルに至ったのか。
ナタリーではバンドのリーダーでもあるクマガイタツロウ(Vo)にバンドの生い立ちから話を聞き、彼らの目指す「いつかは甲子園球場でライブ」という夢を実現するためのプロセスに迫った。
取材・文 / 古川朋久 撮影 / 塚原孝顕
ボーカルがB'zしか聴かない偏ったやつで
──ワタナベフラワーは2001年に結成してもう10年以上バンド活動をされてるんですね。
けっこう長くやってますね。バンドをやっていこうって決心したのは19歳の頃なんですけど、僕、家を追い出されまして。親父が厳しい人で大学に行くか音楽やるかっていう2択に迫られて音楽を取ったので「出ていけ」と。
──そこからはバンド活動に没頭して。
そうですね。まだワタナベフラワーを結成する前の話です。そのときやってたバンドの曲は全部僕が作ってたんですけど、ほかのバンドがやってるようなことは僕らはやらなくていいだろうって思って。パンクとか好きだったこともあってふざけたラブソングを作ってましたね。「恋! 愛! 恋愛!」みたいな(笑)。
──大学まで辞めたのに(笑)。
いやあ、本当にね。その頃はパンクをいかに面白く歌おうかっていうのに没頭してて「ゴミはゴミ箱にキチンと分別!」とか歌ってお客さんに「みんなで分別って言え!」とか強制してましたから。しかもそのとき僕はギターをやってたんですけどボーカルがB'zしか聴かないっていうとても偏ったやつで。
──歌い方が目に浮かびますね。
そうなんですよ! だから「恋! 愛! 恋愛!」っていうのも歌い方が完全に稲葉浩志さんで。「こぉい!あぁい!ぅれんあぁい!」みたいになるんですよ(笑)。
──完全にB'z(笑)。
「ぶぅんべぇつ!」って言われてもなんかちゃうなって。だから自分で歌ったほうがいいなって思ってバンドも解散してしばらく1人で曲を作ってました。
ザ・パフパフって言うのは嫌だった
──そこからどういった経緯でワタナベフラワーを結成したんでしょうか。
21歳くらいのとき、手伝ってたスタジオの主催イベントに出させてもらえることになって。そのときはまた別のメンバーでバンドをやってたんですけど、けっこうでかい場所でトリを任されてしまったんですよ。でもまだバンド名も決めてないしどうしようかって中で、当時ギターやってたやつが「ザ・パフパフにしよう」って言って。センスないなあと思いつつもなんでもよかったのでそれでええかなと。
──決まっちゃったんですか?
その予定だったんですけど、ライブ前日の夜に車で帰りながらふと「こんばんはー。ザ・パフパフです」って明日言うのかと思ったら嫌やなって思っちゃって。もうチケットにも名前入っちゃってるんですけど「変えよ!」って思いました。ザ・パフパフ以外ならなんでもええわって、車で外を見ながら何かいい名前はないかと考えてたらカタカナで“ワタナベフラワー”っていう文字が飛び込んできたんです。
──それ、完全に花屋ですよね?
そうです。でもむっちゃインパクトがあったんですよね。ワタナベフラワーなら言えるって思って(笑)。今考えたらどうせそれも仮で、どこかのタイミングでもっとカッコええのになるはずやっていうのはありましたね。
──ライブはどうだったんですか?
スタッフから「今日誰も踊ってへんからおまえら踊らせてこいや」って言われたので「任せてくださいよ!」って張り切ったんですけど、僕、前日にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのライブビデオ観てしまったんですよね。そのとき観てたのがまったくMCやらずに最後に「THEE MICHELLE GUN ELEPHANTでした」ってそれだけ言うっていうカッコいい感じだったので、めっちゃ影響されてしまって、これだ!と。だから相も変わらず「恋! 愛! 恋愛!」みたいな曲を5、6曲やったあとにバーンと名前だけ言って。盛り上がるわけがない(笑)。
──やってることが全然違いますからね。
でもわかってないんですよ。「俺はミッシェルや!」と思ってしまってるんです。そのとき金髪坊主でピアスしてザ・ハイロウズのTシャツ着てトータルバランスが全然悪いのに気付いてない。もうその日はドンズベリですよ。
──ワタナベフラワーとして記念すべき最初の一歩で……。
これはもうホンマに死のうと思って。期待も背負ってたしお客さんもいっぱい来てたのに。音楽をホンマに辞めようと思いましたね。
収録曲
- 運ぶday
- ピッピッピッ
- 僕のふるさと案内
- 最後に笑って
- ダンシング男子はジョギング女子に恋をする
ワタナベフラワー
2001年に神戸で結成。現在はクマガイタツロウ(Vo)、ムサ(B)、イクロー(G)の3人編成で活動中。「ワクワクロックンロールバンド」と銘打たれた彼らのライブではクマガイの軽快なMCだけでなく、シャボン玉や風船を使ったエンタテインメント性の高いステージが繰り広げられ話題を集めている。2012年に「てんとうむし」がNHK「みんなのうた」に採用。翌2013年にはワタナベフラワー&ゆーゆで「タン・タン・タン」を発表し、2年連続で「みんなのうた」オンエアという快挙を達成する。2014年2月にはミニアルバム「YOUNG!」を発表する。