WANIMA初のアコースティックミニアルバム「1Time」特集|追憶にひたり、得たものとは (2/3)

アコースティックは逃げ場がない

──「Hey yo... (2024 ver.)」のオリジナルは2015年11月リリースの「Are You Coming?」に収録されていて、リリース当時に震災について歌った曲だとおっしゃっていましたよね。“2024 ver.”の制作は昨年だと思うんですけど、奇しくも今年の元旦に新たな震災が起こりました。そのことも踏まえてどんなふうにリスナーに響いてほしいですか?

KENTA この曲も「HOME」と同じで、冒頭の「本音の話をする暇もないくらいやけど 軽くしたい背負うその荷物を 痛みのない世界で早く眠りにつきたい 軽くしたい背負うその荷物を」という歌詞は今までライブでしか歌ってない。DVDには収録されているんですけど、音源になったのはお初。踏ん張っている連中に届いたらいいなって思います。

──この曲の選曲理由を教えてください。

KENTA 候補がたくさんあった中、この曲は自然と選びました。ほかの曲もそうですけど、「今まで通ってきた道に対するリスペクトを忘れずに」という思いがあったのでその気持ちを優先しました。毎回ライブのセットリストに入れる曲ではないんですけど、大事な曲やから。自分が忘れたくないタイミングや今日ここで届けたいなというときに「Hey yo...」は歌っています。

──この曲に限らずですが、レコーディングはいかがでしたか? 普段の楽曲とアコースティック曲のレコーディングでは、感覚がだいぶ違いそうですね。

KENTA 歌詞を作っていた当時の温度感が低くならんように、冷めないようにしながらやりました。もともと僕はレゲエやヒップホップが好きであまりバンドを通ってこなかったので、僕の中ではアコースティックのタイム感は自然に体に馴染みがありました。今回のレコーディングで、改めて歌い方やニュアンスの伝え方を工夫してWANIMAの音楽として残せた気がします。でも難しさはありました。今までは爆音の中でごまかせていたけど、シンプルに削ぎ落として研ぎ澄まして演るのがアコースティックだから、逃げ場がない。歌を伝えるために、アコギをどう鳴らすか、カホンをどう鳴らすかで全然変わってくる。

KO-SHIN アコギに関してはエレキギターと弾き方や録り方は全然違う。根本の気持ちはバンドでもアコースティックでも変わらないから自分がやりたいように弾きました。それに対してエンジニアさんを困らせた(笑)。自分としては曲に寄り添うギターという意識で弾いて、難しかったけどいい音が録れたんじゃないかなと思います。

KO-SHIN(G, Cho)

KO-SHIN(G, Cho)

FUJI カホンはライブやラジオ番組の収録では叩いてきたんですけど、レコーディングとなるとまったく違って。鳴らし方が重要になってくるので、そこを自分なりに工夫しました。ドラムと違って音数が少なくて、鳴らせる音の種類も限られている中で、KENTAとKO-SHINからどういうアレンジでどういう色味を出したいかを聞いて、強弱で表現してみたり。そういうところはすごく面白かった。7曲の中で新曲の「Fresh Cheese Delivery」だけドラムセットを使っているんですけど、その中でもいつもみたいにバシバシ叩くんじゃなくて、金物は優しく叩いてみたり、でもスネアはガツンといってみたり。そこの足し引きが難しくもありつつ、楽しかったです。

お客さんにがっかりしてほしくない

──4曲目の「For you」は2016年8月リリースのシングル「JUICE UP!!」の収録曲で、“2024 ver.”はストリングスの音色が美しい1曲に生まれ変わりました。3月に控えているビルボードライブ公演のステージに合いそうですね。

KENTA 「1Time」をトラックリスト順に聴いたときの印象を考えたときに、4曲目の「For you」はこういうテイストにしたいなと思いました。ライブでずっと大事に歌ってきた曲やから、それをアコースティック盤に入れられるだけでもうれしくて、アレンジにあたっては、お客さんにがっかりしてほしくないという思いはありました。自分がいいと思う雰囲気に期限内に仕上げると決めて、大事な曲やから、「『For you』のアコースティックバージョンは間違いないな」って思わせたかった。「これやったら大丈夫や、これやったら世に出したい」という気持ちになれるように自分で仕向けていきました。2025年はまた違う「For you」になっていると思うし、そういうふうに歳を重ねていきたいですね。

──「1Time」は2023年10月リリースのアルバム「Catch Up」と同時並行で制作されたそうですが、そのあたりの苦労はなかったですか?

KENTA それは承知の上でしたけど、今振り返ってみると、もっと切り替えをしっかりせないかんかったなと思います。「Catch Up」の制作でバーッと熱が上がった中で、一旦ひと息ついてこのアコースティック盤の制作に挑めたから、いい息抜きじゃないけど、大半は楽しんでやっていました。もちろん両方とも集中力は必要やったんですけど、集中するポイント、力を入れる場所が違ったから。コーヒーを飲みながらKO-SHINと深夜に練り上げていきましたね。

──並行しての制作は大変ではあったけれども、逆にいいリフレッシュになった部分もあると。

KENTA “やれてる”しんどさは耐えられます。“やれてない”ときのほうがしんどい。俺らは精一杯やれてる喜びや大変さを感じられるほうが合っとると思います。

熊本は大事な場所

──5曲目「りんどう (2024 ver.)」のオリジナルは2019年10月リリースの アルバム「COMINATCHA!!」の収録曲で、WANIMAの熊本への思いを象徴しています。

KENTA 「りんどう」は熊本が大変な時期に作った曲で、要所要所で大事に演奏してきました。「ナンバMG5」(2022年に放送されたフジテレビ系ドラマ)では、挿入歌としてアコースティックバージョンを使ってくださって。そのときにお客さんがすごく反応してくれました。無観客ライブではストリングスの皆さんを迎えて演奏させていただいて(参照:WANIMA、雨のZOZOマリンで幻のツアーファイナル「またここでゼロ距離で会いたかなあ」)、歴史があるから「1Time」に入れたいなと。“2024 ver.”はすごくシンプルなアレンジで、歌とギターで勝負です。

──シンプルだからこそ歌や言葉の力が最大限引き出されているなと感じました。KO-SHINさんはこの曲に対してどんな思いがありますか?

KO-SHIN りんどうは熊本の県花なんですけど、「りんどう」という曲は、熊本の人だけじゃなくて、聴いてくれた人それぞれの歌になっているなという実感がありました。ギター1本と歌だけになったことで、より届きやすいといいですね。もっともっといい「りんどう」が歌えるようになっていくと思います。

──この曲にはカホンやドラムが入っていませんが、FUJIさんはレコーディングには参加されていない……ですよね?

FUJI していません。

KENTA この言葉は編集なしで入れてほしいんですけど、とうとうナタリーのインタビュアーもいじってきたかーと。

──すみません!

KENTA ようやくナタリーが追い付いてきましたね。もうメンバーかのようだな。ナタリーいいぞーと。

FUJI ついにきたか。

KENTA 要は「FUJIくんこのとき何していたんですか?」ってことですよね。

FUJI 応援です。

──代弁ありがとうございます……(笑)。“2024 ver.”を聴いていかがでしたか?

FUJI 自分が参加しなくてよかった、とは言えないですよね(笑)。

KENTA 「りんどう」の“2024 ver.”を作って改めて思ったのは、僕ら3人にとって熊本は大事な場所やなということです。スタッフさんの中に熊本の益城出身の方がいらっしゃって、益城は熊本地震のときに大きな被害を受けた町の1つで。ライブで「りんどう」をやったときにその方から「変わっていく熊本、新しくなっていく熊本に対していろいろ思ったり、当時のことを思い出したりして背筋が伸びる思いです。仲間や家族、家を失ったつらさはその本人たちしかわからない」と伝えてもらって、改めて自分が歌う意味を見つめ直しました。