最新の有線&無線ヘッドホンを試す
──続いてはNW-A105に有線ヘッドホン「MDR-1AM2」とワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」をつないで、BiSHの楽曲「LETTERS」を聴き比べていただきました。まずは率直な感想を聞かせてください。
アイナ 有線ヘッドホンのほうが、イヤーパッドの耳ざわりと装着感がよかったです。レコーディングで使っているモニターヘッドホン(「MDR-CD900ST」)と同じものかと思いました。無線のWH-1000XM4は少し硬い音という印象でしたけど、有線のMDR-1AM2は柔らかい音ですね。耳元で子守唄を歌われてるような、そんな柔らかさを感じる音でした。ワイヤレスヘッドホンはノイズキャンセリングをオンにしたときの静かさに驚きました。外の世界と遮断されるので、1人になりたいときにいい。イヤーパッドの装着感もよかったです。あとリスナー目線の感想だと、音に関しては声のいろんな成分、例えばブレス、息遣いまですごく緻密に聞こえました。出先でも音を集中して聴きたい人にはたまらないヘッドホンですね。
松隈 無線ヘッドホンは密閉感があっていいですね。移動中にも試してみたんですけど、車内でも走行音が聞こえなくなったので、ノイズキャンセリングの効果はすごいなと。有線ヘッドホンは音に立体感がありますね。例えば「LETTERS」は、僕がミックスするときに、ストリングスを遠くで聞こえるようにかなり後ろに配置して、声が前に出てくるようにしているんです。そのミックスのこだわりが有線のMDR-1AM2ではよく再現できているなと。耳元で音の奥行きがしっかり感じられるってことだと思うんですよね。ハイレゾ音源で聴く分にはスタジオで聴いてる音と遜色のないクオリティ。それ以上に思うところもあって、「プロミスザスター」を聴かせてもらったときに右左のギターを聴き比べたら、自分で弾いたギターのテンポが若干ズレてることに気付きました(笑)。ミックスの段階で気付いてないからズレてるわけで、普段使ってるものよりこのウォークマン®とヘッドホンのほうが解像度が高いのかなって思うくらいクリアに聴き取れました。「ミッション:インポッシブルのテーマ」を聴いたんですけど、ブラスセクションの音をよく聴いたら左側の奏者のほうが前ノリだな、とかがわかる。ちょっとした演奏のブレはグルーヴを左右する要素でもあるので、スマホで音楽を聴くときに気が付かなかった細かいところまで聴き分けられる解像度に驚きました。
メンバーの声がうっとり聴こえる有線ヘッドホン
──アイナさんはどんな曲を試聴してみましたか?
アイナ アルバムの「LETTERS」に入っている「ロケンロー」という曲と、CARRY LOOSE の「にんげん」、あとEMPiREの「MAD LOVE」「S.O.S」とか、いろいろ聴いてみました。「音楽ってカッコいいな」とより思えたのは、ウォークマン®と有線ヘッドホンの組み合わせでした。自分のイヤホンで聴くよりも、有線はドラムの鳴りがすごくクリアかつタイトに表現されていて。こういうふうに叩きたいんだろうなという奏者の意図もより伝わるような、まるで“音が見える”感じ。ボーカルの声も中低域がしっかり鳴っているから、(セントチヒロ・)チッチの声って個人的にうっとり系だと思ってるんですけど、もっとうっとり聞こえました。あと「ロケンロー」は東京スカパラダイスオーケストラさんのホーン隊が参加してくれているんですけど、初めて聴いたときにホーン隊1人ひとりの音の聴き分けまではできなかったんです。でも有線ヘッドホンで聴いてみたら「あ、これはアルトのほうかな」みたいなのがわかって。
松隈 今回試したウォークマン®と有線ヘッドホンは、本来の低音の鳴りを聴きなれていない方からすると、こもって聞こえるかもしれません。でもそれが本来の音に近いので、慣れたらクリエイターとか歌い手の表現したい音を楽しめる気がします。有線で聴くとチッチの声がうっとり系に聞こえるとアイナが言ってたけど、僕はリンリンの声にもうっとりしましたね。リンリンの声はシャウトが映えるので、あえてジャギる音質にしてるんですが。声の低音成分を“下っつら”と呼んでるんですけど、アイナの声は最初から下っつらが出てるほうです。で、ウォークマン®と有線ヘッドホンでBiSHの曲を聴くとみんなの声の下っつらもしっかり出てたので、普段スマホで聴くのとは違った一面が感じられると思います。
ワイヤレスヘッドホンに詰まった技術を耳で体感
──アイナさんは無線ヘッドホンのノイズキャンセリング機能に驚かれていましたね。
アイナ ノイズキャンセリングはすごいですね。家で外の電車の音とか、環境音が気にならなかったです。BiSHはメンバーが6人いるので、移動中に自分の世界に入りたくなったとき、強制的に1人になれるからこの機能はもう最高(笑)。
──「WH-1000XM4」のノイズキャンセリングには、ユーザーの装着状態や環境に合わせて最適化される「NCオプティマイザー」という機能を備えています。髪型やメガネの有無なども検出して、ユーザーに合わせてノイズキャンセリング特性が最適化されます。またスマートフォンアプリ「ソニー | Headphones Connect」を使うことでノイズキャンセリングのレベルを調整できたり、アンビエントサウンドモード(外音取り込み機能)もあるので、リスニング中に電車のアナウンスなどを聞こえるようにすることもできます。
アイナ そんな機能もあるんですか? それなら電車に乗っていても安心ですね。
──また無線ヘッドホンの音質が有線には敵わないというお話がありましたけど、ソニーのワイヤレスヘッドホンには無線による音質の劣化を補うための機能が備わっています。まず「LDAC」というソニー開発によるコーデック(Bluetooth®で音声を無線伝送する際に使用する「音声圧縮変換方式」のこと)が採用されているので、実はBluetooth®のデメリットがかなり補われています。なので96kHz / 24bitのハイレゾ音源がLDAC機能(*3)によって、そのままの音質で楽しめるという。
(*3)ソニーが新規開発したハイレゾ音源をBluetooth®経由でも伝送可能とする音声圧縮技術。既存技術に比べて最大約3倍の情報量を伝送可能。LDAC対応の機器間では、ハイレゾ音源をはじめ、従来からの音源もワイヤレスで高音質なサウンドを楽しめる。
松隈 なるほど。そういう技術的な話も興味深いですね。
──アイナさんはBiSHで振り付けを担当していますが、線が絡まないワイヤレスにこれまで興味はありましたか?
アイナ 私は振り付けをするとき踊りながら考えるんですけど、どうしても有線だと絡まるんですよね。いつもは有線のイヤホンをしてるんですけど、ターンをして線が抜けることも多いから、いろんなイヤホン、ヘッドホンを試してました。その中でもこの無線ヘッドホンはフィット感が抜群によくて外れにくかったです。自由に動けるのに緻密な音がしっかり聞こえるので、「ここの音をこういう動きで見せたいな」という発想にもつながりそうです。
あなたは有線派? 無線派?
──お二人の立場で、有線ヘッドホンと無線ヘッドホン、選ぶならどちらですか?
松隈 僕は有線派ですね。やっぱり音質もいいし、有線のほうが安心感があります。何かインスピレーションが湧いたときにすぐに使えないのが嫌なんですよね。だから「今あの音楽が聴きたい!」ってときに確実に線でつながっているというのはいい。無線のほうが動きやすいのは確かですけど、僕はもう何十年も有線のヘッドホンを扱ってきているから線さばきには慣れてるので(笑)。線があることのわずらわしさはそこまで感じませんでした。
アイナ 私はどちらかと言えばワイヤレス派です。アユニ(・D)もモモカン(モモコグミ・カンパニー)もチッチもワイヤレスなんですよ。踊りの練習をするときとか、本番前に1人で集中したいときはワイヤレスだとノイキャンもあるし、本当にありがたいです。でも最近は作曲もしていて、そういうときはやっぱりいい音でチェックしたいから用途によっては有線派(笑)。こういう有線ヘッドホンを使って音楽を聴いていたら、自分の歌にもっと深みを出したいなって思いました。有線も無線もいい……どっちがいいか選べないです!(笑)
インタビュー動画
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アイナ・ジ・エンド(BiSH)フォトギャラリー
2021年2月24日更新