ナタリー PowerPush - 惑星アブノーマル

独裁少女の脳内 「何でも無い凶器」

強烈に耳に残る楽曲と圧倒的な歌唱力でシーンに衝撃を与えている女性2人組ユニット・惑星アブノーマル。彼女たちが初の全国流通盤「何でも無い凶器」を3月6日にリリースする。本作は、アレックスたねこ(Vo)の脳内にある物語を生々しく吐き出した6曲入りミニアルバム。今回ナタリーでは2人にインタビューを行い、謎に包まれたユニットの実態に迫った。

取材・文 / 伊藤実菜子

 
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私けっこう独裁政治

──まずは結成のいきさつから教えてもらえますか?

左からアレックスたねこ(Vo)、テナ・オンディーヌ(Syn, Key)。

アレックスたねこ(Vo) 私が通ってる音大で、毎年オーディションに受かった人だけ出れるライブがあって。それに私が出てたのをテナ(・オンディーヌ)が偶然観てて、入学してくれたんですね。そしたらすぐにテナにストーキングされて。

──ストーキングですか(笑)。テナさんはたねこさんのどこに惹かれて入学しようと思ったんですか?

テナ・オンディーヌ(Syn, Key) 声もそうだし、近付きたいけど近付いちゃだめかなあ、みたいなオーラがすごい魅力的で。

たねこ 大学で練習してたら、部屋の窓にデカい女が張り付いてるんですよ。最初は怖いなと思って気付かないふりしてたんですけど、だんだん仲よくなって。その頃、私が当時やってたバンドのギタリストを辞めさせちゃって、代わりにキーボードを入れようってなったんでテナと1回合わせてみたんです。そしたら、鍵盤の普通の音にシュワーっていう豪雪みたいな音を混ぜたり、とにかく聴いたことのない音を出してきて。最初あまりにも奇天烈すぎて「うわあー」って思ってたんですけど、やってくうちに「あれ? この子以外に別にいらなくね?」って思っちゃって……ドラムを辞めさせ、ベースを辞めさせ(笑)。2人になってまた新しい人たちを入れたあたりから、惑星アブノーマルになっていった感じです。その新しい人たちも今のサポートメンバーではないんですけどね。

──じゃあこの2人が基本にあって、演奏隊は流動的というか。

たねこ そうですね、ころころ変わってます。私けっこう独裁政治なんですけど、バンドにするといろいろと意見を聞き入れなきゃいけないじゃないですか。それにたぶん言うこと聞かない。破滅する……っていうふうになるんで(笑)、今のところはバンドにする気はないんですよね。彼女(テナ)がすごい、ほんとに「紅天女」みたいな、言うことをそのまま素直に受け止めて素直に出してくれるまっさらな人なので。今までそういう人がいなかったんですよね。

──たねこさんの頭の中を具現化するのが惑星アブノーマルなんですね。たねこさんがやりたいことというのはなんなのでしょう?

たねこ 自分の中にあるいろんな物語を全部表現したい。私多種多様な音楽をやってるソロアーティストがすごい好きで、例えば柴田淳さんとか、宇多田ヒカルさんとか、まあ(惑星アブノーマルを)聴けばわかると思いますけど椎名林檎さんとか。そういう人たちの変貌ぶりというか、いろんな面を持ってるところに憧れてて。それに演劇、お芝居も好きだし、ずっと小説家になりたいとも思ってたんです。

──確かに歌詞は小説的というか、言葉の選び方に個性が表れてますね。演劇の要素も、ライブでの小芝居に反映されてると思いますし。

たねこ まあライブのは茶番ですけどね。なんの収拾もつかないMCをして、そのまま捨てて帰るってだけの。あとはお前ら(メンバー)にまかせたみたいな(笑)。

重たく捉えてほしくないから滑稽さを出す

──では今後惑星アブノーマルはさまざまな面を見せていくということですね。

たねこ そうですね。アルバムによってカラーをしっかり分けたいなって思ってます。ずっと「何でも無い凶器」にいるつもりもないので。今回は一番出しやすい部分を寄り集めたんで、ダークなものになりました。

左からアレックスたねこ(Vo)、テナ・オンディーヌ(Syn, Key)。

──そもそも「惑星アブノーマル」っていうバンド名がダークですよね。

たねこ 意外といかついって言われるんですよ。私、ねごととかチャットモンチーみたいなキュートさを意識したんですけど、周りからさんざん「かすってもいねえよ」って言われて……。

──アブノーマルですからね(笑)。ミニアルバムのタイトルにある「凶器」とか、「刻んで 遊ぼ」「首を刎ねて さよならしよう」といった歌詞もそうですけど、やけに物騒だなと思って。

たねこ 物騒とは! そんなそんな。王道ですよ、私としては。Mr.Childrenもすごい好きなんで、「私の歌詞ミスチルだと思うんだよね」とか言うと「ふざけんなよ」ってさんざん怒られるけど。

──そうなんですね、てっきり鬱屈したものがあるのかと思ってました。無意識にこういう歌詞が出てくるんですか? わざととがってやろうみたいな気持ちはない?

たねこ とがってやろうっていう気持ちはないですね。「犬」は当時の心境そのままなのでちょっと感情的すぎるけど、「フラレ唄」は人間の愚かなところとかバカっぽいところを強めに出してるつもりです。つらいこと……要はフラれたんですけど、それを「かわいそう」って捉えられないように、滑稽さをわざと出して。

──それはどういう気持ちからなんですか?

たねこ 私、ただ切ない曲とか気落ちするような曲は引きずっちゃうから苦手なんですよ。そういう気持ちに、聴いてる側になってもらいたくないんです。そこまで重たく捉えてほしくないし、楽しんでほしいんで。Twitterでよく自虐的なツイートがあるじゃないですか、「リア充死ね」みたいな。そういうのと一緒というか。自分自身が一番愚かなのはわかってるんですよね。だから面白おかしく聴いてくれたらなと思います。

LIVE INFORMATION
  • 2013年3月27日(水)宮城県 仙台PARK SQUARE
  • 2013年4月12日(金)愛知県 名古屋ell.SIZE
  • 2013年4月13日(土)大阪府 アメリカ村CLAPPER
  • 2013年4月14日(日)京都府 京都MOJO
惑星アブノーマル“何でも無い凶器”
全国発売記念公演「脳移植イースター」

2013年4月5日(金)東京都 渋谷milkyway
<出演者>
惑星アブノーマル / ヒグチアイ / Kent Kakitsubata

惑星アブノーマル(わくせいあぶのーまる)

アレックスたねこ(Vo)とテナ・オンディーヌ(Syn, Key)からなる女性2人組ユニット。サイケデリックかつ変則的な楽曲と、観る者を圧倒させる強烈なライブパフォーマンスが話題を呼ぶ。2012年春に開催されたKi/oon Musicの新人発掘オーディション「キューン 20 イヤーズオーディション」では、約4000組の応募者の中からファイナリスト11組に選ばれた。2013年3月、初の全国流通盤となるミニアルバム「何でも無い凶器」をredrecからリリース。