Wakana|大好きなアニソンを歌ってつかんだ自分の個性

Wakanaとして向き合って歌うべき

──悩んだという収録曲については、どう選んでいったんですか?

Wakana

特にジブリ作品からはたくさん選んでいたので泣く泣くカットしたものも多数なんですけど、全体としては新旧織り交ぜた内容にしたい思いがありましたね。「Rain」なんかは自分のオリジナルソングにはない男性目線のラブソングなので、ぜひ歌ってみたいと思いました。逆に「やさしさに包まれたなら」はユーミン(荒井由実)さんならではの女性の視点で描かれた曲なので、アレンジも女性にお願いしたいなっていうイメージがあって。そういった方向から選曲したものもありました。

──「やつらの足音のバラード」や「Get Wild」が選曲されていたのはちょっと意外な感じもあったのですが。

確かにそうですよね(笑)。その2曲に関してはスタッフさんが出してくれた候補曲から選んだんですよ。試しに一度仮で歌ってみたところ、案外違和感がなかったので。

──今お話に出た「やさしさに包まれたなら」をはじめ、「時には昔の話を」「いのちの名前」「風のとおり道」「君をのせて」と、ジブリ作品からは5曲が選ばれています。幼い頃から親しんできた曲たちを自らの歌で盤に刻んでいく作業はいかがでしたか?

原曲への熱い思いを抱えている方が世の中にはたくさんいらっしゃるわけですし、私自身にもそれぞれ大事な思いがあるので、最初はやっぱりすごくプレッシャーを感じましたね。しっかり取り組まなきゃと思えば思うほど、歌う前に迷ってしまうこともあって。でも途中から、あまり考えすぎてもキリがないなって気付いたというか(笑)。原曲を超えることはできないし、そもそも超えるつもりもない。だったらWakanaとしてしっかり向き合って歌うべきだと思ったんです。どうすればそれぞれの曲を自分のものにできるのかをイメージしながら、春先からのボイストレーニングを通して研究していた自分の声を最大限に使い、一番美しく響く歌声を乗せていくことを意識するようにしました。

──結果、どれも迷いのない歌声でWakanaさん色に染め上げられたカバーになっていると思います。

自分としては「やさしさに包まれたなら」にはすごく思い入れがあったので、歌うことに対して一番心配があったんです。偉大なユーミンさんが歌われている曲でもあるし。でも、アレンジをしてくださった櫻井(美希)さんや、すべての曲でボーカルディレクションをしてくださった(橋本)しん(Sin)さんがレコーディング中、ずっと側にいてくれたことですごく安心して歌えました。この曲には「大人になっても神様を信じていたい」という少女のときの思いが込められているんですけど、そこを意識したかわいい歌声を出していいものなのかどうかでちょっと迷ったんですよ。でも結果的に「そこを出してもいいよね」と思えたのは、櫻井さんやしん(Sin)さんがいてくれたからこそだと思います。

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兼松衆が導いた新たな表情

──「いのちの名前」のサウンドはすごくシンプルで音数も控えめですよね。その分、Wakanaさんの歌がより響いてくる仕上がりだなと。

アレンジャーの兼松(衆)さんが「この曲はピアノなしにします」っておっしゃっていたので、どんなアレンジになるか楽しみにしていたんですけど、すごく張り詰めた雰囲気になりました。オケのレコーディングにもものすごい緊張感がありましたし。皆さんが1つひとつの音を噛みしめながら重ねている姿がカッコよかったですね。そのオケ録りを見ている間に、仮歌で思い描いていた表情がちょっと違うかなと思えてきたところもあって。なので本番では少し方向性を変えて、オケ録りの現場で感じ取った雰囲気を落とし込んで歌っていった感じでした。

──アルバムの中では「愛にできることはまだあるかい」がもっとも最近の曲ですね。

はい。この曲は練習をしっかりしたうえで臨むのではなく、レコーディングの日の気持ちを大事にしたほうがいいんじゃないかなと思ったんですよね。それはライブのときの感覚に近いものだったというか。ライブのときは当日に一番の熱さを出すために、前日は自分の中の熱を温存するんですよ。

──気持ちのピークをライブ当日に持ってくるために。

そうそう。この曲はそういうやり方が合っている気がしたんです。でも、実際本番でブースに入って歌ったら、声質にちょっと雑味が出てしまったんですよ。言ってしまえば、自分の想像してた歌声が出なかった。しかも7分くらいある長い曲なので、何度も歌っていたらどんどん抜け殻のようになってしまって(笑)。

──なるほど。

でも、そこでまたしん(Sin)さんが「すごくよかったよ。その歌でいいと思うよ」って私を導いてくれたんです。その言葉を受けて自分としても、その場で出た歌が正解なんだなって思えるようになったんですよね。

──客観的な意見によって、ご自身の中にあった新たな表情を受け入れることができたということなんでしょうね。

そうだと思います。だからアルバムの中でもすごく好きな1曲になりました。毎日、ずーっと聴いちゃってます(笑)。