Wakana|大好きなアニソンを歌ってつかんだ自分の個性

Wakanaが初のカバーアルバム「Wakana Covers ~Anime Classics~」をリリースした。

今年9月に始動したカバープロジェクトの第1弾作品として作られた本作は、Wakana自身が愛するアニメソングをクラシックアレンジでカバーする内容だ。収録曲は「やさしさに包まれたなら」(映画「魔女の宅急便」)や「時には昔の話を」(映画「紅の豚」)、「いのちの名前」(映画「千と千尋の神隠し」)、「風のとおり道」(映画「となりのトトロ」)といったジブリ作品の楽曲に加え、「Get Wild」(アニメ「シティーハンター」)や「やつらの足音のバラード」(アニメ「はじめ人間ギャートルズ」)、「愛にできることはまだあるかい」(映画「天気の子」)、「夢のゆくえ」(映画「ドラえもん のび太のドラビアンナイト」)など、幅広い世代にアピールするラインナップ。それぞれの楽曲に満ちているWakanaの新鮮な表情により、シンガーとしての魅力を改めて実感させる仕上がりとなっている。

12月22日には約1年ぶりとなるライブ「Wakana Anime Classic 2020」の開催を控えるWakanaに、カバーアルバムの制作エピソードやその過程で手に入れたシンガーとしての気付きについて話を聞いた。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 星野耕作

宅録はじめました

──Wakanaさんが音楽ナタリーの特集に登場するのは、今年2月にリリースされた2ndアルバム「magic moment」(参照:Wakana「magic moment」インタビュー)のとき以来ですね。

あのリリースのあと、世界は大変なことになってしまいましたよね。春先にはマスクをはじめ、いろんなものがなかなか買えなくなってしまったりして。今まで当たり前だったことがすごく変わってしまったと思います。ただ私自身は時間に余裕が生まれたことで、いろんなことを始めてみようって前向きに考えることができたんですよ。

──ステイホーム期間中に何か始めたんですか?

はい。宅録や動画編集を始めました。今までは「自分にはできないよな」と思って手を出さずにいたんですけど、いざ始めてみるとすごく楽しくて。特に宅録はすごく便利だし、活動をするうえでも役に立つんです。例えば今までは仮歌をボイスメモに録って、SDカードでパソコンに転送して……みたいなことをやっていたんですけど、今はそれがパソコン上ですべてできてしまう。しかも宅録を始めたことでマイクやヘッドフォンと自分の声との関係性みたいなものも捉えやすくなって。そういう部分は今回のアルバム制作にもすごく役立ちました。レコーディングのときにアレンジャーさんやエンジニアの方とお話ししていても、今まで以上に専門的なところでコミュニケーションが取れるようにもなりましたし、それによって「こんなこともやってみたいです!」という好奇心も増えたんです。

──非常に有意義な時間の使い方ができていたんですね。

そうですね。リモートではありましたけど、ボイストレーニングやボディのトレーニングの回数を今までよりも増やして、それをルーティンにすることですごく清々しい毎日を送れるようにもなっていました。夏の終わりくらいまではそんな充実した日々を過ごしていましたね。

自分で仮歌も録れます!

──そんな中、9月にはアニソンとクラシック音楽を融合させたライブ「Wakana Anime Classic 2020」を12月22日に開催することを発表し、同時にピアノ伴奏によるアコースティックスタイルでのアニソンカバー動画がYouTubeで公開され始めました。その後、Wakanaさんのカバープロジェクトが本格的に始動して、その第1弾作品として今回、「Wakana Covers ~Anime Classics~」のリリースが発表されました。そういった活動の流れもコロナ禍の中で練り上げていたわけですね。

実は「Anime Classic」に関しては昨年あたりから動いてはいたんですよ。本来であれば「magic moment」を引っさげたライブ(参照:Wakanaが2ndアルバム携えホールワンマン、音楽監督は武部聡志)のあとに1回目の「Anime Classic」を開催する予定だったんです。ただ、「magic moment」のライブがコロナの影響で2度延期になり、開催が来年になってしまったので、じゃあ12月から「Anime Classic」をスタートさせましょうという流れになりました。当初の予定では12月22日に2回目の「Anime Classic」をやる予定だったんです。

──アニソンのカバーアルバムをリリースすることはいつ決まったんですか?

Wakana

ライブの予定が見えなくなってしまったことで、たっぷり時間ができたんです。その間にじっくりとライブのセットリストを考えたりしていたんですけど、そこでビクターさんのほうから「せっかくだったらライブの前にアルバムを1枚出しましょう」とお話をいただいて。私はもう、「やります! 自分で仮歌も録れますから!」みたいな感じでテンションが上がってしまって(笑)。

──学んだことがさっそく生かせるからうれしくなっちゃって。

そうです、そうです(笑)。しかも私はもともとスタジオジブリをはじめとするアニメ作品が大好きで、そこで流れる曲を幼い頃から歌ってきていたんですよね。私にとっては当たり前のようにそばにあったのがアニメソングだったんです。だから、アルバムのお話をいただいたときは純粋に楽しそうだなと思えました。さらに言えば、そのアルバムを作ったあとにライブで歌えることもすでに決まっているわけですからね。本当にワクワクしかなかったです。ただ、ひと口にアニメソングと言っても作品数が多いし、ジャンルもさまざまなので、選曲に関してはけっこう悩みました。

──アルバムにおいてもアニソンをクラシックアレンジでカバーすることは、「Anime Classic」というライブからの流れで決定したんですか?

そうですね。「Anime Classic」に関しては、The BeatlesさんをはじめとするUKロックをクラシックアレンジでカバーしている女性ユニットの1966カルテットさんと一緒にやりましょうという話からスタートしたものだったんです。アルバムには、そのライブの雰囲気を事前に感じてもらうという意味合いがあったので、クラシックアレンジでカバーすることは決まっていましたね。ただ、アルバムに収録するカバーのアレンジについては、曲ごとにいろいろなアレンジャーの方にお願いすることにしました。リモートでの打ち合わせを通して、私なりの思いをしっかりお伝えしたうえで、すべての曲で素敵なアレンジをしていただけたと思いますね。