音域を広げていきたい
──アルバムにはさまざまなタイプの楽曲が並んでいます。どんな基準で選んでいったんでしょうか?
“自分が歌ってみたいと思う曲”“自分の出してみたい声を導いてくれそうな曲”というのが基本ではありますね。あとはライブで盛り上がる曲を増やしていきたいという気持ちもあったので、サウンド的に楽しいものも基準にはなりました。たくさんのデモを聴かせていただき、「これ、自分が歌ったらどうなるかな?」と想像するのは難しくもあるんですけど、すごく楽しい作業でしたね。
──ご自身なりのトライを意識したものもありましたか?
はい。「where」なんかは自分の中ではけっこう珍しいタイプの曲じゃないかな。あまり歌ってこなかったキーなので。「ひらり ひらり」もあまり歌わない音域という意味で新鮮さはあったし。どちらもすごく好きですね。
──Wakanaさんの場合、サウンドのスタイルというよりは、キーの部分でトライアルだと感じる部分が大きいんですね。
そうなんですよ。自分が感じる新鮮さ、斬新さはキーの部分なんですよね。それによって必然的に歌い方が変化していくし、そこで新しい世界が見えたりもする。いろんなキーの曲を歌ってみることで、新しい自分の表現、自分に合った新しいスタイルを見つけていけたらいいなっていう気持ちが強いんだと思います。サウンド的に違いを見せたほうがパッと聴いてわかりやすいとは思うんですけどね(笑)。
──いやでも、低音を使った声が聞こえてきたりすると「お!」と反応しちゃうところはありますからね。キーで新たな表情はしっかり見せられるものなんだと思います。
もともとKalafinaでソプラノをずっとやらせてもらっていたし、自分としても高音域が歌いやすいんですよ。でも、ソロではそういった部分だけではなく、中域や低域も広げていきたい。だからそういった曲を選んだところはあったと思います。
──「where」は疾走するようなサウンドの感触も斬新な印象です。アッパーな曲ではありますけど、比較的クールに歌声を乗せているところがすごくよかったんですよね。
自分でもすごく新鮮だなって思いました。熱くなりすぎることなく、軽くふわふわとサウンドに乗っていくのが「where」というタイトルにもつながるような気がしたんですよ。自分の思いは自分にしかわからない、どこにいてもいいんだっていう思いを込めつつ、言葉がきちんと伝わる歌を意識してレコーディングしました。今までは言葉にアクセントを付けるのがちょっと苦手だったんですけど、そこをしっかり意識することで歌詞の持つ力が変わっていくっていうことを教えてもらった曲でもありましたね。
表現の引き算は得意
──「ひらり ひらり」は柔らかなボーカリゼーションが素敵ですね。
この曲は柔軟さを大事にしつつ、歌詞に込められた強い思いをしっかり表現していくことを考えながらレコーディングに臨みました。声のエアリー感をちゃんとコントロールして、ブレス部分も丁寧に、丁寧に。ここでも優しくなりすぎず、言葉をはっきり歌うことは意識していましたね。
──感情的な部分はどうでしょう? すごく切なさも感じさせる歌声ですけど。
この曲はね、どう歌っても切なくはなるんですよ(笑)。
──楽曲の持つ雰囲気に寄り添えば自然と切ない表現になると。
そうそう。メロディもね、切なさをしっかり導いてくれるし。でも、だからこそ切なくなりすぎないようにっていうところは気を付けました。あまりいきすぎるとサムくなっちゃうと思ったから。そういう意味では引き算しながらのレコーディングだったかもしれないです。
──表現に関して引き算をしていくことは得意ですか?
まだまだ不器用だとは思うんですけど、すでにあるものを削るほうがやりやすいかなって。例えば自分が100%で歌ったものに対して、「もっと出して」と言われたらかなりキツイじゃないですか、発声の問題でも感情の問題でも。どちらかと言うと感情のほうだったら、私的にけっこう大変なことになってしまいますね(笑)。もちろん事前に作曲家さんやアレンジャーさんと感情面のすり合わせみたいなことはちゃんとやるので、そこまで大幅に食い違ってくることはないんですけどね。
──そういったすり合わせ作業の中では、ご自身がどう表現したいかを明確に伝えたりもするんでしょうか?
そうですね。まず、その曲や歌詞をどういった思いで作られたかをお聞きしたうえで、「こんなふうに歌おうと思っているんですけど、大丈夫でしょうか?」みたいな感じでお伝えして。皆さん優しいので、「全然ダメです」って言われることはまずないんですけど(笑)。具体的な自分の意志はお伝えするようにしています。そういうやり取りをすることで、曲に対する新たな発見があるのも楽しいんですよね。
──レコーディングの前にそういったプロセスを踏むようになったのはソロになってからですか?
もちろん以前から曲に込められた思いはしっかり確認したうえで歌わせていただいていました。でもソロになったことで、より積極的に自分からアクションを起こすようになったところはあるかもしれません。それは作詞という経験も大きいと思います。
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