渡辺流トラブル克服術
──渡辺さんはプロデューサーとして新しいアイデアや企画を次々と仕掛けていますが、いつもどのくらい先まで計算してるんでしょうか?
渡辺 いや、全然です(笑)。実はすごく考えてるんじゃないかって深読みされるけど、ホント行き当たりばったりですからね。
松隈 先のことは決まっているようで決まってないよね。
渡辺 だからそのぶんリカバリしやすいのかも。これはBiSのときに学んだんですけど、いわゆる地下アイドル運営の人たちは決めたことが計画通りに行かなかったときにそのまま崩れていくっていうパターンが多くて、そこが惜しいなって思うんです。僕もBiSで最初にメンバーが脱退したときは動揺したけど、一度乗り越えると「あれ、脱退ってビジネスになるんだ?」ってことに気付いたから。
──柔軟さが大事なんですね。
渡辺 ダメだったらダメだったなりのやり方があるんですよ。例えば今もしBiSHから誰か抜けたらヤバいってみんなが思うだろうし、そりゃあヤバいんだけど、でも……。
松隈 そんなに恐れてないよね。
渡辺 うん、「じゃあどうしようか」ってことを考えるしかない。
──でも普通はそういう場面ですぐに次のアクションをとれない人のほうが多いですよね。気持ちの整理が付かないこともあるだろうし。
松隈 ああ、それがないのかもね、俺たち。サイコパスだから(笑)。
──切り替えが早いんでしょうね。
松隈 たぶん立ち直りは普通の人より早いですね。傷付いてはいるんですけど。
渡辺 そう、傷付いてはいるんですけど、僕たちに関わらない人たちにあんまり興味がないんです。誰かが「辞めます」ってなった瞬間にちょっと興味がなくなっちゃう。
松隈 それはあるよね。こっちから「辞めてくれ」って言ったことは一度もないし、離れていくならもうしょうがない。
──じゃあプロレス的な仕掛けでファンの気持ちを揺さぶってやろう、みたいなことを考えてるわけではない?
渡辺 ないない。そういうのはまったくないです。僕としてはやっぱりメンバーにもお客さんにもいい夢を見てもらいたいと思ってやってるつもり。そしてお金を使ってもらったり、時間を割いてもらったりしてるんだから、その人の人生に爪痕を残したい。それができないならやる意味はないです。傷付けたいとは思ってないけど、何かしらを感じてもらいたくて。だからこそトラブルがあったとしても僕たちが感傷に浸ってる暇はないし、お客さんにもその感覚を共有してもらえたらっていうのは思ってますね。
プー・ルイダイエット企画の顛末
──でもメンバー脱退は仕方ないとしても、そのほか2017年も物議を醸す出来事がいろいろありましたよね。例えば9月にはプー・ルイさんのダイエット企画が炎上していました。
渡辺 あれが失敗だったのはプー・ルイのファン向けの企画だったはずなのに、ファンじゃない人たちに怒られちゃったっていうところですよね。
──でも結果として企画は失敗してプー・ルイさんは活動休止になってしまったわけで、誰も得をしないし、彼女のファンも喜ばなかった。それでもあの企画はやらなきゃならなかったんでしょうか?
渡辺 わざわざ公開でやるべきだったかって意見はあると思いますけど、あれはそもそもプー・ルイがやりたいって言ったんですよ。普通に雑談してるときに「お前ちょっとダイエットしたほうがよくない?」みたいなことを言ったら「すごくしたいんですけど誰かに監視してもらわないとできないんですよ」ってことになったんで、じゃあ公開企画にしてみようかって流れで。無理やり「ライザップやれ!」なんてことは俺はひと言も言ってなくて、だから失敗した企画はだいたいメンバー発案なんですよね(笑)。
松隈 渡辺くんが何か仕掛けるときは、ちゃんと流れとかドラマを作って、落としどころを用意してやるんです。でもあのダイエット企画は本人が失敗しちゃって落としどころがなくなってしまった。
──それで渡辺さんとプー・ルイさんが2人で歌ってお茶を濁す結果に。
松隈 すごい落としどころやったね、あれ(笑)。本当は渡辺くんは太ってる子のほうが好きなのに。
渡辺 そう、僕デブ専なんですよ。
──じゃあ別に痩せさせたいわけじゃない?
渡辺 個人的にはそうです。でも女の子たちは「痩せます」って言うんで「そう言うんだったら痩せろよ」って思うだけ。
松隈 WACKほど痩せさせない事務所ないのにね(笑)。
──そしてプー・ルイさんは3月4日のライブを最後に卒業することが発表されました。渡辺さんにとって彼女の卒業は大きな意味を持つのでは?
渡辺 そうですね。時代が1つ終わる感じはすごくしてます。何回も何回も話し合ったんですけど、本人が「もうBiSでがんばれない」ってことなので、じゃあ俺も納得するしかないなっていう。
──渡辺さんはプー・ルイさん卒業の理由をどう捉えていますか?
渡辺 僕の勝手な印象ですけど、たぶん以前のBiSはプー・ルイのものだったんです。でもたぶん彼女は今のBiSを自分のものにできなかったんですよね。本人が言ってたんですけど「(再始動後)最初のBiSの合同合宿だけが楽しかった」って。あとは楽しくなかったみたいです(笑)。だからこの数年でやっぱり僕も変わったし周りも変わっていったのに、その中で1人プー・ルイだけ時代が止まってる感じがあった。それで「じゃあ今までBiSを作ってきたのはお前だし卒業っていう形にしようか」って。脱退発表のときにプー・ルイは「私にとってBiSは必要じゃなくなって、BiSにとっても私が必要じゃなくなった」って言ってましたけど、まあその通りっていうか、それが一番の理由なのかなって気がしてます。
WACK所属メンバーへの思い
──それにしてもWACK所属の各グループは現在みんないい状況ですよね。EMPiREもデビュー時からエイベックスと契約してますし。
渡辺 うん、EMPiREはうらやましいですね。
松隈 いいよね。
渡辺 あんな恵まれた状況ないですよ。プー・ルイとか間違いなく「死ねよ」って思ってますから(笑)。
──でもそれはBiSHを筆頭に各グループが実績を重ねて、WACK自体への信頼が生まれた結果ですもんね。
渡辺 こんなことになるなんて全然思ってなかったですけどね。今やってるオーディション1500人以上応募ありましたからね。もう怖いですよ。
松隈 1500人もWACKに入りたいってすごいね。あんな炎上してるのに(笑)。
渡辺 でもうれしいなって思うのは「自分を変えたいです」とか、そういうふうに思って一歩を踏み出してくれてる子が多いので、その気持ちには応えたいなと思ってて。例えばアイナだって、もちろん才能はあったと思いますけど、個人で活動してたときにはお客さんなんて全然いなくて、それで数年やってた子なので、その状況を僕たちが変えてあげられたのはすごくよかった。これからもそういう子たちをすくい上げていけたらって思ってるんですけど。
──渡辺さん、意外と面倒見はいいんですよね。
渡辺 そのつもりなんですけどね(笑)。これ嘘くさく聞こえると思うけど、ホントに愛しかないですよ。あの子たちのやりたいことを尊重したいなって思ってるから、例えば今度モモコが書いた本が出るんですけど、やっぱ書きたいって気持ちがあるならそれができる環境を作ってあげたいし。なんなら寺嶋由芙さん(ex. BiS)が今ゆるキャラ大使みたいになってるのも、当時僕がゆるキャラの連載を持たせてあげたところから始まってますからね。意外とちゃんと考えてるんです(笑)。
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「オーケストラ」事件の裏側
- V.A.「WACK & SCRAMBLES WORKS」
- 2017年12月6日発売 / avex trax
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CD+DVD盤
4860円 / AVCD-93764/B -
CD盤
3240円 / AVCD-93765
- CD収録曲
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- スパーク(オリジナル:BiSH) / beat mints boyz a.k.a. 松隈ケンタ×JxSxK
- オーケストラ(オリジナル:BiSH) / カミヤサキ、ゴ・ジーラ、ももらんど(BiS)&ヤママチミキ、ココ・パーティン・ココ、アヤ・エイトプリンス(GANG PARADE)
- gives(オリジナル:BiS) / アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、リンリン(BiSH)&キャン・マイカ、ユイ・ガ・ドクソン、テラシマユウカ(GANG PARADE)
- Nerve(オリジナル:BiS) / BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiRE
- Plastic 2 Mercy(オリジナル:GANG PARADE) / キカ・フロント・フロンタール、パン・ルナリーフィ(BiS)&アイナ・ジ・エンド、ハシヤスメ・アツコ、アユニ・D(BiSH)
- EMPiRE is COMiNG / EMPiRE
- WACK is FXXK / SAiNT SEX
- フライングヒューマノイド(オリジナル:中川翔子) / プー・ルイ、ペリ・ウブ(BiS)&モモコグミカンパニー、リンリン(BiSH)&ユメノユア、ヤママチミキ(GANG PARADE)
- ラバソー ~lover soul~(オリジナル:柴咲コウ) / セントチヒロ・チッチ(BiSH)&アヤ・エイトプリンス(GANG PARADE)
- 屋上の空 / Buzz72+ feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)
- DVD収録内容
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- スパーク / beat mints boyz a.k.a. 松隈ケンタ×JxSxK(Music Video)
- WACK is FXXK / SAiNT SEX(Music Video)
- 渡辺淳之介(ワタナベジュンノスケ)
- BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREらが所属する事務所・WACKの代表取締役として各グループのプロデュースを担当。前例のないプロモーション施策を次々と実施し、2014年にはBiSの神奈川・横浜アリーナ公演を成功させた。現在はWACK所属アーティストのほかに、NIGOと共にBILLIE IDLEのプロデュースも手がけている。2017年7月に千葉・幕張メッセイベントホールにてBiSHの単独公演を成功に収め、8月にはWACKとエイベックス・エンタテインメント株式会社によるプロジェクト「Project aW」で新グループ・EMPiREを始動させた。
- 松隈ケンタ(マツクマケンタ)
- 福岡県出身の音楽プロデューサー、音楽制作プロダクションSCRAMBLES代表。ロックバンドBuzz72+を率いて上京し、2005年にavex traxよりメジャーデビュー。編曲家CHOKKAKUのプロデュースにより4枚のCDを発表する。バンド休止後に作詞家、作曲家としてアーティストへの楽曲提供をスタートさせ、BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREらの楽曲を手がけている。さらにロックバンドGHOST ORACLE DRIVEのボーカルを担当しているほか、ギターブランド、楽器店、音楽スクール、スタジオを運営している。