高橋諒(Void_Chords)×梶浦由記|「プリンセス・プリンシパル」が引き寄せた2つの異端

テレビアニメ「ACCA13区監察課」「ようこそ実力至上主義の教室へ」などの劇伴音楽や、さまざまなアーティストへの楽曲提供およびプロデュースで手腕を発揮する高橋諒が、新たなプロジェクト・Void_Chordsをスタートさせた。7月から放送されているテレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」のオープニングテーマとなった第1弾シングル「The Other Side of the Wall」では、ブロードウェイミュージカル「RENT」への出演経験もある実力派シンガー・MARUをフィーチャリングボーカルに迎え、スチームパンクの世界観をイメージしたと言うジャズテイストのナンバーでアニメソングに新風を巻き起こしている。

そんなVoid_Chordsの始動を記念し、音楽ナタリーでは高橋諒と「プリンセス・プリンシパル」の劇伴を手がける梶浦由記との対談を企画。アニメシーンに深くかかわる音楽家同士の、それぞれの流儀に迫るクロストークをお届けする。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 佐藤類

血の温度がグンッと上がるオープニング

──梶浦さんと高橋さんは今日が初対面とのことで。

梶浦由記 そうなんです。そもそも1つのスタジオに作曲家が2人いること自体、まずないのでね。作曲家さんと顔を合わせたり、お知り合いになったりってことがとても少ないんですよ。今日は貴重な機会をいただけてうれしいです。

高橋諒 僕はもう梶浦さんの音楽を聴いて勉強させていただいてる立場なので、今のこの状況がよくわかってない感じなんですけど……果たして現実なのかどうかっていう(笑)。

梶浦 いやいや(笑)。

左から高橋諒、梶浦由記。

──お二人が音楽を手がけているテレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」は4話まで放送された段階です(取材時)。ご覧になっていかがですか?

高橋 クールで重厚な作品だなって思いますね。展開もけっこうシリアスだし。最初にキャラクターのビジュアルをいただいたときはまったく想像していなかった雰囲気で。

梶浦 そうですよね。私も最初にビジュアルを見たときはもうちょっと正義の味方っぽい雰囲気なのかなって思ったんですよ。「みんな行くわよー!」「よっしゃ任せときー!」みたいなノリの女子スパイものかなって(笑)。でも脚本をいただいてみたらすごくクールで激動の物語になっていて。それに合わせて、最初に自分の中でなんとなくイメージしていた音楽からちょっと変えたところもあったんですけどね。ただもうとにかく面白い作品ですよ。BGMしか作っていない立場で偉そうですけど、Twitterで流れてくる作品の感想を見ながらドヤ顔してますから(笑)。脚本を最後まで読ませていただいてるので、「これからもっと面白くなるんだよ、フフフ」みたいな。

──高橋さんが手がけたVoid_Chords feat.MARU名義のオープニングテーマ「The Other Side of the Wall」で華々しく幕を開け、本編では梶浦サウンドがたっぷり味わえる、音楽面でも非常に充実した作品になっていますよね。アニメと音楽との相乗効果がハンパないっていう。

梶浦 そうなっていたらいいなとは思いますね。まあでもやっぱり、今回はあのオープニングテーマが本当に素晴らしいと思いますよ。アレンジがものすごくカッコいいし、そこにおしゃれな映像が付くことで、1つのショートムービーとして完結していると言うか。あそこで1回、観ている側の血の温度がグンッと上がるんですよ。で、その後にスッと温度が下がってクールに物語が始まっていく、その流れとバランスが絶妙。いち視聴者としてすごく引き込まれますね。

高橋 オープニングテーマとしては、作品の幕開け感みたいなテンションをけっこう意識して作ったところはありました。シリアスな本編に梶浦さんの重厚な音楽が乗ることで全体的なバランスが取れるとも思っていたので。今のところ放送を観ている限り、オープニングアーティストとしてちゃんと貢献できたんじゃないかなと感じています。

エッジーを求められる作家

──とは言え、一般的ないわゆるアニソンとは明らかに違った雰囲気を持つオープニングナンバーでもありますよね。そこがめちゃくちゃカッコいいんですけど。

高橋 こんな曲がオープニングになってるアニメはなかなかないですよね(笑)。実は最初の打ち合わせのとき、制作サイドから「オープニングテーマをインストゥルメンタルにすることも考えてる」というお話を伺って。そこで僕は、「あ、これはかなり冒険してもいいのかもな。自分の尖った部分を求められているのかもな」って思ったんですよね。なので、自分の思うスパイっぽさ、スチームパンクっぽい雰囲気を、一番尖った形でテンション高く突っ込んで作っていきました。今回は特にそうでしたけど、王道ではないちょっとエッジーな音楽を作る担当になってきている感じがありますね。最近の僕の立ち位置的に(笑)。

──キャリアを重ねていくと作曲家としての個性が明確になってきて、そこを求めてオファーされる機会も増えていきますもんね。梶浦さんもまさにそうだと思うんですけど。

梶浦 そうですね。でも今回の作品はいわゆる“梶浦サウンド”とまっすぐ呼ばれないもののほうが合うなと思っていたので、いろいろ工夫はしたつもりなんですけど。それでも聴くとすぐわかるって言われちゃうんで「私の工夫はいったい……」みたいな(笑)。

高橋諒

高橋 あははは(笑)。でもアニメを観ていると梶浦さんの音楽があるからこそのテンポ感みたいなものはすごく感じますよね。ちょっとミニマルっぽい雰囲気の曲がいろんな場面で何度も使われていたり。

梶浦 そうですね、うん。あれはもう音響監督さんの作戦だと思うんですけど(笑)。

高橋 これは持論なんですけど、いろんなシーンで同じ曲を複数回使っても大丈夫な作品は名作だと思うんですよ。何度も同じ曲が流れてもまったくしつこくないし、むしろいいテンポ感が生まれて視聴者としてうれしくなると言うか。30分の番組を、時間を忘れて観させてくれる効果があると思うんですよね。もちろん楽曲のよさが大前提ではあるんですけど。

──曲の使われどころは、アニメのスタッフにお任せなんですか?

梶浦 私の場合はそうですね。ダビング作業には立ち会わないことにしているので、自分の曲がどこで使われているかは基本的に放送を観て知るんです。そこが面白いんですよね。「これをここで使う?」みたいなこともありますから(笑)。

高橋 ありますねー(笑)。でもそれが逆に意外とハマってることもあるし。劇伴にはそういう面白さもありますよね。

Void_Chords feat.MARU
「The Other Side of the Wall」
2017年7月26日発売 / Lantis
Void_Chords feat.MARU「The Other Side of the Wall」

[CD]
1296円 / LACM-14624

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収録曲
  1. The Other Side of the Wall
    (テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」オープニングテーマ)
  2. Drive My Fate
  3. The Other Side of the Wall(Instrumental)
  4. Drive My Fate(Instrumental)
アンジェ(CV:今村彩夏)、プリンセス(CV:関根明良)、ドロシー(CV:大地葉)、ベアトリス(CV:影山灯)、ちせ(CV:古木のぞみ)「A Page of My Story」
2017年8月2日発売 / Lantis
アンジェ(CV:今村彩夏)、プリンセス(CV:関根明良)、ドロシー(CV:大地葉)、ベアトリス(CV:影山灯)、ちせ(CV:古木のぞみ)「A Page of My Story」

[CD]
1296円 / LACM-14629

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収録曲
  1. A Page of My Story
    (テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」エンディングテーマ)
    [作詞:Konnie Aoki / 作・編曲:高橋諒]
  2. Shoot Your Heart Out!
    [作詞:Konnie Aoki / 作・編曲:高橋諒]
  3. A Page of My Story(Instrumental)
  4. Shoot Your Heart Out!(Instrumental)
V.A.「TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』キャラクターソングミニアルバム 5 Moving Shadows」
2017年8月30日発売 / Lantis
V.A.「TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』キャラクターソングミニアルバム 5 Moving Shadows」

[CD]
2484円 / LACA-15664

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収録曲
  1. Take Me Up Higher / アンジェ(CV:今村彩夏)
    [作詞:Konnie Aoki / 作・編曲:高橋諒]
  2. Under the Moonlight / ドロシー(CV:大地葉)
    [作詞:Konnie Aoki / 作曲:高橋諒 / 編曲:村山☆潤]
  3. 閃光刀歌 / ちせ(CV:古木のぞみ)
    [作詞:Konnie Aoki / 作曲:高橋諒 / 編曲:藤田宜久]
  4. リトルブレイバー / ベアトリス(CV:影山灯)
    [作詞:Konnie Aoki / 作曲:高橋諒 編曲:酒井陽一]
  5. Into the Sky / プリンセス(CV:関根明良)
    [作詞:Konnie Aoki / 作曲:高橋諒 編曲:福富雅之]
梶浦由記
「TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック」
2017年9月27日発売 / Lantis
梶浦由記「TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック」

[CD]
3564円 / LACA-9540~1

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テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」
テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」
2017年7月9日(日)よりTOKYO MX、KBS京都、サンテレビ、BS11、AX-Tで放送中
スタッフ
監督: 橘正紀
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクター原案:黒星紅白
キャラクターデザイン・総作画監督:秋谷有紀恵
総作画監督:西尾公伯
コンセプトアート:六七質
メカニカルデザイン:片貝文洋
リサーチャー:白土晴一
設定協力:速水螺旋人
プロップデザイン:あきづきりょう
音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
美術監督:杉浦美穂
美術監修:池信孝
美術設定:大原盛仁 / 谷内優穂
色彩設計:津守裕子
HOA(Head of 3D Animation):トライスラッシュ
グラフィックアート: 荒木宏文
撮影監督: 若林優(T2 studio)
編集: 定松 剛(サテライト)
アニメーション制作: Studio 3Hz / アクタス
キャスト
アンジェ:今村彩夏
プリンセス:関根明良
ドロシー:大地葉
ベアトリス:影山灯
ちせ:古木のぞみ
Lエル:菅生隆之
7セブン:沢城みゆき
ドリーショップ:本田裕之
大佐:山崎たくみ
ノルマンディー公:土師孝也
ガゼル:飯田友子
Void_Chords(ボイドコーズ)
Void_Chords
音楽集団・ONE III NOTESの一員として一躍脚光を浴びたサウンドクリエイター高橋諒によるソロプロジェクト。テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」のオープニングテーマ「The Other Side of the Wall」で2017年7月にデビューを果たす。1stシングル「The Other Side of the Wall」ではDREAMS COME TRUEをはじめとするさまざまなアーティストのライブやレコーディングで活躍するボーカリスト・MARUをフィーチャーしており、今後も作品ごとに異なるアーティストを招きながら活動していく。
梶浦由記(カジウラユキ)
1993年にユニットSee-Sawでデビュー。約2年の活動ののちソロ活動を開始し、テレビ、CM、映画、アニメ、ゲームなどさまざまな分野の楽曲提供、サウンドプロデュースを手がける。2002年にはボーカル石川千亜紀とSee-Sawの活動を再開し、テレビアニメ「NOIR」「.hack」関連の楽曲を担当した。2003年7月にはアメリカで1stソロアルバム「FICTION」を発表。同年よりFictionJunction名義のプロジェクトをスタートさせ、2008年からはボーカルユニットKalafinaの全面プロデュースを手がけている。2017年夏にはテレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」の劇中音楽を担当。9月にはサウンドトラックアルバム「TVアニメ『プリンセス・プリンシパル』オリジナルサウンドトラック」がリリースされる。