ビッケブランカ「革命」インタビュー|ルール無用で自由自在、高らかに響く革命の音色 (2/2)

自分の中の可能性を探り続ける人生

──歌詞についてはどんなテーマがあったんでしょうか?

最初は“聖者の行進”のイメージだったんですよ。そこから歌詞を書き進めて、「ここまで言い切れたんだから、もう『革命』というタイトルにしよう」と。

──なるほど。曲中には「私はできる 私を信じれば」という強いフレーズもあって。自分を信じて、自分の未来を切り開くことが革命なんだという……。

意外と難しいみたいなんですよ、それが。自分の力で状況を変えたり、何かを転覆させるのはどうやら簡単ではないみたいですけど、人が「この状況を変えよう」と声を上げている姿とか、自分自身を変える瞬間を見るのはすごく気持ちよくて。アメリカンドリームなんてまさにそうだし、“路上生活からがんばって成功した”みたいな話もそう。話を聞くだけでスッキリするし、そこに人間の強さ、偉大さがあると思うんですよね。そういうマインドの1つの例として、「革命」という楽曲があってもいいのかなと。自分もそうありたいと思うし。

ビッケブランカ

──ビッケブランカさんは自分の力で状況を切り開いてきたわけで、“革命”を起こすのは得意なのでは?

はい(笑)。でも自分も最初からそうだったわけではなくて、こういう人間になったきっかけがあるんですよ。ただそれがあまりにも早くて、小学校のときなんです。なので大して語ることもないし(笑)、人生の早い時期に自分を乗り越える経験をしたので、周りの人からは順風満帆に見えるみたいで。自分の力で状況を変えたり、新しく何かを始めるのは簡単なことだよって伝えたいんですけど、僕が言っても説得力がないし、下手したら説教みたいになってしまう。音楽があってよかったですよ、ホントに。話す以外の伝える術があるので。

──ちなみに、小学校のときの「人生を乗り越える」経験って、どんなことだったんですか?

教育ですね。「全部をやれなくてもいい。1つでいいから、誰にも負けないことを見つけろ」ということを教えてもらって、それを探しながら生きていたところがあるんですよ、ずっと。小さい頃、足が速かったんですけど、転校したら俺よりも速いやつがいて、「あ、足の速さじゃないんだな」と思ったりとか。勉強も得意だったんだけど、中学に上がって順位が付くと成績が2位だったんです。めっちゃ賢い女の子がいて、その子には勝てなくて。すごく悔しかったけど、「勉強でもないんだな」と次の何かを探し始めたんです。そうやって、自分の中の可能性を探り続ける人生というか。

──ビッケさんはもちろん、音楽に出会って「これなら誰にも負けないことがやれる」と思ったわけですよね?

そうですね。楽譜も読めないのに学校の合唱コンクールで伴奏したり、いろんなチャレンジを続ける中で、幸いなことに評価してもらえる瞬間が何度があって。ずっと褒められていたわけではないんだけど(笑)、人間って2、3回評価されただけで簡単に自信が付くものなんですよ。「評価された! うれしい」ということが2回も続けばガチン!と気持ちが固まって、「どうも、自信です」っていう状態になったので。

──その感覚をリスナーにも経験してほしいと。

経験してほしいし、それによってどれだけ人生が楽しくなって、より楽になるかを知ってほしい。ただ、自分は今が最高だとも思っていないんですよ。こうやって冒険心を持ち続けること自体がいいことだなと思うし、それに気付いていない人には「明日、そういう体験が待ってるかもしれない」と言いたいです。

ビッケブランカ
ビッケブランカ

逃げずに向き合っていればマジで何とかなる

──音楽に関しては、自分にしかやれないことを実現できているという実感はありますか?

もちろんあるし、「革命」の制作の中で改めてそのことを実感しましたね。曲の後半に入るところでテンポチェンジするんですよ。歌詞で言うと「さあ声をあげよ 打ち鳴らせ 未完成でも」の部分なんですが、テンポを落とした四つ打ちになって、またもとに戻る構成になっていて。このパートを入れるのがめちゃくちゃ難しくて、1回あきらめかけたんです。何回やり直してもうまくいかなくて、締め切りも迫ってきて、「さすがに無理だな」と思っちゃって。ピアノのソロを入れて落ちサビを作って、その後バーッと盛り上がる構成にすればいいかと思って、その日は寝たんですよ。でも次の日、作業に取りかかったときに「いや、それは違うだろ」と。ここで逃げたらビッケブランカの恥。5年間ずっと応援してくれたファンの人たちに申し訳が立たないと思って、最初のアイデアにもう1回チャレンジしたんです。そうしたら奇跡が起きたというか、すべての要素がピタッピタッとハマって。バイオリンのトレモロが入ってるんだけど、あれは僕の操作ミスなんですよ(笑)。

──そうなんですね(笑)。

はい。たまたまそうなったんだけど、「これ、めっちゃいいじゃん!」って。もちろんいびつになったり、奇をてらった感じにならないように、ちゃんと美術品にしなくちゃいけないんですけど、偶然も重なりながら結果的に理想通りの仕上がりになったし、めちゃ気持ちよかったです。そこが「革命」の制作のハイライト。逃げずに立ち向かって、しっかり完成に持っていけたことを誇りに思います。

──まさに自分の力で運命を切り開いた瞬間ですね。

そうなんですよ! これもね、言葉で言っても伝わらないかもしれないけど、逃げずに向き合っていればマジでなんとかなるんです。経験したことがあれば「そうだよね」ってわかってもらえるんだけど、そうじゃない人は「ありえない」と思ってしまうんですよね。例えば「逆境から立ち上がって大逆転する」というストーリーの映画やアニメ、マンガってたくさんあるじゃないですか。もちろんフィクションなんだけど、本当に起こり得ることを描いていると思っていて。そのことに気付けば超楽勝だし、マジで最高なんですよね。

──確かに「逃げないで立ち向かえば、なんとかなる」という確信があれば、人生が楽しくなるかも。

うん。自分のキャリアのことで言うと、こんなに好きなように活動できているのはもちろん応援してくれてるファンの皆さんのおかげで。あとは新しく入ってきたスタッフがすごい金言をくれたり、ずっといてくれる人がうまく自分を促してくれてたことに気付いたり。奇跡や偶然も生かしながら、元気よく生きていけたらいいなと思いますね。

──ビッケさんは自分のキャリアだけではなく、音楽シーンに革命をもたらしたいという気持ちはありますか?

それはないです。今の音楽シーンはすごくいいと思ってるんですよ。MAISONdesの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜、ツミキ」なんてめっちゃいい曲だと思ったし、今の20代前半のアーティストのセンス、すごいじゃないですか。新しい感覚を持った人たちが好きなようにやればいいと思うし、それが正解じゃないかなと。自分自身もメジャーで5年やってきましたけど、「今の若い人が最高」と思える感覚があってよかったです。

ビッケブランカ
ビッケブランカ

回路は開けっ放し

──そして5月にはライブハウスツアー「Vicke Blanka LIVE HOUSE TOUR 2023」がスタートします。

声も出せるようになったし、ライブの熱狂をもう一度感じようというのがテーマですね。ライブハウスの景色と感覚をもう1回体験して、「そうそう、これこれ」という感じを取り戻したくて。そうすることでライブに対するモチベーションも上がると思うんですよ。アリーナ公演のあとだし、「広いところでやったあと、めっちゃ狭いところでやるのは面白いだろうな」という発想もありますね。

──ライブの原点に戻るというか。

そうですね。これもね、スタッフにルートを作られたところもあるんですよ。「ライブハウスで観るビッケブランカもいいよね」と言われて、「え、そう?」ってその気になって(笑)。そういう言葉で簡単にやる気になったりしますからね。

ビッケブランカ

──しっかりした信頼関係があるんですね。5周年を経て、「革命」という新たなアンセムが生まれて、ツアーがあって。この先のビジョンも見えていますか?

そこまでイメージはできてないんですけど、これまでと変わらず、目の前の曲を作り続けていくことが大事なのかなと。あとは「RAINBOW ROAD」ですね。2回、3回、4回と続けていきたいし、そうやって歴史を紡ぎ始められているのがいいなと。時間を重ねないと生まれないパワーや価値って絶対にあるし、それをしっかり積み重ねていきたいです。とは言いつつ、やっぱり目の前のことに追われながら1年過ごすんでしょうけど(笑)。さっきスケジュールの打ち合わせをしたんですけど、めっちゃ忙しいんですよ。

──去年は俳優としての活動もあったし、さらにスケジュールが大変なことになりそう。

うん、自分にできることはどんどん受けていきたいので。忙しいが苦にならないマインドセットもできているし……まあ、あまりにも立て込むと「ちょっとなんとかならない?」と思いますけど(笑)。ちゃんと寝る、ちゃんと食べることをやっていれば大丈夫です。

──忙しい日々の中、インプットはどうしてますか?

この会話自体もインプットになっているし、そういう回路は開けっぱなしですね。あえて吸収しようなんて思わなくても、つなぎっぱなしにしておけば、いくらでも情報は入ってくるし、アイデアも出てきますよ。

ビッケブランカ

ライブ情報

ビッケブランカ「Vicke Blanka LIVE HOUSE TOUR 2023」

  • 2023年5月2日(火)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2023年5月6日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2023年6月1日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年6月4日(日)宮城県 Rensa
  • 2023年6月10日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2023年6月18日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年7月2日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2023年7月31日(月)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

ビッケブランカ

愛知県出身のシンガーソングライター。2018年発表の「まっしろ」がドラマ挿入歌として話題を呼び、翌2019年には「Spotify」のテレビCMに「Ca Va?」が使用された。海外においてもアニメ「ブラッククローバー」のオープニング曲がロングヒットを続けている。2022年3月にメジャーデビュー5周年記念ベストアルバム「BEST ALBUM SUPERVILLAIN」をリリースし、4月にはフランス映画「シャイニー・シュリンプス!」の新作「La Revanche des Crevettes Pailletées(原題)」の全世界共通エンディング曲である「Changes」を配信リリースした。8月には新作EP「United」をリリースし、10月には新たなライブイベント「Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD -軌-」を成功させた。2023年3月に「革命」を配信リリース。このほか楽曲提供、ラジオDJ、広告モデル、eSportsストリーマーなどさまざまな分野に活躍の場を広げている。

2023年4月7日更新