戦える場所があるのにやらないのはもったいない
PORIN ビッケさん、今悩みってあるんですか?
ビッケブランカ ありますよ。10年くらい前から海外でやりたいと思っているのに、いまだに行けてないのが一番の悩み。とっくにアメリカやヨーロッパでも活動できていたはずなのに、ずっと日本に甘んじてるっていう。近々やろうと思ってますけど。
PORIN そうなんですね!
ビッケブランカ 戦える場所があるのにやらないのはもったいないと思うんですよ。
atagi モリシーは海外志向だよね。
モリシー 前にやってたバンドでイギリスツアーをやったんですよ。最低限の楽器だけ持って行って、足りない機材は向こうで買って。ライブやって、友達の家とかに泊まらせてもらって、機材を売って帰るっていう(笑)。
ビッケブランカ すごいな、それ(笑)。自分はずっと日本というぬるま湯にいるので、それが悔しくて。今はある程度作りたいものを作れるようになってきたし、お客さんがいてくれて、周りの人も自分の意見を聞いてくれる。それってぬるま湯じゃないですか。それがいいって人もいるかもしれないけど、僕は性格的に張り合いがないと感じちゃうんです。またド素人に戻りたくなったりするし。
atagi 素人に戻りたいという気持ちはなんとなくわかりますね。キャリアが長くなると、自分たちが何をやりたいかよりも、それまでやってきた延長線上でしか作れなくなりそうで。
PORIN 私は「まだいい感じになってない」と思ってますね。あと一歩、進まないといけないなって。
モリシー 現状に満足してないという意味では、ビッケさんと同じなのかも。
ビッケブランカ あ、そうですね。
──ライブに対するスタンスについても聞いてみたいです。Awesome City Clubにとって、理想のライブとは?
atagi 耳が幸せになるようなライブが理想なんですよ。音楽至上主義なところがあるし、ライブの雰囲気が楽しいのは大事なことだし、僕らも楽しむのが好きなんですけど、会場に来てくれた方に「音源よりもめっちゃいい」と感じてほしくて。ビジュアルよりも音楽の質が大事というのかな。エンタメも必要だとは思うんですけどね。
PORIN 確かにそうだね。そこは私もがんばりたいところ。
ビッケブランカ 以前ライブを観させてもらったときは、PORINさん、atagiさんのバランスが絶妙だったんですよね。お二人がセンターにいるのが大事なんだなって。
PORIN ありがとうございます。最近のライブは、モリシーのギターも爆発してるんですよ。それも今のオーサムの一面なので、ぜひ観てほしいなと思います。
モリシー 前のツアーのとき、初めて「速弾きして」というオーダーをもらいました(笑)。
PORIN 「もっと行け! 拍手が起きるまでやめるな!」って(笑)。
モリシー 楽しかったですね。性格的にはギターソロを弾きまくるタイプじゃないんですけど、自分でも気付いていなかった扉を開けちゃった感じがあります。人前で速弾きしたのは初めてだったので。
atagi いまどき“速弾き”っていいよね(笑)。
PORIN 今はモリシーがセンターですからね。「この3人がいないと成り立たないバンドなんだ」ということをもっと知ってほしいです。
atagi うん。僕自身はエンタメや演出に疎くて。PORINのほうがアンテナが立ってるので、お任せしてる部分もあります。
PORIN アタさん(atagi)のモードを汲みながらやってるんですけどね。以前はダンスや振り付けを取り入れたんですけど、最近はそういうモードじゃないみたいなので、音で演出する方向になっていて。
ビッケブランカ なるほど。俺は思うんだけど……まあ、自分の意見はいいか。
PORIN 聞きたいです!
ビッケブランカ じゃあ、言わせてもらいます(笑)。オーサムはエンタメをやらなくていいと思うんですよ。こんなに素晴らしい曲があるんだから、それを披露して、ライブの中でメンバーの皆さんの人間性が見えてくれば十分でしょ。いい曲が聴けて、MCでナチュラルな姿が感じられて、それが次の曲のフリになっていれば、それはもうエンタメなので。
PORIN なるほど。いいですね、それ。
──ビッケさんはご自分のライブについて、どう捉えてますか?
ビッケブランカ ソロなので、いろんなやり方があると思うんですよ。内向きというか、黙々とやるスタイルが合う人もいるでしょうけど、僕はしゃべるのも好きだし、笑わせるのも好きなので、そっちの路線になりましたね。狙ったわけではなくて、そっちに特性があったんだと思います。もともと「できることしかできないし、得意なことがあるはずだ」という考え方で、「自分がやりたいことをやるのが正しい」というのがベースにあって。あとは信頼している人に「これってサムい?」って聞いて、「サムいかもね」と言われたら、やりすぎてるところを調整するという感じですね。基本的にライブは楽しいほうがいいと思ってるんですよ。生きていれば悲しいことは必ず起きるので、自分で選択できることは楽しいほうがいいじゃないですか。
このイベントは幸せしかないです
──ライブナタリー主催のツーマンライブは、それぞれ1時間ずつのステージとなる予定です。
atagi 1時間って意外と難しいんですよ。つまらないライブだとめっちゃ長く感じるだろうし、誰が観ても楽しいセットリストにすべきなんだけど、「ちゃんと波を作りたい」という気持ちもあって。
ビッケブランカ 大丈夫。僕のファンの人たち、いい人が多いから。ほかのグループも応援するし、曲を提供したアーティストも愛してくれるっていう。
PORIN Awesome City Clubのファンもいい人ばっかりなので、このイベントは幸せしかないですね。
ビッケブランカ 僕はリード曲を詰め込みたいですね。季節とか関係なく、“リード曲、全盛り”みたいなライブをやりたくて。
PORIN いいですね! ヒットメドレーだ。
ビッケブランカ ところで「勿忘」はどのタイミングでやるんですか?
PORIN 決めてないですけど(笑)、最後ではないです。ワンマンライブでも「勿忘」は中盤でやってるんですよ。リリースからしばらく経つし、今の自分たちを見せてあげたいという気持ちもあるので。
ビッケブランカ なるほど。「4月のマーチ」はやります?
PORIN どうする?
atagi やろうか。特別な日なので。
PORIN めちゃくちゃひさしぶりだね、「4月のマーチ」をライブでやるの。
モリシー そうだね。
ビッケブランカ うわ、めっちゃ楽しみ。「勿忘」も、自分が歌うヴァースを考えておきます(笑)。
モリシー コラボもあるかも。
atagi そうだね(笑)。オーサムのファンの中には、ビッケさんの音楽を好きな人も多いと思っていて。ぜひ会場に来てほしいですね。
ビッケブランカ この対バン、もう二度とないですからね!
PORIN そうなんですか?(笑)
──このイベントをきっかけに、オーサムとビッケさんの交流も深まりそうですね。
ビッケブランカ 対バンってけっこうやってます?
PORIN 以前はやってましたけど、最近は少ないかも。
atagi 確かに少ないかも。ビッケさんは?
ビッケブランカ 仲がいいミュージシャンは少ないですね。バンドとはどうもつるめなくて(笑)。
モリシー 何が違うんですかね?
ビッケブランカ バンドって、対バンやって、打ち上げで仲よくなる文化があるじゃないですか。ソロだとそこに混じれないんですよ。シンガーソングライター同士のコラボも日本ではほとんどないし。なのでオーサムの皆さんとは仲よくしたいと思います。
PORIN なんかウソっぽい(笑)。ホントに思ってます?
ビッケブランカ 思ってますよ! よろしくお願いします(笑)。
プロフィール
ビッケブランカ
愛知県出身のシンガーソングライター。2018年発表の「まっしろ」がドラマ挿入歌として話題を呼び、翌2019年には「Spotify」のテレビCMに「Ca Va?」が使用された。海外においてもアニメ「ブラッククローバー」のオープニング曲がロングヒットを続けている。2022年3月にメジャーデビュー5周年記念ベストアルバム「BEST ALBUM SUPERVILLAIN」をリリースし、4月にはフランス映画「シャイニー・シュリンプス!」の新作「La Revanche des Crevettes Pailletées(原題)」の全世界共通エンディング曲である「Changes」を配信リリース。8月からは自身最大規模の全国ツアー「THE TOUR 『Vicke Blanka』」を開催する。このツアーに向け、8月に4曲入りのEP「United」をリリース。このほか楽曲提供、ラジオDJ、広告モデル、eSportsストリーマーなどさまざまな分野に活躍の場を広げている。
Vicke Blanka (@VickeBlanka) | Twitter
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衣装協力:RYU / CA4LA
Awesome City Club(オーサムシティクラブ)
2013年東京で結成された男女ツインボーカルの3人グループ。2021年公開の映画「花束みたいな恋をした」に出演し、インスパイアソング「勿忘」をリリースすると各配信サイトでのストリーミングは関連動画を含め10億回を突破した。同年12月には「第63回日本レコード大賞」で「勿忘」が優秀作品賞を受賞。さらに「第72回NHK紅白歌合戦」へ初出場を果たした。2022年3月に4thアルバム「Get Set」をリリース。夏には「SUMMER SONIC 2022」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」などのさまざまな音楽フェスへの出演を予定している。
【Awesome City Club オフィシャルサイト: 僕らがオーサムシティで生きる記録】
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衣装協力
atagi:Marvine Pontiak Shirt Makers / gourmet jeans
モリシー:fluss / gourmet jeans
PORIN:kotohayokozawa / NODOKNITS