音楽ナタリー Power Push - Versailles

結成10周年、日本武道館公演にかける思い

“耽美派最強ヴィジュアル系バンド”を標榜するVersaillesがニューアルバム「Lineage ~薔薇の末裔~」を完成させた。約4年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、バンドが2月14日に開催される初の日本武道館公演の来場者に配布する作品。昨年8月7日に千葉・舞浜アンフィシアターでのライブで本格的な活動を再開させた彼らは、再始動後初のオリジナルアルバムとなる今作とキャリア最大規模のワンマンライブとなる日本武道館公演によって新たなフェーズに突入することになりそうだ。

今回音楽ナタリーではメンバー5人にインタビューを実施。「Lineage ~薔薇の末裔~」の制作プロセスと収録曲の解説、そして日本武道館公演の意気込みなどについて聞いた。

取材・文 / 森朋之

「間違いじゃなかった」と気付けた「VISUAL JAPAN SUMMIT」

──まずは活動再開後の手応えについて聞かせてください。昨年8月の舞浜アンフィシアター公演で完全復活。9月には新録ベストアルバム「The Greatest Hits 2007-2016」をリリースし、10月には「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」に出演するなど、活動のペースは確実に上がってますよね。

KAMIJO(Vo) そうですね。舞浜のライブも手応えを感じていますし、「VISUAL JAPAN SUMMIT」に出演したことも素晴らしい体験でした。

TERU(G) 「VISUAL JAPAN SUMMIT」にはヴィジュアル系の核になっているバンドが集まってましたからね。シーンの起爆剤にもなったと思うし、ヴィジュアル系というスタイルに対して改めて自信を持つこともできて。

YUKI(Dr) ヴィジュアル系にもいろいろなジャンルがあると思うんですけど、お客さんがすべてのバンドで盛り上がってくれたんですよ。ヴィジュアル系が好きな方たちは本当に温かいなと実感しましたね。

MASASHI(B) X JAPANのファンの皆さんもペンライトを掲げてくれましたからね。素晴らしい景色を見ることができました。

KAMIJO それにYOSHIKIさん、SUGIZOさんがVersaillesのバラ(バラをモチーフにしたペンライト)を口にくわえてくださったんです。Versaillesを始めたときは、バラを持っているバンドなんていなかったんですよ。「笑われてもいいから、本気で好きなことをやろう」という覚悟だったのですが、この日バラを使う先輩方の姿を見て自分たちが信じているものを貫いてきて、本当によかったなと思いましたね。

HIZAKI(G) 「僕たちがやってきたことは間違いじゃなかった」と気付けたことも大きいですね。それは今回のアルバムにも素直に込められていると思います。

このアルバムが武道館へのストーリーを形作ってくれた

──復活後第1弾となるニューアルバム「Lineage ~薔薇の末裔~」は2月14日に開催される日本武道館公演「Chateau de Versailles」の来場者だけが入手できる作品ですね。

KAMIJO アルバムが完成したときに「このメンバーで、まだこれだけ素晴らしい作品を生み出せるんだ」と実感できました。日本武道館のライブに向けて、さらにモチベーションが上がってますね。「薔薇の末裔」というのは、僕たちのファンのことなんです。それをさらに広めるためにも「すべてが勝負曲」と言えるような作品にしたくて。あと以前よりもさらにパワーアップした状態で伝えたいという思いもありました。

HIZAKI 制作に際しても「自分たちが信じているもの、好きなものを貫き通せばいい」という気持ちで臨んでいました。日本武道館の来場者にプレゼントすることは決まっていたので、ファンに対する感謝もいつも以上にあって。とりあえず、武道館に来なかった人が悔しがるくらいの作品にしようと思っていましたね。

──あえてコンセプトを立てず、楽曲のクオリティを上げることに集中していたと。

HIZAKI そうですね。ただ、制作を進めているうちに勝手にストーリーが生まれてきて。こういうことはVersaillesにはよくあることなんですよ。

KAMIJO(Vo)

KAMIJO そうだね。曲同士が自然とつながって、そこで奇跡が生まれて。結果的には僕たち自身の物語でもあり、聴いてくれるファンの皆さんも主人公になれる作品になったと自負してます。個人的には作品の中に余白を作るということも1つの課題だったんですよ。歌詞の中にいい意味でスキマを作るということなんですが、想像を掻き立てられるような歌詞になったと思います。

──Versaillesとして新作を制作すること自体がひさしぶりだったわけですが、レコーディング中の雰囲気はどうでした?

KAMIJO 新録のベスト盤にも新曲が2曲入っていたんですが、そのときとはまた違った感覚で、新鮮さを感じました。

TERU 復活のときも言ってたんですけど、過去の自分たちを超えないと意味がないと思っていて。それはレコーディング中もずっと意識していたし、自信を持てるアルバムに仕上がったと思いますね。あと活動休止していた時期に得たものも、うまく生かせているなという感じもあって。僕らがちゃんとVersaillesを客観視できているし、ファンのことを考える余裕みたいなものもあったので。

MASASHI 1曲1曲ができあがっていく中で、徐々に武道館への階段を上っている感覚もありました。その前のヨーロッパツアーを含めて、このアルバムが武道館へのストーリーを形作ってくれたというか。

YUKI 手応えはバシバシ感じてますね。制作のプロセスは以前と変わってないですが、それぞれのメンバーが新たに蓄えたものもうまく反映できているなって。メンバー個々のミュージシャンとしての成長も感じてもらえると思います。個人的なことで言えば、具体的なテクニックというよりも、1つひとつの音の説得力を意識するようになって。レコーディングを終えて、自分も少しは成長できているのかなって思いましたね。

Versailles「Chateau de Versailles」
2017年2月14日(火)
東京都 日本武道館
日本武道館公演来場者配布アルバム「Lineage ~薔薇の末裔~」
「Lineage ~薔薇の末裔~」初回限定盤 / SASCD-073
「Lineage ~薔薇の末裔~」通常盤 / SASCD-074
収録曲
  1. La Musique
  2. Shadows Fang
  3. Inheritance
  4. A Day Without You
  5. Lineage
  6. Marionette

※6曲目は初回限定盤のボーナストラック

Versailles(ヴェルサイユ)

2007年にKAMIJO(Vo)とHIZAKI(G)が中心となり、“絶対的な様式美サウンドと耽美の極み”をコンセプトに掲げ結成。活動初期は海外メディアのみの取材に応じたことで話題を呼んだ。10月にはドイツのレーベル・CLJ Recordsとライセンス契約を交わし、1stミニアルバム「Lyrical Sympathy」を日本とヨーロッパで同時発売。翌2008年7月には1stフルアルバム「NOBLE」をリリースした。2009年12月には東京・渋谷C.C.Lemonホールのワンマンライブ内でメジャーデビューを発表し、2010年1月20日にデビューアルバム「JUBILEE」を発売。2012年12月の東京・NHKホールでのライブをもって活動を休止するが、2015年に再開。12月に“復活の儀式”と題したライブを東京・Zepp DiverCity TOKYOで行ったほか、2016年8月には千葉・舞浜アンフィシアターで完全復活ライブ「Chateau de Versailles」を実施した。9月には過去の楽曲をリメイクして収録したベストアルバム「The Greatest Hits 2007-2016」を発表。結成10周年を記念し2017年2月に東京・日本武道館での単独公演「Chateau de Versailles」を開催し、このライブの来場者に配布するニューアルバム「Lineage ~薔薇の末裔~」を制作した。