ナタリー PowerPush - Vampillia

気鋭カオティックバンドの実像を探る

大阪を拠点に海外でも活動を繰り広げ、“ブルータル・オーケストラ”を名乗るVampilliaが、4月23日に日本国内における1stアルバム「my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness」をリリースする。

Vampilliaのメンバーは元相対性理論の真部脩一も含む10人以上の編成。凶暴さと刹那的な美しさと破天荒なパフォーマンスが同居するカオティックなライブで注目を集めてきた。4月9日にはコラボシリーズ「bombs」として戸川純、BiSをボーカルに迎えた楽曲を含む日本企画盤「the divine move」もリリースされる。

ナタリーでは、2作のリリースにあたってバンドの結成メンバーの1人である“リーダー”に取材を実施。「Vampilliaとはいったい何者なのか?」ということを探っていった。

取材・文 / 柴那典

初心者ばかりの素人集団だった

──あの、失礼なんですが、まずお名前はなんと呼べばいいんでしょう?

リーダーでいいですよ。

Vampillia

──リーダーはVampilliaのステージにも登場しないですし、アーティスト写真にも載っていないですよね。

そうですね。たまに載っているやつもあるんですけど、ほとんどないです。

──バンドの中ではどういう役割なんでしょう?

僕自身は、自分が聴きたい音楽を人にやらせるだけなんですよ。僕自身は何もできないので。「こういうものがやりたい」ってことを、抽象的にだったり、具体的にだったり、いろんなふうにしてメンバーに伝えてやってもらってるという。

──バンドは2005年に大阪で結成されたんですよね。その「こういうものがやりたい」と思う最初のきっかけが生まれたのは?

だいぶ前ですね。ずっと洋楽ばっかり聴いてたんですけど、2000年代の初めくらいに、外国からじゃなくて日本から新しいジャンルが新しく生まれたような気がして。

──例えば?

僕がすごいなと思ったのは、今所属させてもらってるレーベルのworld's end girlfriendで。エイフェックス・ツインとGodspeed You! Black Emperorが共存しているような感じがあって。あれを聴いて「こういうのがあったらいいな」と思ってたものを先にやられたように思って。で、悔しかったんですけど、それまでにないもので自分が面白いと思うもの、それは自分が作ったらいいんじゃないかという。

──誘ったメンバーにはバンドやオーケストラを経験している人も多かった?

全然いないですね。僕らのバンドなんて、特に初期メンバーはバンドをやったことない初心者ばかりの素人集団だったんで。

──そうなんですね。でも、こうやってアルバムを聴くと非常に完成度も高いし、クラシックとメタルとポストロックといろんな音楽が融合しているわけで。最初は素人だったと聞くと、すごく不思議に感じるんですけど。

それはね、最初から何年もほぼ同じネタでしかやってないからなんですよね。ずっと完成しないままやってきたから。

──ビジョンだけはずっとあったんだ。

そう。ずっと一緒ですね。

“ブルータル・オーケストラ”

──最初にオリジナル音源を作ろうと思ったのは何年くらい?

最初のアルバムは2006年ぐらいに一度取りかかったんですけど、僕らが勘違いしていて、話がなくなったんですよ。それからもいくつか出したし、常に1stアルバムを作ってきたような感じはありますね。

──最初に音源がリリースされたのは2009年ですよね。アメリカやイタリアなど海外のレーベルで音源をリリースしてきましたけれども、それはどういう経緯で?

最初から海外に出ようと思ってましたからね。日本でどうこうするより、海外でイケイケになりたいと思ってたんで。

──そのときにはすでに自分たちについて「ブルータル・オーケストラ」という言葉を使っていた?

はい。

──このキーワードはどういう意図で付けたんですか?

Vampillia bombs BiS

今思うと恥ずかしいんですけど、ああいうカチッとしたオーケストラみたいなおっさんたちが発狂してたら面白いなって感じで。しょうもない理由です。

──いやいや、しょうもなくないと思いますよ。だってカオスだと思うんですよ、Vampilliaのライブって。一言で言うと、わけがわからない。ものすごく感動的な瞬間もあるし、怒涛の展開もあるし、静かなときもあるし、ズッコケのコントみたいなときもある。あれはどういうことなんでしょう? すべてをステージに乗っけたい、みたいな?

そうですね。基本的に表現したいものはずっと一緒ですね。だから、人から見たらたぶん「やらんほうがいいやん」という部分はいっぱいあると思うんですけど、別にそんな深く考えず、出してるものがあれっていうだけなんで。ムダが好きって感じですね。

日本企画盤「the divine move」 / 2014年4月9日発売 / 2376円 / Virgin Babylon Records / VBR-019
日本企画盤「the divine move」
収録曲
  1. lilac(bombs 戸川純)
  2. mirror mirror(bombs BiS)
  3. endless summer(feat. ツジコノリコ)
  4. tasogare(feat. 長谷川裕倫)
  5. good religion(feat. Mick Barr)
  6. dizziness of the sun(feat. ツジコノリコ)
  7. oops we did it again(bombs BiS)
  8. endless(massaka)summer 2014
  9. lilac(bombs 戸川純) perfect ending ver.
Vampillia(う゛ぁんぴりあ)

Velladon(Vo, G)、possession mongoloid(Vo)、吉田達也(Ruins)と竜巻太郎(NICE VIEW、TURTLE ISLAND)のツインドラム、真部脩一(ex. 相対性理論)ら10人(ときにはサポートなども含めた、それ以上)のメンバーからなるバンド。2005年に大阪で結成され、結成当初は元BOREDOMSの吉川豊人が在籍した。あぶらだこ、BiS、赤い公園、撃鉄、DE DE MOUSEら個性派アーティストを招いたイベント「いいにおいのするイベント」を主催している。

2008年、ツジコノリコとニューヨークツアーを敢行。2009年10月にミニアルバム「Sppears」を発表し、2011年にアメリカのimportant recordsより「Alchemic Heart」、イタリアのcode666より「Rule The World-Deathtiny Land」をリリースした。2014年4月には、戸川純、BiS、ツジコノリコらをゲストに迎えた日本企画盤「the divine move」に続いて、1stフルアルバム「my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness」をVirgin Babylon Recordsからリリースする。