ナタリー PowerPush - Vampillia

気鋭カオティックバンドの実像を探る

真部はとっちらかった音楽に歌詞と歌メロを乗せられる

──「endless summer」は元相対性理論の真部脩一さんが歌っているバージョンもありますが、真部さんがバンドに合流したのはいつ頃のこと?

真部デトックス脩一(G, Syn, Vo, Rap)

たぶん2010年くらいのことですね。最初は変名でサポートでギターとかベースを弾いてたんです。それである日、本人から「僕はもうメンバーってことでいいんですよね?」って突然言われて。「おお!」みたいな感じで入った。

──真部さんとはどういうところで意気投合したんでしょう。

あの人の観点はわからないけど、僕としては、こういう意味がわからないとされるものがポップスになってほしいなと思ってるんで。自分らの持つ異物感みたいなものも含めて、このままで売れて、ポップシーンで大人をかき回したいという。そういう話をしていたときに、「フィールドは違うけどゴールは一緒」みたいな話をしたのがきっかけですね。

──4月9日にはその「endless summer」も入った「the divine move」という日本企画盤もリリースされます。これには真部さんが歌詞と歌メロを担当してBiSや戸川純さんをボーカルに迎えた「bombs」シリーズの楽曲も収録されていますが、これはどういうところから?

もともと、僕は歌詞が恐れ多いものやと思っていて。自分では歌詞が書けないんですね。でも、真部くんがメンバーに入ったことで、こういうとっちらかった音楽に歌詞と歌メロを乗せられるようになった。ツジコさんに歌詞を書いてもらったのはいわゆるフィーチャリングというヒップホップ的な発想ですけど、真部くんはメンバーだから自分たち発信で歌詞が書ける。それは「bombs」という名前でやったほうが違いがわかりやすいと思ってやってるんです。で、次は「bombs」シリーズだけで1枚アルバムを作って、最終的には自分らなりのオーケストラアルバムをやりたいと思っていて。

僕らが最初に「ヴォォォ」をポップスにしたい

──歌詞が恐れ多いものだったっていうことですけれど、それはなぜなんでしょう?

世の中に歌詞ってめっちゃたくさんあるけど、ほとんど僕は共感を覚えないんですよ。音楽を作るよりメロディを書くより、何よりも歌詞を書くのが難しいと思う。例えば、フィッシュマンズの佐藤伸治の歌詞って、ものすごく自然だし、すごく詩的なんですよね。作ったというよりも日常がそのまま語られてるようで、でも、その人にしか書けないもので。ツジコさんとか真部くんの歌詞も、その人にしか書けないものやし、自分にとってはそういうものが歌詞だと思う。音楽にはファンタジックな感じがあるんですけど、歌詞に関してはものすごく現実を求めるというか。

──音楽にファンタジックなものを求めるっていうのは?

Vampillia

いい音楽って飛べるじゃないですか。鳥肌が立ったり、なんか忘れられたりする。僕がめっちゃいいなと思うものって、1回聴いた瞬間「もう聴きたくない」と思うんですよ。何度も聴くとわかってしまうというか、「あ、これはそういうものだ」と思っちゃうじゃないですか。だからもう聴きたくない。でも、また聴いてしまうような。そういうところに魔法があると思っていて。

──理解しきれないものに魔法が宿るみたいな?

そう。このままわからないつもりでいたいみたいなところもあって。そういうところなんですよね。

──確かに、異物感というか、音楽を聴いても「Vampilliaとは◯◯である」と簡単に言えない感はすごくありますよね。ジャンルで語れないというか。

そうですね。僕らメタルって言われるのが嫌なんですよ。メタルの要素っていうのは「ヴォォォ」だと思うんですけど。

──デスボイスね。

僕らが最初に「ヴォォォ」をポップスにしたいという気持ちはあったんですよね。最初はポップスじゃなかったものがポップスになる瞬間ってあるじゃないですか。80年代のヒップホップがそうだったと思うんですけど。

──市民権を得てポピュラーな存在になるということ?

そう。そういうふうになったらいいなって思うんですよね。いろんなものが平等に選択できたらいいなって。

──意味のわからないものがポップスとして成立するという。

そうなったらうれしいです。

【予告】2014.4.23.Vampillia - my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness

Vampillia - mirror mirror(bombs BiS) from"The Divine Move"2014.4.9 release

日本企画盤「the divine move」 / 2014年4月9日発売 / 2310円 / Virgin Babylon Records / VBR-019
日本企画盤「the divine move」
収録曲
  1. lilac(bombs 戸川純)
  2. mirror mirror(bombs BiS)
  3. endless summer(feat. ツジコノリコ)
  4. tasogare(feat. 長谷川裕倫)
  5. good religion(feat. Mick Barr)
  6. dizziness of the sun(feat. ツジコノリコ)
  7. oops we did it again(bombs BiS)
  8. endless(massaka)summer 2014
  9. lilac(bombs 戸川純) perfect ending ver.
Vampillia(う゛ぁんぴりあ)

Velladon(Vo, G)、possession mongoloid(Vo)、吉田達也(Ruins)と竜巻太郎(NICE VIEW、TURTLE ISLAND)のツインドラム、真部脩一(ex. 相対性理論)ら10人(ときにはサポートなども含めた、それ以上)のメンバーからなるバンド。2005年に大阪で結成され、結成当初は元BOREDOMSの吉川豊人が在籍した。あぶらだこ、BiS、赤い公園、撃鉄、DE DE MOUSEら個性派アーティストを招いたイベント「いいにおいのするイベント」を主催している。

2008年、ツジコノリコとニューヨークツアーを敢行。2009年10月にミニアルバム「Sppears」を発表し、2011年にアメリカのimportant recordsより「Alchemic Heart」、イタリアのcode666より「Rule The World-Deathtiny Land」をリリースした。2014年4月には、戸川純、BiS、ツジコノリコらをゲストに迎えた日本企画盤「the divine move」に続いて、1stフルアルバム「my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness」をVirgin Babylon Recordsからリリースする。