Uru|デビュー5周年の今、ドラマ主題歌で綴る「出会いの素晴らしさ」

タイトルはもうこれしかない

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか? 非常にナチュラルなテンションで楽曲に寄り添いつつ、後半に行くにつれて声の彩度や輝度が上がっている印象ですが、表現やニュアンスで大事にしたことを教えてください。

私の曲はほとんどがそうですが、今回も、サビまでの部分はテンションを抑えて、まだ自分の気持ちに気付かない振りをして蓋をしている感じで歌い、最後のひと言「好きなんだ」と素直に認められるようになるまでの流れに従順に声色やテンションも変えていったつもりです。最後の「好きなんだ」はこの曲の要でもあるので、ここのテイクにものすごくこだわって何度も録り直しました(笑)。

──心地よさそうに語尾に節をつけているところやアウトロの“♪ラララ”のパートは、曲の主人公の感情に寄り添うことで自然とあふれ出たもののように受け取りましたが、実際のところどうでしたか?

この曲の主人公のことを意識したというのはもちろんなのですが、この曲をライブで歌ったときに、聴いてくださっている皆さんがいつの間にかニコニコとしているような、生まれ持った温かさみたいなものを吹き込みたいなと思って、そうなるように歌ったと思います。

──タイトルをシンプルな「Love Song」にしたのはどうしてですか?

自分の気持ちになかなか素直になれずにいた主人公が、最後にははっきりと「好きなんだ」と素直になるところから考えて、まっすぐなタイトルにしたかったんです。もうこれしかないなと思いました。

──「推しの王子様」は御覧になっていますか? ご自身の曲が流れてくるとどんな気持ちになるのでしょうか。

嘘みたいな本当の話なのですが、初回放送をリアルタイムで拝見していて、最初のほうは自分の曲が流れてくることにいつも通りドキドキとしていたのですが、後半になるにつれて、ドラマに見入りすぎて自分の曲がどこで流れたのかわからず、あとで録画で確認しました。マネージャーさんに、「そんなことある!?」と突っ込まれました(笑)。イントロが流れたときに、少しハッとしたような気はするんですが、そのときのセリフのやり取りがとてもよくて見入っていたので聴き逃したのだと思います。でも、2回、3回と、自分の曲がドラマとともに流れているところを観て、歌わせていただけて本当にありがたいなという気持ちと、このドラマに寄り添える曲が作れたかどうかというところにドキドキしながら聴いています。先行配信でも、聴いてくださった方からのダイレクトな感想が私のところにも届いてとてもうれしいですし、こうやってドラマとともに楽しんでもらえていることが本当に光栄です。

Uru(撮影:西槇太一)

自分では絶対に思いつかないアレンジの「I don't suit you」

──カップリングについても聞かせてください。2曲目の「I don't suit you」はどんなイメージで生まれた曲なのでしょうか? 恋の始まりを描いた「Love Song」とは対照的に、恋の終わりが描かれているのが1枚のパッケージとして面白かったです。

この曲も、メロディを先に考えてあとから歌詞をつけたのですが、メロディを考えているときから歌詞の全体像がもうできあがっていて。曲の雰囲気から、少し大人な恋愛の雰囲気や、どうしようもない切なさみたいなものを書きたいなと思っていました。私の妄想では、主人公のほうが気持ちが大きくて、夢だったりやりたいことや目標を持っている相手の気持ちを推し量ることができずに、自分の気持ちだけを優先させてしまってきた結果……のような歌詞にしてあります。でも、聴く人によっていろんな受け止め方ができると思うので、それも合わせて想像を楽しんでほしいです。

──プロデュースをAmPmさんが手がけられています。どんな流れで出会い、制作の過程ではどんなやりとりがありましたか?

スタッフさんから「とてもカッコいいアレンジをする方たちがいてね」ということでご紹介いただいたのがご縁でした。AmPmさんの曲を聴かせていただいて、とってもカッコいいなと思ったので、AmPmさんがこの曲に感じた直感でアレンジをしていただこうと、「Love Song」と同様、私からは特にこうしてほしいというような要望はお伝えしませんでした。洋楽のR&Bが好きという話はしたので、その要素を少し入れてくださったのかなと思っています。お渡しした私のデモ曲と雰囲気が違いすぎて、自分では絶対に思いつかない、カッコよく新しい楽曲になってとてもありがたかったです。

──こういった洋楽的ニュアンスのトラックのうえで響くUruさんの歌声も素晴らしかったです。「Love Song」とはまったく異なるアプローチだと思いますが、ボーカルで意識したことを教えてください。

速いテンポなので、歌詞が聴き取りにくくならないようにということだけは注意しながら、あとは自由に、AmPmさんが作ってくださったサウンドに身を任せて歌いたいように歌うという感じでした。感情を込めるというよりは、サウンドに乗せて自由にというイメージでしたが、最後の1文「愛してた」には主人公の感情をたくさん吹き込みました。

「勿忘」はすべてが魅力的

──3曲目にはAwesome City Clubの「勿忘」のカバーが収められています。選曲の理由と、この曲の感想、思い入れを聞かせてください。

初めて聴いたときに、とても耳に残るメロディで、自分でも楽曲を購入してずっと聴いていたので、この曲を歌わせてもらえることになったときはとてもうれしかったです。説明がとても難しいのですが、個人的に、この曲全体がファンタジーの要素とスパイシーな要素と甘く切ない要素、おいしいところが全部詰まった曲だなと思っていて。コードもおしゃれだし……なんというか、つまり……とても好きです(笑)。

──かなり低いトーンまで使われている印象ですが、ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

原曲は男性と女性で歌われているので、キーの設定がとても難しくて最後まで迷いました。ここまで低いトーンを連続して歌ったことは過去にないので、私の曲をずっと聴いてくださっている方にはとても新鮮なんじゃないかなと思います。低いトーンって、感情だったりを表現するのが普通のトーンに比べて難しいなと改めて思いました。これは技術的な面でもあるのですが、「本当はこういう表現で歌いたいな」と思っているのに、思いと技術が並走してくれなくて何度も録り直したり、とても難しかったのですが、だんだんコツみたいなものがつかめたので歌っていてとても楽しかったです。そして改めてこの曲の素晴らしさを感じました。ネガティブとポジティブが混在している歌詞や、フワフワと漂うようなメロディ、感情の抑揚を表すようなサビなど、本当にすべてが魅力的で、たくさんの方に愛される理由をじんわりと感じながら歌わせていただきました。

──4曲目には今年2月リリースの「ファーストラヴ」をギターアレンジでセルフカバーしたものが収録されています。直近の曲をアレンジ違いで歌おうと思ったのはどうしてですか?

セルフカバーはずっとやらせてもらってきたのですが、今回の「ファーストラヴ」は、原曲がそもそもピアノの要素が強くて、これをいつものようにピアノアレンジにしたところで……という思いがあったのと、この雰囲気をもう少しマットな、“4畳半”のイメージで歌ったら面白そうだなと思ったので、今回はギターアレンジにしました。リバーブも極力抑えめにしたので、1Kのアパートで夜な夜なカーテンを開けて街灯を見下ろしながらぽろろんと歌っているイメージが伝わったらいいなと思います。

──アレンジの違いにより、楽曲の異なる魅力を感じられる仕上がりだと思います。歌声も原曲とは違った表情が引き出された実感はありますか?

せっかくギターアレンジで歌わせてもらうので、原曲のボーカルとはまた少し違った温度感を吹き込みたいなと思っていました。原曲が「今現在の自分が今までのことを思い出して語りながら歌っている」のであれば、セルフカバーは「1人でボソボソと部屋で歌っている感じ」というか。うまく伝えられないですが、もしかしたら、原曲よりももっと月日が経って、アルバムを見返しながら歌っているとか、そんなイメージかもしれません。

東京国際フォーラムは自分を褒めることができるライブに

──11月には東京国際フォーラム ホールAにて、「Uru Live 2021 『To You』」の開催が決定しました。国際フォーラムに立ちたいとかねてから語っていたUruさんですが、その夢の場所に立てることが決まった感想はいかがですか?

マネージャーさんからお話を聞いたときは、しばらく放心しました(笑)。「本当にこの日が来るのか……」という感じで、いまだに実感がないです。ステージに立ってみてやっと実感できることかもしれませんが、でも、とにかく、ここまで連れて来てくださったスタッフさんや応援してくださっている皆さん、会場へ来てくださるお客様に最高の音楽と最高の時間を届けるべく、精進しようと思っています。

──「To You」というライブタイトルにはどんな思いが込められているのでしょうか?

私が音楽の道に進みたいという気持ちに素直になれたのが、この東京国際フォーラムで大好きなスキマスイッチさんのライブを初めて観たときだったんです。そのとき、個人的にとても心が疲れていた時期でもあったので、そのライブで本当に感動して、勇気と、大袈裟に聞こえるかもしませんが「生きる力」をもらえて。だからこそ私にとって東京国際フォーラムは、人生においてとても重要な場所の1つなんです。その日、私は「絶対いつかこのステージに立つんだ」という目標を持ちました。家に帰ってその思いを書き綴ったのですが、それが「いつか東京国際フォーラムのステージに立てた自分へ」宛てた手紙だったんです。なので、今回の「To You」というタイトルは、その日の自分に向けてという意味と、私がその日お二人の音楽からもらったものを、今度は私のライブへ来てくださったお客様やいつも応援してくださっている「あなたへ」与えることができるようにしたいなという思いで決めました。いつもライブのタイトルって、わりとふざけたというか、面白そうなタイトルが最初に浮かんでくるのですが、今回ばかりは最初から真剣に考えました(笑)。

──現時点でどんなライブにしようと考えていますか? 意気込みとともに聞かせてください。

まだまだこの厳しい状況が続いていて、このコロナ禍が原因でイレギュラーな対応をせざるを得なかったり、いつも通りの日常が送れなかったり、「こんなところにも影響が……」といったこともたくさんあると思うのですが、そんなときにも関わらず足を運んでくださる皆さんには、もう、その時間だけでも心穏やかに過ごすことができるような優しい時間を作れたらなと思っています。私が音楽で救われたように、お越しくださった皆さんにも、何か少しでもいい流れになるきっかけになってくれるライブができたらいいなと思っています。歌いたかった曲を歌って、私も、やっと自分を褒めることができるようなライブにしたいです。

──最後に。新しいヘアスタイルもすごく素敵です。髪を切ってみていかがですか?

シャンプーの減る速度もゆるやかになったし、ドライヤーも楽ちんでとってもいいです。もう、伸ばす気になれないと思います(笑)。「Love Song」に合わせて切ったつもりですが、5周年を迎えて、6年目のスタートとしても新鮮な気分になれたし、本当によかったなと思います。ただ……長いときと比べてびっくりするくらい寝癖がつく……(笑)。

Uru

ライブ情報

Uru Live 2021「To You」
  • 2021年11月13日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
Uru(ウル)
2013年に活動を開始した女性シンガーソングライター。オリジナル楽曲のほか、J-POPを中心にさまざまなジャンルの楽曲をカバーし、YouTubeで発表して話題を集める。2016年3月に東京・キリスト品川教会 グローリア・チャペルで初の単独ライブを実施。6月にSony Music Associated Recordsからメジャーデビューシングル「星の中の君」をリリース。2020年3月には、ドラマ「中学聖日記」の主題歌「プロローグ」や日曜劇場「テセウスの船」の主題歌「あなたがいることで」を含む2ndアルバム「オリオンブルー」を発表した。2021年2月に北川景子主演の映画「ファーストラヴ」の同タイトル主題歌をシングルリリースした。同年6月より自身初の全国ツアー「Uru Anniversary Tour 2021『Punctuation』」を開催。8月にドラマ「推しの王子様」主題歌の「Love Song」をシングルリリースし、11月13日には東京・東京国際フォーラム ホールAで単独公演「Uru Live 2021『To You』」を開催する。