音楽ナタリー Power Push - Uru
YouTubeシンガー、メジャーという新舞台に向ける思い
シングル「星の中の君」でメジャーデビューしたUru。映画「夏美のホタル」の主題歌に使用されたこの曲は、ピアノとストリングスでアレンジされたスケール感のあるスローナンバーで、Uru自身の声が持つパワーを味わえるものとなっている。
2013年よりYouTubeに公式チャンネルを立ち上げ、さまざまなジャンルのカバー曲を歌った動画を公開してきた彼女。その数は100本に及び、総再生回数は4400万回以上、チャンネル登録者は14万人を超えた。これほど多くの人に支持されてきたのは、彼女の声が透き通るような美しさを持っていること、そして独自の歌い回しやタイム感を持つオリジナリティを放ちながら、歌そのものへの敬意と愛情を感じさせる歌唱であったからだろう。今回のインタビューでは「音楽だけは続けてきた」という彼女のこれまでの道のりや、デビューシングル「星の中の君」の制作の様子など語ってもらった。
取材・文 / 上野三樹
私の歌を受け入れてもらえるのかな
──2013年にYouTubeでカバー曲を歌う動画を公開し始めたそうですが、そのきっかけはどういうものだったんですか。
これから本格的に音楽をやっていこうと思ったときに、デモテープをレコード会社に送る以外に、ネットを有効に活用できるんじゃないかなと思ったんですね。その頃、周りの友達もYouTubeで動画を公開していたこともあり、私も始めてみました。
──「自分の歌を聴いてもらいたい」という気持ちが強くて?
強かったわけではないんですけど、私がカバー曲を歌ってYouTubeでアップした動画に対して、いろんな方からレスポンスをいただけたことがうれしくて。これは続けてやってみようかなと思いました。
──最初にカバーした曲はなんだったんですか。
荒井由実さんの「ひこうき雲」ですね。
──すごい。その動画、鑑賞したんですけど最初からあの完成度だったんですね。
えっ……うれしいです(笑)。まずはその動画をアップしてみたとき、YouTubeだと再生回数が確認できて、わかりやすいのがいいなと思いましたね。目に見えて反応が返ってくるのが面白いなと思って、どんどんハマっていった感じです。
──それまでUruさんは、音楽とはどういうふうに向き合っていたんですか。
自分で楽譜を買ってきて弾き語るとか、そういうことをしていました。オーディションも1回受けたことがあったんですけど、すごく前のことで、当時は「アーティストになりたい!」とか、そういう気持ちが強くあったわけではなかったんです。とりあえず受けてみようかなっていう感じで。でもそのあと、自分でいろいろとやっていくうちに「どこまで私の歌を受け入れてもらえるのかな? いけるところまでいってみたいな」という気持ちが芽生えてきて。本格的に音楽をやろうと思ったタイミングでYouTubeでの動画公開を始めたんです。それまでは音楽がやりたいと思っても、どういう手段で何をしていいのかもわからなかったので。
映っているけど、あまり動かない
──なるほど。モノクロで、端っこにマイクが置かれていて、Uruさんの顔半分がチラッと見えるような映像のスタイルは、やっていくうちに定まっていったものなんですか。
はい。最初は静止画だったんです。でも、静止画のまま音楽が流れたところで面白くないだろうな、人が映っていたほうがいいんだろうなと思って、歌ってる自分を撮影するようになりました。物の配置とかも、だんだん私の好きな感じにしていって、今に至ります。
──口元さえ見えなくて、Uruさんがほとんど動かずに歌ってるっていうのも独特ですよね(笑)。
そうですね(笑)。歌ってるときに私が動くと、見てる人は「あ、動いた」って意識がそっちにいっちゃう気がして。聴いてる人の世界観をなるべく妨げたくないので、大げさな身振り手振りはしないようにしています。もともと極端に動きながら歌うタイプではないんですけど、聴いてくれる人にスッと歌の中に入ってもらえるように。
──なるほど。UNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」のカバーなども、Uruさんが歌うことでまた違ったよさが見えてくる感じで素晴らしいです。何より、あのアッパーな曲で微動だにせず歌うっていうのが、すごいなと。
あはははは、そうですね(笑)。そんなに意識してやっている感じでもないんですけど。
──2013年にスタートした動画の公開も、デビューが決まってから、100本をめどに一旦終了すると宣言していましたよね。今まで続けられたのはどういう思いからだったんですか。
私って音楽以外にずっと続けてることがないんです。それに応援してくださる方が、楽しみに待っていてくれることが大きかったですね。カバー曲のリクエストをいただいたり、コメントしていただいたりすることが私の支えになっていました。
──チャンネル登録数が13万人越えということですが、そうなってくると「やめられないな」という感じもあったのではないでしょうか。
そんなふうに思ったことはないんですけど、動画をアップするのが習慣になってきてるところもあって。
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- デビューシングル「星の中の君」/ 2016年6月15日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / AICL-3119~20
- 通常盤 [CD] / 1200円 / AICL-3121
CD収録曲
- 星の中の君
- WORKAHOLIC
- すなお
- 星の中の君 -instrumental-
- WORKAHOLIC -instrumental-
- すなお -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 「星の中の君」MUSIC VIDEO
Uru Live「SS」
- 2016年9月10日(土)
- 東京都 東京グローブ座
- 2016年9月11日(日)
- 東京都 東京グローブ座
Uru(ウル)
2013年に活動を開始した女性シンガー。オリジナル楽曲のほか、J-POPを中心にさまざまなジャンルの楽曲をカバーし、YouTubeで発表している。楽曲の歌唱・演奏のほか動画の撮影や編集も1人で行い、これまでに100本の動画を公開。総再生回数は4400万回以上、チャンネル登録者は14万人以上を記録している。2016年3月には東京・キリスト品川教会 グローリア・チャペルで初の単独ライブを実施。6月にはSony Music Associated Recordsからメジャーデビューシングル「星の中の君」をリリースした。