モノンクル「salvation」インタビュー|2人が変化を求める理由とは? コロナ禍で見えたそれぞれの表現

モノンクルが2月23日にシングル「salvation」をリリースした。

ポップスとジャズのエッセンスを織り混ぜた、多彩な音楽性で話題を集めるモノンクル。吉田沙良(Vo)と角田隆太(B)という異なる感性を持つ2人は、その個性をぶつけ合うことで唯一無二のケミストリーを生み出してきた。パンデミックに見舞われた昨年は、イラストレーター・ますだみくのマンガ作品とのコラボや、モーニング娘。「抱いてHOLD ON ME!」のカバーなど、曲ごとに趣向を凝らして作品作りに磨きをかけている。

今回のシングル「salvation」は、テレビアニメ「ヴァニタスの手記」のエンディングテーマ。モノンクルにとって初のアニメ提供曲となる本作には、ミックスおよびアレンジで冨田恵一が参加している。音楽ナタリーではコロナ禍で社会が停滞する中でも常に変化を求めて活動する2人に、「salvation」の制作秘話はもちろん、3月に控えるシングルのレコ発ライブへの意気込みを聞いた。

取材・文 / 村尾泰郎撮影 / トヤマタクロウ

uP!!!では東京・WWW Xで開催される「salvation」リリースパーティの模様を独占生配信!

モノンクル "salvation" RELEASE PARTY

配信日時
2022年3月10日(木)OPEN 18:00 / START 19:00

アーカイブ配信期間
2022年3月11日(金)0:00~3月17日(木)23:59

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テーマは“救い”

──新曲「salvation」はアニメ「ヴァニタスの手記」のエンディングテーマですが、アニメの世界観をもとに作られたのでしょうか。

角田隆太(B) 曲の断片程度のデモがもともとあって、それをアニメの監督さんが聴いて気に入ってくれたんです。「エンディングに使いたい」と言っていただいたときは、うれしくも意外だなと思ったのですが、原作のコミックを読んで、確かに世界観が曲とマッチしているところがあるなと。

──それはどういうところが?

角田 “救い”がテーマにあるというところですね。

吉田沙良(Vo) 「ヴァニタスの手記」はざっくり言うとヴァンピール(吸血鬼)を人間が救っていくという物語なんですけど、一言に“救う”と言ってもそこにはいろんな形の救いがあるんです。

角田 結局、救いというのは個人的な感覚というか。何が救いかというのは人によって全然違う。だから救う側と救われる側の気持ちが噛み合わない状態もあると思うんですね。沙良から見たら、僕の救いはバッドエンドにしか見えないかもしれない。そういう救いというものの難しさを、歌詞に落とし込みました。

──アニメの世界観を踏まえて、デモに新しい生命を吹き込んだわけですね。

角田 そうですね。デモを作ったのが3年前なので、当時思っていたことと今思っていることは違う。そこに原作から吸収したものを入れることで曲としてまとまりが出たと思います。

モノンクル
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衝撃を受けた冨田恵一のアレンジ

──アレンジおよびミックスは冨田恵一さんが担当してます。お二人は昨年、冨田さんのシングル「MAP for LOVE」に参加されていましたね。

吉田 角田さんはT.O.C Band(冨田を中心に結成されたバンド)に参加していたり、私は冨田さんのアルバムに参加させていただいていたりと関わりがあったので、いつかモノンクルでご一緒できないかなと思っていて。今回がちょうどいいタイミングだなと。

角田 冨田さんは唯一無二の世界観を持っていて、冨田さんのデモを聴くたびに「これに関わらせてもらえるんだ!」って高揚するんですよ。

──この曲のアレンジに関してはいかがでした?

吉田 デモが激しい曲調だったので、冨田さんがどんなふうにアレンジするんだろうとワクワクしてたんですけど、こちらの想像を軽く超えてきました。自分たちのデモのアレンジとはまったく違う曲になっていて衝撃を受けました。「コーラスは自分で考えます」とお伝えしたんですけど、最終的に私が考えたものを冨田さんが組み直したりして、完全に冨田さんのサウンドになっていました。

モノンクル

モノンクル

──デモではどのようなサウンドだったんですか?

角田 仕上がった曲とはまた違ったアグレッシブさがあって、ラウドロックっぽい感じでしたね。

──モノンクルのラウドロック! それはそれで聴いてみたいですね。

角田 冨田さんはその激しさを残しながら、サウンド的には洗練したものにしてくれたんです。

──石若駿さんがドラムを叩かれていますが、これは冨田さんの提案ですか?

角田 これは僕らからの提案です。冨田さんの作品はドラムはもちろん、リズム隊のほとんどをご自身で手がけることが多くて。僕自身その世界観のファンの1人なので、普段通りの形でやっていただくか迷ったのですが、T.O.C Bandをやらせてもらっていることもあって、そこで築いた雰囲気もせっかくなら少し混ぜられないかなと思い、今回は駿くんにドラムを叩いてもらいました。

──石若さんのドラムがデモ音源のロックっぽさ、モノンクルの息吹を残しているのかもしれないですね。

角田 うん、確かにそうですね。

吉田 そう感じてもらえるとうれしいです。

モノンクル

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気持ちを解きほぐせるような「GOODBYE」

──カップリングには昨年5月発表の配信シングル「GOODBYE」が収録されています。昨年は4曲の配信リリースがありましたけど、この曲をカップリング曲に選んだのはどうしてですか?

吉田 単純に「salvation」からの流れが最高だったんです。クロスフェードできるくらいにいい感じでつながって。

角田 「salvation」が緊張感のある曲なので、気持ちを解きほぐせるような曲が配置できればいいなと思ったんです。

──なるほど。この曲はイラストレーター・ますだみくさんのマンガ作品「匂いとか思い出の消し方とかわからないから、上書き保存できたらいいのに」とのコラボレートです。コミックとのコラボというのもユニークですね。

吉田 「ヨムオト」というプロジェクトの一環でのコラボなんですが、ますださんとは「ずるいよ」という曲でもコラボしていて、そのときはますださんと打ち合わせをさせてもらいました。ヒロインがマンガの中で言えなかった本心を探っていって、「ずるいよ」という言葉が出てきたんです。

──「ずるいよ」は昨年8月に配信された曲ですが、原作のコミックはどういう内容なんですか?

吉田 主人公はバイト先の店長に恋をしてしまうんですけど、店長には結婚する予定の彼女がいるんです。でも、店長は主人公が自分のことを好きなことに気付いていて、気を持たせるようなことをする。めちゃくちゃずるい人なんです(笑)。

──確かにずるい(笑)

吉田 めっちゃ嫌いだけど、めっちゃ好き。みたいな、主人公の本心を曲で打ち出したいと思いました。

──モノンクルでは、基本的に角田さんが作詞作曲を担当していますが、こういう女性目線の曲も角田さんが歌詞を書くのでしょうか。

角田 ベースは僕が書きますが、ある程度進んだら一緒に作業するというのが最近のやり方ですね。

吉田 曲の中で「ずるい、ずるい、ずるい」ってずっと言ってるところがあるんですけど、そういう女の子のちょっと黒い部分と言うか、本音を吐き出す部分のアイデアを出したりとか、ほかにも「女子の本音は私にお任せ!」って感じで共作してます(笑)。