UNISON SQUARE GARDEN|変わらずに動き続けた2020年を締めくくるユニゾン流“年越し特番”

コロナ禍の中で自粛ムードに抗い、次から次へと魅力的な企画をぶち上げてきた2020年のUNISON SQUARE GARDEN。そんな彼らの今年最後のアクションは、12月31日の配信カウントダウンライブ「USG 2020『LIVE (in the) HOUSE -Count Down Style-』」に決まった。それはきっと、コロナ禍に根こそぎ揺さぶられた2020年の音楽シーンにロックバンドがやるべきことを見せつける、強烈なカウンターパンチになるはずだ。

音楽ナタリーではこの配信ライブを前に、着席スタイルの全国ツアー「USG 2020 "LIVE (on the) SEAT"」を完走したばかりのメンバーにリモートインタビューを実施。激動の2020年を乗り越え、すでに新しい年を見据えて走り出している3人の熱い思いを聞いてみた。

取材・文 / 宮本英夫 撮影 / Viola Kam(V'z Twinkle)

そのときそのときの楽しみ方を見つけられたツアー

──まずは、終わったばかりのツアー「USG 2020 "LIVE (on the) SEAT"」について。感染予防対策の徹底、着席形式、公演時間は60分、1日2回公演もありという新しいスタイルへの挑戦でしたけれど、それぞれの感想が聞きたいです。

田淵智也(B) とにかく「ライブをやるしかない」ということを感じたツアーだったし、これを続けないといけないなと思いました。正直、「こういうスタイルじゃないと開催できません」とか、そういったことは我々でコントロールできることではないので。そこで戦うより、とにかく「ライブをやっている」という事実がないと、バンドも死ぬし、客の心も音楽というものから離れるだろうということを痛感しました。「やれる限りやる」ということは、来年以降も続けなきゃいけないと思っていますね。「座っていたら楽しめない」とか、僕は客としては思わないし、隣に客がいないのなら見やすくていいやとか、そのときそのときの楽しみ方は見つけられると思うので。考えるよりも実際行ってみたら楽しかった、というふうにはできると思います。観る側に制限されている感じを作らないのはこっちの仕事だから、その準備はちゃんとできたと思うので、やってみての手応えはありましたね。我々はとにかくステージに立ってでかい音を出すだけ、ということは今までと変わらずできているので、そこはスタッフに感謝してます。

斎藤宏介(Vo, G)

斎藤宏介(Vo, G) すごくポジティブな意味で「慣れていくものだな」と思いました。というのも「ツアーを回ろうと思います」という話が出てきた今年の夏から秋ぐらいには、正直「無理だろう」と思っていたんですよ、いろんな意味で。でも実際やってみたら、本当に心から楽しめているし、観に来ている人たちが何かしら持って帰ってくれている実感もすごくありました。前向きにその状況に適応してやってみれば、なんとか形にできるという自信にはなったと思います。

──1日2回回しとか、初めてでしょう。ボーカリストとしてはかなりの挑戦だったと思うんですよね。

斎藤 それも慣れで、「絶対無理」と思っていたんですけど、全然いけてますね。1本1本を大事にするがあまり、その日に全部出し切って次の日が全然ダメになってしまわないように、喉を壊さないように、気を付けながら回れました。

鈴木貴雄(Dr) ツアーが始まった当初は、世の中的に逆境の中だったので、そこでロックバンドがバーン!とカッコよくライブをやることの意義は深いと思っていて。そこに一番モチベーションを感じながらツアーを回ってきました。そこで実感したのは、人と人が会うことで救われる部分は大きかったんだなということで。それは普通に話すこともそうだし、ライブという現場もそうですね。今もこうやってリモートでコミュニケーションが取れていますけど、正直、心のやりとりがしづらいというか、心に靄がかかっている感じがあって。だからこそ、その中でカッコいいロックバンドでありたいと思うし、それがまた自分のモチベーションになるという、1人マッチポンプ状態です(笑)。

UNISON SQUARE GARDEN

今年は満足に見られなかった人に対してのライブ

──ユニゾンは今の日本で一番アグレッシブに活動しているバンドの1つだと思います。そんな中でもう次のアイデアをぶち上げたわけですけど、今度は12月31日に「USG 2020『LIVE (in the) HOUSE -Count Down Style-』」と題したカウントダウンプログラムが配信されます。しかもニューアルバム「Patrick Vegee」の楽曲を全曲演奏するという。この企画の意図を語ってもらえますか?

田淵 7月から9月まで毎月配信ライブをやってみて「音楽業界にとって面白い武器が手に入ったな」という手応えがすごくあったんですけど、秋には客を入れたライブをやって、そうするとやっぱりそっちに注目が行ってしまうんです。なので、せっかく得た武器を客に忘れてもらわない努力をしないといけないなと。配信ライブのブームは1回去ったと思うんですけど、「こんなに面白いものを忘れちゃダメですよ」と言うためにも、年内にもう1回やるべきだと思ったのがきっかけですね。普通のライブが始まったら配信ライブはやらなくなる、という印象で年内を終えるのは嫌だし、人を入れるライブだろうが、配信ライブだろうが、今までの倍がんばるぞという精神でやりたいなと思っていたので、「年内にまたやりたい」という話を「fun time HOLIDAY online」(9月19日開催)が終わったあとにしました。じゃあどういうアイデアがあるか?ということで、面白い呼び水と面白い宣伝方法がないと客は観ないだろうなと思ったときに、「年越し」と「アルバム全曲演奏」というアイデアが出てきた、という感じですね。

──今できる最大限に面白いことを、という発想ですね。

田淵智也(B)

田淵 年越しライブは、ここ最近はthe pillowsに呼んでもらって、人のイベントに乗っかってきて(笑)。「自分たちのイベントを開催して客を付き合わせるぐらいだったら、年末は家にいてもらっていいですよ」という感じでやってきたけど、今年に関しては「オンラインだったらできるな」と思ったんですよね。

斎藤 僕ら自身や、ツアーを観に来てくれる人の中ではユニゾンは動いていることになっているけど、「コロナだから行けない」という人がいることもツアーの最中に意識はしていて、そういう人たちに向けて、という気持ちが強いかもしれないですね。ユニゾンのことが好きだけど、今年は満足にライブを観られなかった人に対してのライブ、という意味合いが強いです。