UNISON SQUARE GARDEN|今を楽しみながら未来を待つ、アイデア満載の新機軸配信ライブ

家で生きることが楽しくなるように

──フードとグッズの話もしておきましょうか。今回、いつもと違うテイストのものがいっぱい用意されています。

鈴木貴雄(Dr)

鈴木 「LIVE(in the)HOUSE」というライブのタイトルにもつながってきますけど、「ライブハウス」という言葉が自分の中でずっと引っかかっていて。ただ場所としてのライブハウスだけじゃなくて、「家で生きる」「家でライブする」というふうにも捉えられるし、今自分が置かれている状況にもぴったりだなと思って、「ライブハウス」をテーマにしたグッズを作りたいということで制作を進めていったんです。そんな中で「ところで(配信ライブの)タイトルはどうする?」と3人で相談したときに、田淵が「USG in the HOUSE」がいいと言って、じゃあ「ライブハウス」とくっ付けてこれにしない?と「LIVE(in the)HOUSE」という表記にして完成したという流れがありました。

──すごくいいタイトルですね。ひねりはあるけどシンプルでわかりやすい。

鈴木 我ながら超いいなと思ってます。デザインも最高だし。

──グッズの中にはコーヒーがありますね。

鈴木 そう。僕らの曲から選んだ5曲をコーヒー屋さんに試聴してもらって、ブレンドして焙煎してもらったドリップコーヒーのセットを売ります。「オリオンをなぞる」「シュガーソングとビターステップ」「Phantom Joke」とか、曲ごとに味を変えて。「Phantom Joke」だったらとにかく悪い感じの味にして、「苦い! 重い!」という感じのものをチョイスしたりとか(笑)。焙煎士の方から「これかこれでどうでしょう」って2種類ずつ送られてきて、5曲×2種類で10杯をスタッフ3人で飲み比べたんですよ。僕は深夜3時頃にやってたんで、マジで眠れなくなったんですけど。

斎藤 あははは(笑)。

鈴木 でも面白かった。飲んだときに「この酸味は曲の主人公の年齢感と合う」とか、そういうことに気付けたりして、いい発見だったし、何よりうれしかったのは、スタッフ3人とも、1曲を除いて全員が同じものを選んだんですね。「この曲にこの味が合う」というものが。1曲だけ意見が割れたのも、「どっちもありだよね」という程度のことで、うちのスタッフはちゃんと真面目に曲を聴いて真面目に仕事してくれてるな、うれしいなと思いました。コーヒーもですけど「ライブハウス=家で生きる」という意味を込めて、家で生きることが楽しくなるように、ビールを飲むグラスもあって、家で過ごす靴下もあって。いつもだったら作らなかったグッズが生まれました。

斎藤 このTシャツいいわ。ミミガヒー。

鈴木 ミミガヒー、めっちゃいいよね(笑)。耳が火になってる。まあ最初にも言いましたけど、自粛のおかげで生まれたと言えるものでもあるので、「こういうものも楽しんで行きましょう、イエー!」という感じです。

──あとフードもあって、ライブ前に「COFFEE BOX」と「BEER BOX」の2種類の冷凍フードセットをデリバリーするという前代未聞の企画もありますね。温めたらすぐ食べられるという(※フードの販売受付はすでに終了)。

鈴木 餃子は焼かなきゃいけないですけど(笑)。

──パッケージもかわいいし。こんなのよく考えたなあと思いますよ。そういうものも含めて、この配信ライブはいろんな意味で新しい時代の始まりになると思うので、ぜひ参加してほしいですね。

斎藤 よろしくお願いします。

斎藤宏介(Vo, G)

社会がどうなっても面白いエンタメは出てくる

──あと最近のトピックとしては、オリジナルアルバム7枚のサブスク配信が解禁されましたよね。これに関しては、今まで配信していなかった理由があったんでしょうか。

田淵 いや、特にないですね。確かに昔は様子見でしたけど、実際のユーザー感覚で言うとサブスクでしか曲を聴いてない人も多いし、ないよりあったほうが聴かれるよなと。僕の中では、CDで音楽を買う人とサブスクで聴く人は別物だから、両方にちゃんとアピールしてがんばればいいのでは?という気持ちでいるので。

──確かに。CDを買う人には買う人の動機と理由がありますし。

田淵 その理由をこっちがちゃんと作ってあげる努力すればいいじゃんと。

──なんか、考えることが多いなあと思いますよ。この時代のミュージシャンは大変だ。

田淵 そうですね(笑)。そして次はそれこそ配信ライブで、お金を払うだけの価値のあるもの、すごいものをやるバンドが勝ってくると思うので。テレビ番組ぐらいのすさまじい映像を作るとか。そもそもこの自粛期間中はYouTuberが強かったりとか、映像クリエイターが強かったのと同じ理由で、そのへんを味方につけた人が残っていける。だからバンドだからどうこうとかじゃないと思いますね。なんにせよ、社会がどうなっても、面白いエンタメがたぶん出てくるとは思うので。

鈴木 もうちょっと時代が進化すれば、俺らがこのへんの部屋の中でライブしてるVR映像をみんなに観てもらえるかもしれない。実際の大きさで。

UNISON SQUARE GARDEN

──それはすごいなあ。でも、ありえなくはない。

鈴木 全然、もうちょっとだと思いますよ。

田淵 たぶん今、いろんなことをみんな必死に考えてると思いますよ。俺は、スマホを振るだけで曲終わったらスピーカーから歓声が出るアプリが出るんじゃないかなと思ってるんですけど。客がしゃべっちゃいけないってんなら、アガったらスマホを振っといて、終わったらワーッて。

──では最後に、先日リリースが発表されたアルバムの話で締めましょうか。タイトルが「Patrick Vegee」で、2020年内リリースということだけ発表されています。内容についてはいずれまた話を聞く機会があると思いますが、今言えることがあるとすれば?

田淵 15周年が終わってから出すのにふさわしいというか。去年の15周年は特別なこと、ちやほやしてくれというモードのことをやったので、その反動でちゃんと目立ちたくないほうに行ったと思います。もっと巣にもぐる感じにしたかったのに、それに対して「リクエストライブやるよ」なんて正反対のことをやってるんだけど……もともと15周年が終わったらとにかく内にこもって、自分たちがやりたいことを無理なくやり続ける方向に行くための1枚にしよう、ちょっとヘンなものを作ろうと思っていたので、その通りのものにしました。

──要は、今年の状況に左右されたものではないと。

田淵 うん。変えたらカッコ悪いなと思うんで、特に歌詞も変えず、曲も変えず。何が起ころうと、普通に16年目にバンドが行きたい方向としてふさわしいものを作っていたよ、というアピールになればいいと思ってます。

──楽しみにしています。いつ聴けるかはわからないけれど。

田淵 みんなしばらくは買う元気もないだろうから。音楽のような趣味やエンタメに関するものは最後になってしまいますからね、人間の欲求の中で。心が安定してないと、モノを買ったって音楽を聴いたって楽しめないわけで、だからそこで可能な限りベストな状態で出すことが、今回のアルバムが一番喜ぶやり方なのかなと思っていて。とはいえ年内には出すという感じですね。

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