UNISON SQUARE GARDENトリビュートアルバム発売記念対談 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)×SKY-HI|高校時代からの“先輩後輩”が認め合う、15年間ブレない互いのスタンス

独自のスタンスでやれるのは曲に力があるから

──今年5月14日にはUNISON SQUARE GARDENとSKY-HIの初の対バンが実現しました(UNISON SQUARE GARDENの自主企画「fun time HOLIDAY 7」)。手応えはどうでした?

SKY-HI まず、ちゃんとライブを組み立てようと思っていたんです。フェスなんかでは序盤からパンチ強めのラップの曲を続けることが多いんだけど、ユニゾンとの対バンのときはちょっと違っていて、くだけた雰囲気を出しつつ「敵じゃないよ」ということを伝えようと。皆さんすごく好意的に受け入れてくれて、うれしかったですね。

斎藤 よかったよね。

左から斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、SKY-HI。

SKY-HI 自分のライブが終わって、ホールの後ろのほうでユニゾンのライブを観てたんですけど、不思議な感じでしたね。同じステージでユニゾンがライブをやっていて、斎藤さんがMCで俺の話をしていて……“人生は奇なりthan小説”ですよ。

斎藤 (笑)。一緒にやるのは原宿ロサンゼルス以来だからね。こちらとしては「俺が大好きなSKY-HIのライブをユニゾンのファンに見てもらいたい」ということですよね。それが実現したのもうれしかったし、ホールでやるっていうのも……。

SKY-HI 「また一興」(「シュガーソングとビターステップ」の歌詞を口ずさむ)ですか?

斎藤 そうそう(笑)。ライブハウスの熱さも好きなんですけど、SKY-HIの音楽の素晴らしさをホールでじっくり感じてほしかったので。あと、貴雄もステージの端で最初から最後まで観てたんですよ。食い入るように観て「すごいわ」って。

SKY-HI 恐縮です。

斎藤 お客さんをアテンドするというか、「こうやってライブに身を委ねて」というところにまで、紳士的かつ優男(やさおとこ)な感じではなく持っていって。すごいですよ。

──独自のライブのスタイルを貫いているのも、ユニゾンとSKY-HIの共通点だと思います。

SKY-HI そうかも。僕はやり方を間違えることもあったし、コミュニケーションに失敗することもあった気がするけど、今年に入ったあたりからいい手応えがあって。「どこでやっても、どんな状況でも、自分らしさの軸がブレない」ということがようやく見えてきたというのかな。だいぶ時間がかかりましたけど。

斎藤 僕らもフェスでは基本的にMCしないし、「通りすがりに気に入ったバンドを見つけたら、ワンマンに行って」くらいしか話さないんですよ。リスクの高いやり方だけど、「そうだよね」って賛同してくれる人も少しずつ増えて、「ユニゾンはそういうバンドだから」と認めてもらえるようになって。SKY-HIもそうだと思うけど、そういうスタンスでやれるのは曲に力があるからだと思うんです。そこが伴っていないとサマにならないので。

それぞれのマナーでカバーしてくれたトリビュートアルバム

──そしてSKY-HIさんはUNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバム「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」に参加しました。「蒙昧termination」をカバーしていますが、この曲を選んだのはどうしてですか?

SKY-HI 2017年の「SK's Session 2」(2017年8月に開催された斎藤のソロ企画ライブ)に出させてもらったときに、「蒙昧termination」をカバーしたんですよ。「あのね歌詞書いたの僕じゃないんで 田淵に言っておいて」を「田淵さんに言っておいて」って歌ったら、お客さんにめちゃくちゃウケて。それがすごくうれしかったから、味を占めて、もう1回やりたいなと。

斎藤 はははは(笑)。

SKY-HI あとは自分がオリジナルを作るときのマナーでカバーできる曲ということですね。「オリオンをなぞる」や「シュガーソングとビターステップ」がそうですけど、メロディとコードが激しく動く曲は自分には歌えないし、リアレンジできないと思ったので。ちょっとはラップも入れたかったし、そうなるとやっぱり「蒙昧termination」かなと。自分が歌って齟齬がない歌詞というのもポイントでした。

──アコギを中心にしたアレンジも新鮮でした。

SKY-HI 「SK's Session」のときはアコースティックギターとカホンだけでやったんですよ。今回はもうちょっと音を入れてますね。

左から斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、SKY-HI。

斎藤 すごくよかったです。「こう来るんだ?」という驚きがあるし、トリビュートに入っているほかの曲と並べたときも、1曲だけアプローチが違う感じがあって。打ち込みもラップのパートもカッコよくて、「ありがとう!」という気持ちになりましたね。

SKY-HI こちらこそありがとうございます。ユニゾンの曲はすごく緻密に組み立てられているし、情報量が多いじゃないですか。それをなるべくシンプルにして、音を足さないという方向で収束させたくて。原曲と同じ手法で勝負するのは無理ですからね。いかに違う土俵に持ち込むかを考えたし、だから最初からラップしているんですよ。そういう遊びが許される曲でもあるなと。

──それが「自分のマナーでカバーする」ということでしょうね。

SKY-HI そうですね。

斎藤 今回のトリビュートに参加してくださったバンド、アーティストの皆さんも、ご自分のマナーでカバーしてくれてる感じがありました。それぞれに明確な武器があって、カバーしてくれた曲を聴くと、それがちゃんと感じられて。アレンジや演奏もそうだし、歌詞の聞こえ方が変わっていることもあったし、聴いていてすごく楽しかったんですよね。本当にありがたいし、たぶん自分たちが一番うれしいんですよね、今回のトリビュートアルバムは。

SKY-HI (収録曲と参加アーティストを見ながら)堂島孝平さんの「シュガーソングとビターステップ」とか、どうやってカバーしてるんだろう? 

斎藤 これは俺らもまだ聴いてないんだよね(※取材は5月に実施)。

SKY-HI あ、そうなんですね。「シュガーソング」以降のユニゾンの曲って、ほかの人がカバーしづらい気がするんですよね。演奏技術もそうだし、コードもリズムもすごいことになっていて。パッと聴いた感じはすんなり楽しめるし、それがポップセンスということなんだと思うけど、コード譜やリズム譜を見たら、たぶん意味がわからないんじゃないかなって。

斎藤 そうかも(笑)。以前、弾き語りのライブをやってたときも、どうやってアレンジしていいかわからないことがあって。思い切って3コードにして、新たにリフを考えて……みたいなことをしないと成立しないというか。特に「シュガーソング」以降の曲はそういう感じですね。