ナタリー PowerPush - 上間綾乃
沖縄が生んだ美しき“民の謡(タミのウタ)”の伝承者
大切な人の手はずっと離さず歩いていきましょうね
──今回シングルとしてリリースされた「ソランジュ」は、日本の音楽史に数々の名曲を残してきた都志見隆さんが作曲を、康珍化さんが作詞を手がけられていますね。
衝撃的な出会いでしたね。まず都志見さんに曲をお願いしようということになったときに、都志見さんが私のライブを観に来てくださり、「ファンになりました」って言ってくださったんですよ。そこで私は「よし、ちゃんと伝わった!」と思って(笑)。で、作ってくださった曲が、とにかくもうジーンとくる優しいメロディだったので、チームの全員がまずひとしきり泣いて。
──歌詞に関しては?
歌詞を誰に頼もうか悩んでいたときに、都志見さんが以前にお仕事をしたことがあった康さんの名前が挙がったんです。私としてはそんな大御所の方に頼めるなんて思ってなかったんですけど、都志見さんが「いや上間だったら康さんまで話をもっていけるから」って言ってつないでくれて。康さんは、私がどんな人で、今までどんなことをやってきて、何を大切にしているかっていうことをしっかり感じ取ってくれて。本当に素晴らしい歌詞を書いてくださいましたね。
──曲のテーマは“手”だそうですね。
はい。たくさんの出会いと別れを繰り返す人生の中で、大切な人の手はずっと離さず歩いていきましょうねっていうことを歌っています。すべて標準語で、難しい言葉を使ってるわけではないんですけど、深みのある康さんの言葉によって曲が自然と語りかけてくるような感覚になると思いますよ。都志見さん、康さんという素晴らしい方々としっかり手をつないで作ることができた作品だからこそ、説得力を持って伝えられるテーマになったなってすごく思うんです。で、これがリリースされることで、またいろんな人たちと手をつないでいけたらいいなって。
──レコーディングはいかがでしたか?
私は曲ができたときも泣いて、歌詞ができたときも泣いたので、歌を録るときにももちろん泣きましたね(笑)。今までの人生の中の、あの人のあの一言とか、そういうことを思い出しながら歌いました。ただ、歌い方に関してはいつもの上間綾乃と言いますか、そういう表情になりましたね。いろいろ試してみた中で、普段通りの歌い方が一番マッチしたので。
──うん、思いはめいっぱい込められているけど、歌声は力むことなく、すごくナチュラルな雰囲気。だからこそ感動的な曲の世界観に、素直に引き込まれるんですよね。
この曲は上間綾乃ナチュラル系です(笑)。
「里よ」は精神、魂としての民謡
──一方、カップリングには上間さんがウチナーグチで作詞を手がけた「里よ」も収録されていますが、こちらはサウンドも歌い方も全然違った雰囲気ですね。
そうですね。伊集タツヤさんに曲を書いていただいたんですけど、一聴して芯を持ったたくましい女性像が浮かんだので、歌詞もバッ!と書けたし、歌もカッ!といきました(笑)。
──ギターが激しくなるサウンドが衝撃的です。
ウチナーグチを用いているという意味では、これも広い意味での「民謡」だとは思いますが、ここまでギターも歌も叫んでいる民謡はなかなかないですね(笑)。たぶん民謡を一面的に考えている人にしてみると「なんじゃこりゃ!?」って曲だとは思うんですけど、私としてはこれもほかの曲と同様の思いで歌っています。曲調というよりは、精神とか魂といった面での民謡として。
2ndアルバムでは新たな挑戦も
──このシングルをリリースした後の活動は? 2ndアルバムの制作に入っているという話も聞こえてきていますが。
そうなんですよ。実はアルバムの制作中に「ソランジュ」が生まれて、こりゃアルバムまで待ってられませんねっていうことでシングルとしてリリースした経緯があったんです。なので、「ソランジュ」が無事リリースされたので、ここからはまたアルバムの制作ですね。
──どんな内容になりそうです?
1stアルバム(2012年発売の「唄者」)と同じく今の上間綾乃がテーマにはなるんですけど、メジャーデビューからの経験で手に入れた成長を100%込めつつ、新たなことにもどんどん挑戦していきたいなって思ってますね。
──今夏は大きなフェスへの出演もいろいろ決まっているそうなので、その心震わす歌声でジャンルの垣根をぶっ壊しちゃってください。
そうですね。インディーズの頃は畑違いのイベントに出たりすると怖気づいちゃってたんですけど、今はもうなんも怖いものはない……っていうと言いすぎですけど、自分としては「全然大丈夫!」って気持ちがあるので、ちょっくらがんばってみます!(笑)
CD収録曲
- ソランジュ
- 里(さとぅ)よ
- ソランジュ(Instrumental)
DVD収録内容
- ソランジュ Promotion Video
- メイキング・オブ・ソランジュPV
- 悲しくてやりきれない(ウチナーグチバージョン) Promotion Video
- ハリクヤマク ~2012.6.23「唄者」LIVE TOUR SHIBUYA Mt RAINIER HALLより
上間綾乃(うえまあやの)
1985年生まれ、沖縄県うるま市出身の女性シンガー。小学校2年生から三線を習い始め、19歳で琉球國民謡協会教師免許に合格する。2006年、自ら作詞作曲を手がけた「願い星」をCDリリース。以降は県外でも積極的なライブ活動を行っている。2012年5月、アルバム「唄者」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2013年6月19日には1stシングル「ソランジュ」を発表した。民謡で培った独特な歌い回し、豊かな表現力で多くの人の心をつかんでいる。