ナタリー PowerPush - 上間綾乃

沖縄が生んだ美しき“民の謡(タミのウタ)”の伝承者

7歳から始めた三線を通して沖縄民謡の世界にのめり込み、自らの思いを歌に乗せて届ける喜びと、沖縄の文化を伝承していく決意を胸に活動を続けるシンガー、上間綾乃。2012年のメジャーデビュー以降、その凛とした強さを秘めた歌声で多くの人々の心を激しく震わせてきた彼女が、自身初のシングル「ソランジュ」をリリースした。

ナタリー初登場となる今回は、作詞に康珍化、作曲に都志見隆を迎えて生まれた「ソランジュ」はもちろん、彼女の音楽の根幹を成す沖縄民謡への思いをじっくりと紐解いていくことにした。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 佐藤類

 
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三線と出会ったのは小学1年生

上間綾乃

──沖縄民謡をルーツとする上間さん。沖縄に住んでいると民謡に触れ合う機会は多いものなんですか?

やっぱり日常の中に民謡があふれている感じはありますね。もちろん民謡だけじゃなく、音楽自体が沖縄にはあふれていると思います。特に私の場合はおばあちゃんが三線教室に通っていたので、より身近な存在だったというか。教室に連れていってもらっては、おばあちゃんの側で民謡を聴いてました。途中で眠くなって寝たりもしてましたけど(笑)。

──その中で民謡をやりたいと思うようになったわけですか。

うん。おばあちゃんがすごく楽しそうに弾いているし、三線の音色がキレイだったので、やってみたいなって思ったんです。それが小学1年生のとき。でも、その教室の先生に「あんたはまだ小さいから、2年生になっても民謡に興味があるようなら、そのときにまたおいで」って言われて。1年間ものすごく我慢したんですよ。

──興味が冷めることはなかったわけですね。

そう。「もうなんで早くやらせてくれないんだ!」ってずっと思ってました。で、2年生になってすぐ習い始めたんですけど、その先生がすっごく褒めてくれる方だったので、それがうれしくて。1曲弾けるようになれば先生はもちろん、教室の先輩たちも、ばあちゃんも喜んでくれるので、自分にとって褒めてもらえるものを見つけることができたんだなと思ってどんどんのめり込んでいったんです。

──小学校低学年で三線を習うのはポピュラーなことなんですか?

私が通っていた教室では、私が最年少。20代も30代もいなかったですね。今ではそんなことないですけど、当時はまだお年寄りがやるもの、古臭いものっていうイメージがあったんですよ。でも私はそんなのおかまいなしでした。友達がやっていなくても、好きだから自分はこれをやるんだっていう気持ちで。

ハワイで芽生えた唄者としての使命感

──そこには沖縄の文化を大切にしたい、継承していきたいという思いもあったんですか?

三線を始めた段階では、なかったですね。ただただ楽しい、褒めてもらえてうれしいっていう気持ちだけだったので。でも、中学校1年生のときに習っていた先生に連れられてハワイに行ったことがあるんですけど、そこで伝承者である唄者(うたしゃ)として生きる使命感を覚えたんですよ。

──ハワイでどんな経験をしたんですか?

上間綾乃

ハワイには沖縄移民がたくさんいるので、そういう方に向けた大きなフェスティバルがあって。そこで歌ったんですけど、それがすごく気持ちよかったんですよね。皆さんすごく歓迎してくれたし。そうだ、知らないおじさんにチューもされました! ハワイでは一般的な挨拶なんですけど、私はまだ中1だったんでね、「父ちゃんにもこんなんされたことないのに!」とか思ったり。まあ、それは別にいいんですけど(笑)。

──あははは(笑)。そんな経験も。

で、そのフェスティバルが終わったあとに、沖縄を故郷に持つお年寄りの方がいる施設にも行って。そこでも1曲、「懐かしき故郷」っていうウチナーグチ(沖縄方言)の曲を歌ったんです。そのときに、じいちゃんやばあちゃんが涙して聴いてくれたんですよ。きっと沖縄のことを思い出したんだと思うんですけど、歌い終わったら握手した手を離さない人がいたり、立ち上がってくれる人がいたり。そういう反応がすごく衝撃的だったので、あらためて歌の持つ力を感じたというか。私が歌ってる意味はここにあるんだなって、伝承者としての使命感が芽生えたんですよね。

──そういった意識の芽生えを経験したあとは、民謡に対する向き合い方も変わりました?

今まで以上に、ちゃんと習得しようと思うようになりました。ただ師匠から受け取るのではなく、それを自分が伝えていけるようにしようと、とにかく必死でしたね。「細かいところまで教えてください」って師匠に食らいついてました。

上間綾乃

──そういう行動の裏には、ウチナーグチであったり、民謡であったりが今のままではいずれ消えていってしまうという危機感もあったりします?

危機感はすごくあります。言葉も魂を持っているから、使う人がいないといつかなくなってしまいますからね。私自身、ウチナーグチを使って歌詞を書くことはできるんですけど、話し言葉として使おうとすると、なかなか流暢には出てこないんです。だからこそ、そこはちゃんと勉強しながら、生活の一部として取り入れていかなきゃなって思うんですよね。自分の島言葉がなくなるなんて、そんな悲しいことはないですから。

1stシングル「ソランジュ」/ 2013年6月19日発売 [CD+DVD] / 1260円 / 日本コロムビア / COZA-772~3
1stシングル「ソランジュ」
CD収録曲
  1. ソランジュ
  2. 里(さとぅ)よ
  3. ソランジュ(Instrumental)
DVD収録内容
  1. ソランジュ Promotion Video
  2. メイキング・オブ・ソランジュPV
  3. 悲しくてやりきれない(ウチナーグチバージョン) Promotion Video
  4. ハリクヤマク ~2012.6.23「唄者」LIVE TOUR SHIBUYA Mt RAINIER HALLより
上間綾乃(うえまあやの)

上間綾乃

1985年生まれ、沖縄県うるま市出身の女性シンガー。小学校2年生から三線を習い始め、19歳で琉球國民謡協会教師免許に合格する。2006年、自ら作詞作曲を手がけた「願い星」をCDリリース。以降は県外でも積極的なライブ活動を行っている。2012年5月、アルバム「唄者」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2013年6月19日には1stシングル「ソランジュ」を発表した。民謡で培った独特な歌い回し、豊かな表現力で多くの人の心をつかんでいる。