まさか自分が「ベートーヴェンです」と名乗る日がくるとは
──そんな上松さんと内田さんの最新コラボ作品が、アニメ「クラシック★スターズ」です。アニメの企画原案、製作総指揮、音楽プロデュースを上松さんが担当するこの作品では、偉大なクラシック音楽家たちの“才能(可能性)”に適合した青年の物語が描かれます。そもそもどんなところからこの作品のアイデアが生まれたんですか?
上松 アイデア自体はけっこう昔からあったんですよ。クラシックの名曲って、フルコーラスで覚えているというよりは、印象的なフレーズ、パートに耳馴染みがあるものじゃないですか。ということは偉人たちの印象的なメロディを使い、再構築することで歌モノの曲を作れるんじゃないか。クラシック音楽を現代的に再定義することで、音楽が時代を超えることを証明できるんじゃないか。そんな思いが「クラ★スタ」のスタートでした。
内田 そのアイデアが面白いですよね。僕自身はクラシックに深く触れてきたわけではないけど、「クラシック★スターズ」のお話を聞いたとき、過去から今へ、そして今から未来へつながる流れを描き、届けられる作品になるんじゃないかとすごく感じました。
──内田さんは作中で“ベートーヴェン”という名の役を演じられています。
内田 まさか自分が「ベートーヴェンです」と名乗る日がくるとは(笑)。しかも元ボクサーという設定が面白いんですよ。
上松 今までの作品とは違い、今回僕は音楽だけに注力して、ストーリーや設定は金子彰史(製作指揮)をはじめとするチームに任せたんですよ。その結果、幅広い人たちに届き得る面白い仕上がりになった。俺の頭の中ではクラシックを使うという意味で固く考えてたところがあったんだけど、ちゃんと笑いの要素もたっぷり入れてくれているし。1、2話の上映会では俺自身、「この先、どうなるの⁉」って思ったからね(笑)。すごくいいバランスの作品になったから安心しました。
──上松さんがこの作品でやりたかったことは、1話目からしっかり形になっていますよね。耳馴染みのあるクラシックのフレーズに歌詞が乗り、まったく新しい歌モノの楽曲になっているという。
上松 作品の中で使われる楽曲は、「偉大な先輩だろうが、絶対負けませんよ」って気持ちで作りました(笑)。誰もが知っているであろうメロディを使わせてもらいながら、「再構築するのは僕なのでサビはいただきます」みたいな。
内田 なるほど。
上松 ベートーヴェンもモーツァルトも、ショパンもリストもみんな今は亡き先輩方なので、遠慮なく自分のメロディをサビにぶち込ませていただきました。お叱りはあの世に行ってから受けようかなと(笑)。先人たちへの多大なリスペクトを噛み締めながら楽しんで制作に臨みましたよ。
内田 アニメのエンディングで流れる「BEYOND★CLASSIC」のクレジットはすごいことになってますもんね。偉人たちの名前がズラッと並び、その中に上松さんの名前も入ってるのが激アツで(笑)。
上松 あれやりたかったんだよ。カッコよくない? 敬意を表して先輩たちの名前を上にして、一番下にそっと自分の名前を入れました(笑)。文化によっては、「クラ★スタ」でやってるようなことって確実にご法度だと思うし、面白く思わない人もきっと多いと思う。でも、そんな意見はあまり気にしていないというかね。だってさ、自分が作ったメロディを使って200年後の人が新しいものを生み出してくれたら、俺は絶対うれしいと思うんだよ。その感覚は音楽家同士じゃないとわからないものだと思う。だからね、俺はとにかくリスペクトを持ってやり切った感じ。その結果、どんな評価を受けたとしても、全部を引き受ける覚悟は持っているので。
内田 歌っている側も、上松さんの持つリスペクトの思いはめちゃくちゃ感じているので、そこはチームとしてしっかりひとつになってると思います。
「音を楽しめ」という思いはどうしても入れたかった
──「クラシック★スターズ」のオープニングを飾るのは内田さんが歌う「シンギュラリスト」です。上松さんの提供曲ですが、これはどんなイメージで作られた楽曲なんですか?
上松 ベートーヴェンとしてではなく、内田雄馬として「クラ★スタ」のオープニングを包み込むものにするために、すごく繊細にチューニングをしながら作っていきましたね。楽曲として何か大きなテーマを1つ伝える必要もあると思ったので、今回はタイトルが示すように、“特異点を作るもの”をイメージし、それを雄馬ちゃんに重ね合わせていきました。新しい歴史、新しい未来を創るときって、自分自身に問いかけることが多くなると僕は思ったので、歌詞では疑問形のフレーズをけっこう盛り込みましたね。一般的にオープニング曲に疑問形の言葉が並ぶことはあまりないんだけど。さまざまな疑問を抱きながらも未来に向かって突き進み、この作品世界の語り部になってもらいたい。そんな思いを雄馬ちゃんに託しました。
内田 新しいものを生み出していくパワーとともに、さらなる高みを感じさせ、より広い未来が見えるような歌詞になっていますよね。それは「クラシック★スターズ」という作品が持っているテーマだと思うし、同時に音楽がチャレンジの場だという意識を持っている僕にとって、音楽における内田雄馬の精神的な部分が詰め込まれた内容でもあるなと。パワフルなサウンドに乗せて、その思いをしっかり届けようと思いました。
上松 その上で、「クラ★スタ」に込めた「音を楽しめ」という思いはどうしても入れたかったところでもあって。実際、雄馬ちゃんとは音楽を通してつながり、ともに楽しめる感覚がいつもあるから。その気持ちは言葉にしておきたかったんだよね。
生まれるべくして生まれた曲になった
──ボーカルレコーディングに関してはどんな思いで臨みましたか?
内田 まず、このパワフルな楽曲を歌い切るには、どれくらいの体力が必要なんだろうと思いました(笑)。ただ、上松さんの曲はいつもそうなんですけど、やっぱり歌っていてすごく気持ちいいんですよ。メロディ的にはすごく複雑なのに、スッと歌えてしまうというか。練習をしているとき、プロデューサーには「なんか歌い慣れてるね」って言われましたから(笑)。前から知っていた曲だったかのような、自分の血に流れているかのような親和性は今回もすごく感じましたね。
上松 雄馬ちゃんに対して他人のような気がしないというのは、そういう音楽における部分での波長が合うからでもあるんだろうね。
内田 確かに。楽曲を歌いこなすという意味での闘争心はありましたけど、基本的にはずっとワクワクした気持ちでレコーディングしていましたから。
上松 今回はさ、Aメロの表現がすごいなって思ったんだよ。俺の曲はクセが強いから、それに引っ張られてどうしても強く歌いがちなんだよね。でも雄馬ちゃんらしい、ちょっと優しい表現をAメロに入れてきてくれていて。それを聴いたときに「さすが!」と思って、ワクワクした。
内田 めっちゃうれしいです! この曲はサビでバーンと盛り上がるので、Aメロはちょっとドシッと構えるような歌い方を意識しました。いい感じにハマったんじゃないかなと自分でも思いますね。
上松 うん。1曲通して、ボーカルがめっちゃカッコいいと思うよ。今回は「クラ★スタ」という作品が持つテーマやメッセージに導かれて雄馬ちゃんと一緒にやることになったんだろうなという気がするし、お互いにとって生まれるべくして生まれた曲になったんじゃないかな。
──アニメ「クラシック★スターズ」のストーリーはここからますます目が離せなくなると思います。作中に登場する音楽も含め、楽しみですね。
上松 そうですね。繰り返しになってしまうけど、忘れないでいたい「音を楽しむ」という気持ちを皆さんにもぜひ感じてもらいたいですね。人間が細胞レベルで感じる“音楽の楽しさ”を「クラ★スタ」から感じてもらうことで、観終わったときに胸のどこかに新しい何かが浮かんできてくれたらうれしいです。
内田 今の音楽のルーツにもなっているとも言えるクラシックに、新しい感性をもって触れることができる作品だと感じています。新たなものに出会える楽しさをきっと感じてもらえると思うので、難しいことは考えず、その世界に飛び込んでもらいたいですね。絶対楽しいですから。
上松 ぶっ飛んでるからね、内容が(笑)。
内田 本当に(笑)。そして、アニメのオープニングを飾らせてもらっている「シンギュラリスト」も一緒に楽しんでほしいです。この曲が皆さんの心のワクワクを熱くたぎらせる1曲になることを、心から願っております!
公演情報
YUMA UCHIDA LIVE TOUR 2025 アトリエ ~Red~
2025年7月21日(月・祝)東京都 東京国際フォーラム ホールA
YUMA UCHIDA LIVE TOUR 2025 アトリエ ~Green~
2025年8月2日(土)愛知県 岡谷鋼機名古屋公会堂
YUMA UCHIDA LIVE TOUR 2025 アトリエ ~Blue~
- 2025年8月16日(土)兵庫県 あましんアルカイックホール
- 2025年8月17日(日)兵庫県 あましんアルカイックホール
プロフィール
内田雄馬(ウチダユウマ)
2013年に声優デビューし、「呪術廻戦」「WIND BREAKER」「シャングリラ・フロンティア」「MFゴースト」など数々の人気作に出演。2019年に「第十三回 声優アワード」で主演男優賞を受賞した。2018年5月に1stシングル「NEW WORLD」でアーティストデビュー。2018年9月に東京・東京ドームで行われたライブイベント「KING SUPER LIVE 2018」で初めてライブを行った。2019年7月に1stフルアルバム「HORIZON」をリリースし、同年10月より初のライブツアー「YUMA UCHIDA 1st LIVE TOUR『OVER THE HORIZON』」を開催。2022年11月には初の東京・日本武道館公演を行った。2023年11月に3rdアルバム「Y」をリリースし、2024年4月に2度目の日本武道館公演を実施。10月に姉の内田真礼とのコラボシングル「Carnival / BIG LOVE」を発表した。2025年4月に12thシングル「シンギュラリスト」と13thシングル「ハートエイク」を同時リリース。7月から8月にかけてライブツアー「YUMA UCHIDA LIVE TOUR 2025 アトリエ」を行う。
内田雄馬 公式サイト -YUMA UCHIDA OFFICIAL WEB SITE-
内田雄馬公式アカウント (@yuma_u_official) | X
内田雄馬 (@i_am_yumauchida) | Instagram
上松範康(アゲマツノリヤス)
音楽事務所「アリア・エンターテインメント」および音楽制作ブランド「Elements Garden」代表・プロデューサー。「うたの☆プリンスさまっ♪」「戦姫絶唱シンフォギア」「ヴィジュアルプリズン」といった作品の原案、音楽プロデュースを担当。水樹奈々、宮野真守といった数々のアーティストに楽曲提供している。2025年4月より自身が企画原案、製作総指揮、音楽プロデュースするアニメ「クラシック★スターズ」が放送されている。