どんなストーリー? なぜ人気?「神之塔 -Tower of God-」の魅力を徹底紹介

TVアニメ「神之塔 -Tower of God-」第2期の放送が7月7日にスタートする。衝撃のラストを迎えた2020年放送の第1期から約4年、続編の放送を待ち望んでいた人も多いだろう。第2期で描かれるのは、原作でも人気のエピソード「王子の帰還」「工房戦」。「王子の帰還」の新たな主人公・王野成役に内田雄馬を迎え、オープニング・エンディング主題歌をNiziUが担当するという豪華な布陣で、再び塔の頂きを目指す物語が幕を開ける。

コミックナタリーでは、TVアニメ第2期を目前に控えた今だからこそ読みたい「神之塔 -Tower of God-」を紹介するコラムを展開。「神之塔」が世界規模で人気の理由に迫るとともに、世界観、TVアニメ第1期のストーリーなど、まだ「神之塔」に触れたことがない人へ向けて魅力を発信する。

文 / 岸野恵加

「神之塔 -Tower of God- 王子の帰還」PV

「神之塔」入門 ~どんなストーリー?なぜ人気?~

物語の舞台は、“頂上へ到達すると欲しいものが何でも手に入る”と言われる「神之塔」。そこへ向かった少女・ラヘルを追いかけ、主人公のよるが数々の試練に挑んでいく冒険ファンタジーだ。

──「神之塔」のあらすじを最もシンプルに説明するならば、このような内容になる。しかし、今作の面白さや多くの人を惹きつける理由を数行のセンテンスで説明するのは、とても難しい。本稿を通じて未見の方々に少しでもそれらが伝わることを祈りつつ、順に綴っていこう。

左から主人公の夜、彼が塔を登る理由のすべてである少女・ラヘル。

左から主人公の夜、彼が塔を登る理由のすべてである少女・ラヘル。

原作はSIUが2010年から連載している韓国発のwebtoon。複数言語に翻訳され、グローバルに絶大な人気を誇る作品だ。日本では2018年よりLINEマンガで連載されている。アニメ「神之塔-Tower of God-」の第1期は、2020年4月から全13話で放送。2023年7月にはアプリゲーム「神之塔:NEW WORLD」も配信開始し、売上1500万ドルを突破するという大ヒットを記録している。

作中の「神之塔」は塔という名称ながら、実際には宇宙のような空間概念であり、外塔と内塔、その間の中間地帯に分かれている。塔の住民の中から選ばれた“選別者”たちが登るのは内塔で、各階にはさらに上階に登る資格を得るための試験が用意されている。試験の難易度はとても高く、命を落とすケースもある過酷さ。広大な草原や、転落したら致命傷を負いかねないほどの高さに設置された円形ステージなど、バトルロイヤルのフィールドはさまざまだ。いわゆる一般的な塔の中のような閉鎖空間を想像していると、驚くかもしれない。

フィールドはもちろん試験内容もさまざま。戦闘で勝ち残るバトルロイヤルや鬼ごっこ、グループで協力をしてミッションをこなすものまで、単純な戦闘力だけでは塔を登っていくことはできない。

フィールドはもちろん試験内容もさまざま。戦闘で勝ち残るバトルロイヤルや鬼ごっこ、グループで協力をしてミッションをこなすものまで、単純な戦闘力だけでは塔を登っていくことはできない。

今作が多くの人を惹きつける要因のひとつが、予想を覆され続けるストーリー展開だ。敵だと思われた人物に窮地を救われたり、味方と思いきや驚くようなタイミングで裏切られたり、命を賭して戦った相手同士に強固な絆が生まれたり、死んだと思っていたキャラクターが驚きの再登場を果たしたり……伏線が何重にも張り巡らされ、少しでも目を離すとついていけなくなるほどのスピード感で、濃密な展開が続く。

クン・アゲロ・アグネス(右)。夜が信頼を置く友人で、頭のキレる策士。彼の策略がたびたび視聴者を驚かせる。

クン・アゲロ・アグネス(右)。夜が信頼を置く友人で、頭のキレる策士。彼の策略がたびたび視聴者を驚かせる。

アナク・ザハード。アニメ第1期では、伝説の武器「13月シリーズ」の1つ「緑の四月」を扱い物語序盤から高い戦闘力を見せていた。彼女の出自もまた驚きをもって明かされる。

アナク・ザハード。アニメ第1期では、伝説の武器「13月シリーズ」の1つ「緑の四月」を扱い物語序盤から高い戦闘力を見せていた。彼女の出自もまた驚きをもって明かされる。

主人公の夜が謎に包まれた少年であり、塔についての知識が皆無という点も、視聴者の没入感を高める。自分のすべてであった少女・ラヘルに会いたいという一心だけで、夜はひたむきに塔を登っていく。本作は世界観がとても複雑で、膨大な設定が詰め込まれているのだが、夜が外の世界から突如現れた“非選別者”であり、塔の中のルールを何も知らないがゆえに、視聴者も置いてきぼりにはされない。夜と共に謎ばかりの世界についてゼロから一緒に知り、先の読めない展開にハラハラとさせられているうちに、気づけば夢中で観ていた……という人も少なくないはずだ。

何も知らないままラヘルを追い塔を登り始めた夜。試験を乗り越えるにつれ、表情もどこか勇ましくなっていく。

何も知らないままラヘルを追い塔を登り始めた夜。試験を乗り越えるにつれ、表情もどこか勇ましくなっていく。

そして個性豊かなキャラクターたちも大きな魅力。「神之塔」の登場キャラクターは、いわゆる「ヒロインっぽい」「マスコットキャラクターっぽい」というような、見慣れた型に当てはめられる人物が限りなく少ない。ワニのような姿をしたラークや、トカゲのような緑の肌と尻尾を持つアナク、寝ることが好きで常に布団にくるまったラウレなど、ビジュアル面もとてもユニークで、さらに見た目から受けるイメージとは裏腹な内面を持っていることもしばしば。登場キャラクターはとても多いが、それぞれが持つ背景や塔を登る理由がしっかり描かれているので、各キャラクターへの愛着が募っていく。

授業中も、白熱した戦闘のときも布団に包まり続けるラウレ。ふざけた見た目に反し、高い洞察力を持つ。ときには、枕を人質(?)に働かされることも。

授業中も、白熱した戦闘のときも布団に包まり続けるラウレ。ふざけた見た目に反し、高い洞察力を持つ。ときには、枕を人質(?)に働かされることも。

夜、クンと固い絆を結ぶ誇り高き戦士・ラーク。怒りっぽく乱暴な性格だが、それが窮地を救うことも。クンの出すチョコバーが大好き。

夜、クンと固い絆を結ぶ誇り高き戦士・ラーク。怒りっぽく乱暴な性格だが、それが窮地を救うことも。クンの出すチョコバーが大好き。

迫力のバトルや重厚感のあるストーリーが軸となっている作品ではあるが、ギャグシーンも見どころのひとつ。シリアスな展開の中でも、ラークがチョコバーをバクバクと食べたり、シビスが周囲の実力の高さに慌てたり、クンがキレのいいツッコミを繰り出したりすることで、緊張感が絶妙なタイミングで緩み、物語にメリハリが生み出される。

仲間が厳しい試験に挑む裏でチョコバーを爆食いするラークたち。

仲間が厳しい試験に挑む裏でチョコバーを爆食いするラークたち。

さらに夜と、彼の周囲の選別者たちの間に次第に芽生えていく友情と絆は、物語を動かす大事なファクターだ。エリート家系出身のクンは他人を躊躇なく切り捨てる冷徹さを持つが、夜と出会ってからは彼の純真さに胸を打たれ、周囲の仲間たちとも深い関係性を築いていく。一方で、夜がその存在を心の拠り所にしていたラヘルは、第1期の終盤で驚きの行動を取る。夜が絶望の淵に追いやられたところで、第1期は衝撃のラストを迎えた。

塔を登る中で再び出会うことができた夜とラヘル。しかし、アニメ第1期では“衝撃のラスト”と呼ぶにふさわしい、驚きの展開が待っていた。

塔を登る中で再び出会うことができた夜とラヘル。しかし、アニメ第1期では“衝撃のラスト”と呼ぶにふさわしい、驚きの展開が待っていた。

第2期で描かれる人気エピソード「王子の帰還」「工房戦」とは?

原作の連載は開始から14年を超えた今も継続しており、すでに600話を超えている。第1期でアニメ化されたのは、その第78話まで。アニメ第1期でも濃密な物語が描かれたが、実はまだまだ「神之塔」ワールドの序章だったのだ。第2期でアニメ化される範囲では、「神之塔」の世界観がより深く描かれ、さらに壮大な物語が展開されていく。

第2期でアニメ化されるのは、原作の80話~117話にあたる「王子の帰還」と、118話~190話にあたる「工房戦」のエピソード。アニメ化の範囲が発表されると、SNSで「この瞬間を待ってた」「工房戦をついにアニメで見られる!」といったような感想が多く見受けられたことからも、人気が高いエピソードであることがうかがえる。

TVアニメ「神之塔 -Tower of God-」第2期のイメージビジュアル。手前から新たなメインキャラクターとなる王野成とジュ・ビオレ・グレイス。

TVアニメ「神之塔 -Tower of God-」第2期のイメージビジュアル。手前から新たなメインキャラクターとなる王野成とジュ・ビオレ・グレイス。

第2期の舞台となるのは、第1期の6年後。第1期とはメインキャラクターが異なり、金髪の青年・王野おうじなるが主人公となる。王野は何度も試験に脱落するも、「塔の王になる」と豪語して挑戦を続ける熱血な男。狭き門である20階の試験になかなか合格できず、高利貸しから金を借りて浪人生を続けている。その20階で王野は、圧倒的な強さを持つ寡黙な長髪の美青年、ジュ・ビオレ・グレイスと出会う。ビオレはある目的のため、試験を受け続けていた。正反対な2人が行動を共にするようになり、どのような共闘を見せるのか、ぜひ本編を観て確かめてほしい。

アニメ第1期に登場したどのキャラクターとも被らない性格をした王野成。塔の王であるザハードの紋章が入った指輪を持っている。

アニメ第1期に登場したどのキャラクターとも被らない性格をした王野成。塔の王であるザハードの紋章が入った指輪を持っている。

王野とビオレのほか、第2期でも個性豊かなキャラクターが新たに多数登場。エリート家系出身で炎を操る蓮梨花や、両親に会うために塔を登る幼き少女・マナ、戦闘に興味のないメガネの女性・カナ、高飛車な闇金経営者の息子・プリンス、巨漢の男・虎助など、一見バラバラな人物が一堂に会し、やがてかけがえのない仲間となっていく。

アニメ第2期から新たに登場するキャラクターたち。左から王野成、マナ、カナ、梨花、プリンス、虎助。

アニメ第2期から新たに登場するキャラクターたち。左から王野成、マナ、カナ、梨花、プリンス、虎助。

また夜の運命を大きく揺さぶったラヘルも、第2期に登場。彼女は夜への仕打ちを明かさぬまま、クンや仲間たちと25階で暮らしているが、クンだけはラヘルが心の底で何を考えているのかを、常に気にしている様子で……。さらに「工房戦」は、「戦」というだけあってアクションが連続する“激アツ”な展開の嵐だ。線と線が繋がる伏線回収の瞬間にも、強いカタルシスを覚えるはず。第1期からさらにパワーアップした迫力のバトル描写や、映像美にも注目したい。

ちなみに夜役の市川太一は、第1期放送時の2020年に公開されたコミックナタリーの特集記事(参照:「神之塔」特集 市川太一インタビュー)にて、「第2部では夜も成長して登場するので、その違いを出せるよう、今回のアニメでは少し幼めの芝居にしました」と、先の演技プランまでを見据えて演じたことを明かしていた。第2期の夜は、ラヘルにどこか執着していたような第1期の姿からぐんと成長した姿を見せてくれる。青年になった夜を市川がどのように表現するのか、注目したいところだ。

夜役の市川太一は、アニメ第2期でジュ・ビオレ・グレイス役も務める。

夜役の市川太一は、アニメ第2期でジュ・ビオレ・グレイス役も務める。

アニメのスタッフは第2期から新たに参加する面々も多い中、シリーズ構成はアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」や「なむあみだ仏っ! -蓮台 UTENA-」などで知られ、最近ではNHK総合の連続テレビ小説「虎に翼」の脚本で大きな注目を浴びている吉田恵里香が続投。第1期でも複雑な原作を巧みに構成していたが、第2期でもその手腕に期待が高まる。また幻想的な劇伴で映像に独特のムードを生み出していたKevin Penkinも、引き続き音楽を担当する。

NiziUが新たな顔を見せる主題歌

第1期では、オープニング、エンディング主題歌をともに、韓国の8人組ボーイズグループStray Kidsが担当した。オープニングテーマ「TOP」では情熱と覇気、エンディングテーマ「SLUMP」では挫折と恐怖が表現されている。オープニングとエンディングを同じアーティストが担当することで、統一感のある雰囲気が生み出されていた。

そのStray Kidsの所属事務所の後輩である9人組ガールズグループ・NiziUが、第2期の主題歌を担当する。オープニングテーマ「RISE UP」は、ミドルテンポの楽曲。ダークな曲調ながら、未来を切り開くために塔を登っていく登場人物の姿を歌っている。これまでは明るくキュートな楽曲が多かったNiziUだが、今作では新たな表現の扉を開いた。メンバーも「新しいNiziUを感じることができる作品」と語り、意欲を見せている。

NiziU

NiziU

ちなみにNiziUを生んだオーディションプロジェクト「Nizi Project」がクライマックスを迎え、NiziUが結成されたのは、ちょうど「神之塔-Tower of God-」第1期がテレビ放送されていた2020年6月。そこから4年、グループとしてめざましい躍進を遂げてきた彼女たちの姿は、物語の中で成長を重ねたキャラクターたちにどこか重なる。またStray Kids、NiziUはともに、サバイバルプログラムを経て結成されたグループだ。シビアな生き残りを経験してきたという点では、塔の中で過酷な環境に置かれた夜たちに思いを馳せやすいだろう。

「RISE UP」期間生産限定盤では、NiziUのメンバーがアニメ絵柄で描き下ろされた。

「RISE UP」期間生産限定盤では、NiziUのメンバーがアニメ絵柄で描き下ろされた。

Stray Kidsは破竹の勢いで活躍を見せ、2023年には、4作連続で米ビルボードのメインチャート「ビルボード200」にて1位を記録するという快挙を達成。さらに日本では4大ドームツアーを開催して34万人を動員し、「NHK紅白歌合戦」にも初出場を果たした。彼らの人気は韓国のみにとどまらず、世界中に広がっている。昨年韓国デビューを果たしたNiziUも、「RISE UP」とエンディングテーマ「BELIEVE」を携えて、さらに世界に羽ばたいていくかもしれない。

「神之塔」ビジュアル

「神之塔」ビジュアル

原作「神之塔」はLINEマンガで連載中

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