ナタリー PowerPush - ユニコーン×宇宙兄弟
阿部義晴×小山宙哉「Feel So Moon」対談
ショックでマンガが描けなくなった
小山 「宇宙兄弟」をイメージするために、普段からiPodに勝手にイメージソング集を入れているんですよ。そこにユニコーンの曲がたくさん入っています。「晴天ナリ」とか「HELLO」とか「サラウンド」「ライジングボール」……。中学時代、友達がユニコーンの下敷きを持っていて。皆さんの髪の毛がズバッと逆立っていた頃のですね。それでまず存在を知りました。高校になってからは、友達が周りでみんな聴いていて、「『すばらしい日々』は名曲だ!」とか言って盛り上がってました。それで僕も借りて聴いてみて、それからずっと今に至るという。
阿部 それはそれは。今日はほかのメンバーがいなくて申し訳ないです。
小山 いえ、本当はこのあいだ僕が、レコーディングにお邪魔させてもらう予定だったんですよね。すごく楽しみにしていたんですけど、インフルエンザにかかってしまって行けなくなってしまった。残念でもう……。
阿部 あのレコーディングの日ね。いやあ楽しかった、すごく(笑)。弦楽器の録音もあって、きれいな人ばかり揃っていたのに。
小山 ああーそれは残念(笑)。行けなかったことがショックで、そのあとしばらくマンガも描けなくなってました(笑)。本当に描けないんで、どうしようかと思いました。でも、ちょうどできあがった曲を届けていただいて、それを聴いたらテンションがぐっと上がって、なんとかまた描けるようになりました。ありがとうございます(笑)。
阿部 まあ確かに現場を見るのって面白いですよね。何かが生み出されるところっていうのはね。
小山 レコーディングのときは、その場でアイデアが出たりもするんですか。
阿部 出ますね。ただ、それを採用するかどうかは別だけど。今回はわりと早いうちから具体的に音を決めていたので、それに向かって進んでいくという作業が主で、突拍子もない方向には行かなかったけど。普段は「さあ曲作ろう」と、あえてまっさらの状態で始めたりすることもあって、そういうときはかなりいろんな方向に発想が飛んでいきますね。最初と最後で全然違うことになったりもする。
ライブのオープニングナンバーにもぴったり
小山 今回、歌詞の入っていないデモ音源も初めて聴かせていただいたんですが、そこに阿部さんの鼻歌というか、英語っぽい声が入っていますよね。あれはどういう意味なんですか。
阿部 ああ、適当ですよ。適当に歌っておくんですけど、子音は結構あの段階でイメージを決めているんです。メロディの中で、ここは少し下げてほしいとか、ここは明るく発音してほしいとかっていうのはあるんですよね。それをなんとなく歌っておく。歌詞を入れるとき、それに沿った形にするとハマりやすいんですよ。
小山 なるほどそういうものなんですね。すごい。
阿部 いやあ、マンガのストーリーを考えていくのも相当にすごいことだと思うけど。作品の中には、いろんな人が登場するじゃないですか。若い人もお年寄りも、男も女も。ああいうの、どうするんですか。おじいさんとか、そういう立場になったことない人のことも描かないといけない。なんでセリフが出てくるのか不思議でしょうがない。
小山 僕の場合、そのキャラクターになりきって想像してみるんですよ。だから結局は全部自分なのかなとも思うんですけど。よくマンガに出てくるおじいちゃんって「~じゃ」と話したりしますよね。でも僕がおじいちゃんだったらそうは言わないだろうなとか、そういうことを気にしながらセリフにしていますね。
阿部 そのあたりがね、読んでいる側としては不思議なんですよ。話の展開も、先々まで決まっていたりするものなんですか。
小山 それがあんまり決まってないんですよね。ずいぶん先のほうにイメージしてるシーンは少しありますけど、ほとんど毎回、今回どうしようって一から考えてます。
阿部 僕は普段マンガはあまり読まないんだけど、「宇宙兄弟」はこの先どうなるのか、楽しみにしてますからね。曲のほうも皆さんに楽しんで聴いてもらえたらいい。イントロから盛り上がれる曲だから、ライブのオープニングナンバーにもぴったりかもしれない。
小山 それ、いいですね。オープニングで聴けたらすごくうれしい。ぜひライブに聴きに行きたいです。
阿部 アニメのオンエアも楽しみですしね。あとはそうだなあ、いっそPVにも出演してもらいましょうか? 今日もこんな宇宙飛行士っぽい格好しているくらいだからね(笑)。
ユニコーン
1986年に広島で結成。翌1987年にアルバム「BOOM」でメジャーデビューを果たす。メンバーは奥田民生(Vo, G)、EBI(B)、手島いさむ(G)、川西幸一(Dr)、阿部義晴(Key)の5人。全員が楽曲制作に携わりボーカルを取るフレキシブルなスタイルで、独自の路線を突き進む。「大迷惑」「働く男」「雪が降る町」「すばらしい日々」など数々の名曲を生み出すも、1993年に惜しまれつつ解散。
その後はそれぞれソロ活動を展開していたが、2009年に16年ぶりとなるまさかの再始動。2月にシングル「WAO!」とアルバム「シャンブル」を発表し、3月より全国ツアー「蘇える勤労」を開催した。また2011年は干支にちなみ「兎に角(とにかく)働こう」と年始より宣言。5月にフルアルバム「Z」をリリースし、直後より全国ツアー「ユニコーンツアー2011 ユニコーンがやって来る zzz...」を実施。さらにツアー中の8月にミニアルバム「ZII」を発表する、精力的な活動ぶりを見せつけた。2012年最初の新曲は、アニメ「宇宙兄弟」の主題歌として書き下ろされた「Feel So Moon」。
小山宙哉(こやまちゅうや)
1978年京都生まれ。初めての持ち込み作品「ジジジイ」で第14回漫画オープン審査委員賞(わたせせいぞう賞)を受賞。「ハルジャン」「ジジジイ-GGG-」などのヒットを経て、2007年12月から「モーニング」で代表作「宇宙兄弟」の連載をスタートさせる。最新刊は2012年3月23日に刊行の「宇宙兄弟」第17巻。また2012年4月から読売テレビ・日本テレビ系でアニメ「宇宙兄弟」が放送。5月5日からは実写映画「宇宙兄弟」が全国東宝系劇場で公開される。