人間関係ってややこしい
──この曲は峯田さんとやることが決まってから作ったんですか?
谷中 もちろん。ベースの川上(つよし)が峯田くんになりきって作曲したんです。峯田くんの歌い回しを意識して、歌い出しのメロディは何パターンも考えたって。
茂木 でもその曲が降りてきたのが峯田くんとリハーサルする前日で。
──ギリギリですね。
茂木 ほかにも候補曲はいろいろセッションしてたけど、とにかくベストなものを探してギリギリまで新曲出してたんだよね。で、そこから1週間後にレコーディングだったから、メロディが出てきたその日のリハーサルで構成をほぼ決めて、リズムアレンジを考えて、持ち帰った夜中に谷中さんが詞を思い付くっていう。
谷中 リハーサル終わった夜中の3時か4時くらいに歌詞書いて、みんなにLINEで送ったんだよね。
──この歌詞はどんなきっかけで生まれたんですか?
谷中 今回は「ちえのわ」っていう題名を決めてそこから書き始めましたね。最初に題名から書いたの初めてじゃないかな。
──峯田さんをイメージしたら「ちえのわ」というモチーフが出てきた?
谷中 そうですね。なんかこう人間関係って、絆って言ったらきれいに聞こえるけど、やっぱりややこしいもんじゃないですか。でもややこしいけど愛おしくって、その感じを「ちえのわ」って言葉で表せるなと思ったんです。
──ややこしい人間関係を絡み合う知恵の輪になぞらえて。
谷中 あと俺にとっては銀杏BOYZの「骨」っていう曲がすごく大きくて。あの曲は骨太な感じと言うか「でっかいなこの歌!」って感じがするじゃないですか。だから今回は「ああいう歌詞が自分でも書けるかな」って自問自答しながら書きました。
知恵の輪は離して終わりじゃない
──峯田さんは完成した曲を聴いていかがですか?
峯田 完璧! 最高です!
茂木 あはは、よかった(笑)。
峯田 スカパラの皆さんの演奏の中で歌うと、やっぱり銀杏BOYZとはまったく違うスイッチが入るんで、その気持ちよさはすごかったですね。歌詞も僕のことを思ってくれて意識しながら書いてくれたんだと思うんですけど、でも自分からは絶対出てこない言葉なので。しかも僕、恋愛のこともプライベートのことも谷中さんになんにも言ってないのに、この内容ですからね。
──と言うのは?
峯田 今の自分のプライベートな気持ちが書いてあるんです。実は僕、1年くらい前にお別れした人がいて、もうずっと会ってなくて。でもやっぱり消えてないんですよ、会ってはいないんだけど今もめちゃくちゃつながってるんです。だからこの歌詞もらって歌って、さすがにその夜はキツかったです。
谷中 あはは(笑)。
峯田 なんかね、知恵の輪って最初くっ付いてるんですって。それをこうやってがんばってカチンって離すじゃないですか。それで「やった! 終わり!」じゃないんですって。そこからさらにもとに戻して、それでやっと知恵の輪っていうゲームなんですって。
谷中 次の人がまた遊べる状態に戻すんだよね。
峯田 だからすごいですよね。1回苦労して離れて、それをまた苦労してもとに戻すっていう。ホントにすごい歌詞だなって思いました。過ぎていくものだったりなくなっていくものだったり、そのときそのときで見たら「終わった」って思うけど、でも時間が経つとまた出会ったりまたくっ付いたり……そういうことをなんかここ最近思うんですよね。
「東京はずっと工事中だね」でゾクゾクした
──谷中さんは峯田さんをイメージして歌詞を書いたとのことですが、作詞はスムーズでしたか?
谷中 誰かのために書くほうが自由に妄想が広がって楽しかったりするんですよね。自分で自分の歌う歌詞書くのってけっこうつらいときない?
峯田 あります、あります。
谷中 自分で自分を背負わなきゃいけないからね。だから僕は女の人が歌う曲の歌詞はすらすら書けるんです。キャラクターを設定したりすると、そのキャラクターが自由に暴れてくれるんで、そういう歌詞を書くのは楽しいですよね。峯田くんが歌う歌詞ならホント無限に書けそうな気がする。
峯田 今回、1行目を見せてもらったときの衝撃は忘れられないです。
──「東京はずっと 工事中だね / 迷惑お掛けしますとか 謝ってばかり」というフレーズですね。
峯田 その1行の情報量がすごいですよね。しかもそれを俺に歌わせようっていうのが。ちょっとゾクゾクしましたね。
──冒頭にあのフレーズがあることによって、その後の歌詞が全部リアリティを持って立ち上がってくるように思います。
谷中 そういうことですよね。だからその最初のフレーズでキャラクターが完全に姿を表して、その人の背景も見えるし、表情も歴史も、今その人が抱えてる問題まで見える。東京は工事中で謝ってばかりだなって言いながら、でもそんな自分自身も人に謝ってばかりかもなって。峯田くんが歌ってくれたことでそういう複雑な部分まで全部見える感じになって、曲が強くなったなって思います。
次のページ »
ドラムが叫ばせた「ベイベー!」
- 東京スカパラダイスオーケストラ「ちえのわ feat.峯田和伸」
- 2018年2月21日発売 / cutting edge
-
[CD+DVD] 2484円
CTCR-40392/B -
[CD] 1080円
CTCR-40393
- CD収録曲
-
- ちえのわ feat.峯田和伸
- Samurai Dreamers(São Paulo mix) feat.TAKUMA(10-FEET)+EMICIDA
- Rain Again~縦書きの雨~ Live at DRUM LOGOS(from 2017 TOUR「涙後体前」)
- ちえのわ(Instrumental)
- DVD収録内容
-
- ちえのわ feat.峯田和伸(Music Video)
- LATIN AMERICA TOUR 2017"NO BORDERS"ライブドキュメンタリー(後編)