ナタリー PowerPush - 東京スカパラダイスオーケストラ

予定調和一切なし! ニューアルバム「欲望」を徹底解剖

毎日がスタジオとホテルの往復

──そうした熱い思いを抱きつつヨーロッパへ飛んだわけですが、レコーディングはいかがでしたか?

川上つよし(B)

川上つよし 行ったこともないスタジオを押さえてそこで一気に録りきっちゃおうってことだったんだけど、実際スタジオに行ってみたら……あれ?って。基本的に向こうの人ってそんなにちゃんとしてなくて(笑)。だからもう最初の日はスタッフと一緒にイチから配線したりして。でもとにかく録りきるって決めてるから、もう必死でやりましたよね。正直、メンバーもスタッフも全員ピリピリしてました。

──その必死さが音にも反映されてる気がします。

GAMO ロンドンとバルセロナでレコーディングするってこと自体が、すごくいいモチベーションになりましたよね。スケジュールは大変だったけどそう思えたっていう。

──海外レコーディングって何がいいんですか?

加藤 何がいいんでしょうね?

一同 あはは(笑)。

加藤 まあ、とりあえず僕は合宿したかったんですよ。そこですごく短期間に濃厚な感じでバッと録りきるみたいなイメージがあった。で、今このキャリアで合宿しようって言って都内のスタジオに行ってもテンションがそこまで上がらない(笑)。

GAMO 確かにこの次どうなっちゃうのか、なんかもうわけわかんないとこに行ってみたいっていう感じはありました。

──レコーディングのスケジュールは実際どんな感じだったんですか?

谷中敦(Baritone sax)

谷中 毎日スタジオとホテルの往復ですよね(笑)。ロンドンのスタジオでアシスタントの男の子が「普通は海外からレコーディングに来たらみんなでパブとか行くけど、(スカパラは)行かないの?」って。

──あはは(笑)。

谷中 「なんでこの人たち夜中までずっとレコーディングしてるんだろう」みたいな感じですよ。毎日午前中にスタジオ入って夜中までやってましたから、パブも閉まっちゃうんですよ。

──新人バンドみたいながむしゃらさですね。

加藤 でもなんか、そういうことがやりたかったんでしょうね。

北原 まあね、時間がたっぷりあればいいものができるかっていうと……ね(笑)。それだけじゃないんです。「この限られた時間でやりましょう!」ってときに火事場の馬鹿力?そういうものがやっぱり出ますよね。

オリンピックの高揚感

──ロンドンレコーディングはちょうどオリンピック期間中だったそうですが、オリンピックは観られました?

写真左から北原雅彦(Tb)、大森はじめ(Per)

北原 1日なんとか空けてスタジアムに男子サッカーの日本戦を観に行きました。

NARGO そのためにがんばってちょっとスケジュール巻いたりして(笑)。

沖祐市 チケット取れるかどうかわかんなかったのにとりあえず行ったんだよね。すごい数の人がチケット売り場に並んでて、買えるかどうかわかんなくて。で、川上とかマネージャーとか何人かで並んでね。

川上 あんときはすっごいドキドキしてた。

 それで、僕ら後ろでちょっと待ってたら、川上が「取れた!」「やったー!」って(笑)。

川上 そこから列車に乗って1時間くらいかけて行ったんだよね。

NARGO ここまでやってもし観れなかったらどうする?って思いながら。

谷中 スタジアムがコベントリーという街にあったんで、THE SPECIALSの故郷に行けるからいいか、みたいのはちょっとありましたけど。

──意外と皆さんエンジョイしてますね。

谷中 でもオフは1日だけですけどね。その1日の話をこんなに楽しそうに……。

一同 あはは(笑)。

北原 あ、でもその日も午前中はリハーサルやってたから。

谷中 じゃあ午後だけだ(笑)。

写真左から加藤隆志(G)、沖祐市(Key)

NARGO 1週間くらいはずっとホテルとスタジオの往復で。

 それ以外はかなりタイトでしたね。機材トラブルもあって時間もなくなっちゃってるし。

谷中 「食事の時間です」っていうのなかったもんね。昼も夜もあいまいで。

──そんな状況でつらくはなかったですか?

NARGO いや、でもオリンピックが開催されてるっていうことで、街自体がすごい上昇気流にあるというか。ロンドンのその場所にいるっていうこと自体、すごい高揚感があるんですよ。スタジオの外にはなかなか出られなかったですけど、やっぱり世界中の気が集まってるというか。街自体がグワーッと高まってるっていうのは感じましたね。

ニューアルバム「欲望」2012年11月14日発売 / cutting edge

CD収録曲
  1. 黄昏を遊ぶ猫
    [作詞:谷中敦 / 作曲:川上つよし / ボーカル:中納良恵]
  2. 非常線突破
    [作曲:NARGO]
  3. Wild Cat
    [作曲:沖祐市]
  4. 大したヤツ
    [作曲:GAMO]
  5. Midnight Buddy
    [作曲:茂木欣一 / アジテーター:デニス・ボヴェル]
  6. Rushin'
    [作曲:川上つよし]
  7. (there's no) King Of The Ants
    [作詞:谷中敦 / 作曲:NARGO / ボーカル:谷中敦、デニス・ボヴェル]
  8. Old Grand Dad
    [作曲:沖祐市]
  9. 修行
    [作曲:谷中敦]
  10. The Other Side Of The Moon
    [作曲:加藤隆志]
  11. さすらいForever
    [作曲:北原雅彦]
  12. SKAN-CAN
    [作曲:ジャック・オッフェンバック]
  13. 太陽と心臓
    [作詞:谷中敦 / 作曲:沖祐市 / ボーカル:ハナレグミ]
東京スカパラダイスオーケストラ
(とうきょうすかぱらだいすおーけすとら)

1980年代後半結成。NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor sax)、谷中敦(Baritone sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Per)、茂木欣一(Dr)からなる9人組バンド。1989年11月にインディーズで黄色いアナログ「TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA」をリリースし、その本格的なサウンドと独自のスタイルが話題を集める。1990年4月にシングル「MONSTER ROCK」、アルバム「スカパラ登場」でメジャーデビュー。以降、オリジナルメンバーの逝去や脱退といった幾多の困難を乗り越え、2008年7月より現在の編成となる。スカをルーツに多彩なジャンルを取り込んだ豊かな音楽性は国内外のオーディエンスから高い評価を獲得。国内はもとより、ヨーロッパを中心に世界各国でライブを行い、日本を代表するライブバンドとしてワールドワイドな活躍を続けている。


2012年11月13日更新