TRUE|みんなに“強さ”を贈る歌

TRUEが1月13日にニューシングル「Storyteller」をリリースした。

シングルの表題曲はテレビアニメ「転生したらスライムだった件 第2期」のオープニング主題歌。TRUEは第1期エンディング主題歌「Another colony」に引き続き、「転スラ」に携わることとなった。「Storyteller」はアニメの世界観を彩る歌であると同時に、TRUEからファンへの思いが強く反映された楽曲だという。音楽ナタリーではTRUEにインタビューを行い、楽曲に込めた思いからコロナ禍に考えていたこと、アーティスト活動における変化まで話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝 撮影 / 星野耕作

マスク越しでもお客さんの表情がよく見えた

──TRUEさんはつい先日、12月13日に京都で開催された「京 Premium Live -2020-」に出演されましたが、有観客でライブを行うのはいつ以来になりますか?(※本インタビューは2020年12月中旬に実施)

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1月に川崎で行われた「響け!ユーフォニアム」の定期演奏会(「響け!ユーフォニアム」公式吹奏楽コンサート ~北宇治高校吹奏楽部 第4回定期演奏会~)以来なので、11カ月ぶりになりますね。

──やはりオンラインのイベントなどとは……。

違いますね。ひさしぶりに、すごく緊張しました。ありがたいことに近年はライブやイベントに出演する機会をたくさんいただけて、もちろんライブは常に緊張感を持って臨んではいるんですけど、必要以上に緊張することもなく、むしろ緊張している自分も楽しめていたんです。でも、そんなの吹き飛ぶくらいに緊張して、もう腕が震えちゃって。

──そんなに。

ただ、ステージに上がって客席を見たら、緊張もなくなって。マスク越しでもお客さんの表情がよく見えて、1曲目に「WILL」(2020年9月発売の15thシングル)という「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の主題歌を歌ったんですけど、皆さんがこの曲を待っていてくださったのがわかったんです。そこからは、とにかく1つひとつの言葉を通して伝えられるものを全部お伝えしなきゃという気持ちで歌いました。MCも事前に用意していた内容ではなく、その場で感じていることをお話しできましたし、いい再会が果たせました。

──依然として先行きは不透明ではありますが、制限がかかった状態であってもお客さんを入れてライブができるようになってきたというのは、いい兆しでではありますね。

いろいろと制約がある中でどれだけ楽しめるか、私たちもお客さんもお互いに探り探りだったとは思うんですけど、よりお互いを知る機会にもなるんじゃないかなって。アニソンの現場って、一般的なコンサート以上にお客さんが声援をくださって、みんなで一緒にステージを作っている感覚がすごく強いし、私もその声援に助けられていたんですけど、今は声が出せないじゃないですか。でも、声が出せないからこそお互いにギュッと注目するというか、普段伝わらない細かい心の動きまで手に取るようにわかるんですよ。なので、1月17日に中野サンプラザホールでワンマンライブを控えていますけど、不安よりも「絶対に楽しめる」という自信のほうが、今は勝っているかもしれません。

──観客サイドとしても「この場を守らねば」みたいな意識が働いていると思います。

本当にそうですよね。皆さんすごく協力してくださるので、私も安心してステージに立つことができました。リスクは常にありますけど、みんなでマナーを守れば安全に楽しむことができると思います。

みんなからもらった強さを、みんなのために使いたい

──2020年は誰にとっても特殊な1年だったわけですが、その中でニューシングル「Storyteller」も制作されたんですか?

実は表題曲の「Storyteller」とカップリング1曲目の「黎明」は、2019年に制作がスタートしていたので、ステイホーム期間に入る前に完成していました。

──そうだったんですね。ではその表題曲「Storyteller」のお話からお聞きしますが、この曲はアニメ「転生したらスライムだった件 第2期」オープニング主題歌ということで、TRUEさんもご自身のTwitterで「私はアニメの世界に転生してきたようなもの」と。うまいことおっしゃいますね。

ありがとうございます(笑)。私の場合は異世界というよりも、憧れていた世界に飛び込んだという感覚だったんですけど、それでも主人公のリムルと重なる部分が多いと思っていて。1人ぼっちの状態から少しずつスタッフさんとの関係を築いていって、小さなライブハウスから始まって徐々にお客さん=仲間も増えていくっていう。まるでリムルがテンペストを作ったみたいに。

──TRUEさんは「転スラ」第1期のエンディング主題歌「Another colony」(2018年11月発売の13thシングル)に引き続き主題歌を担当するということもあり、この「Storyteller」に対する思い入れは……。

めちゃくちゃ強いです。というのも、2019年は私にとってデビュー5周年イヤーだったんですけど、とにかくライブをやり続けて皆さんに直接歌を届ける1年にしようと決めて、実際そうなったんです。ただ、5周年という節目を迎えたこともあって、自分の中で今後に向けての葛藤や悩みもあった時期で。そんなときに、1年を通してお客さんからたくさん“強さ”をもらったんですね。結果、私は6年前からは考えられないぐらい強いボーカリストになったという実感があるんですけど、それはお客さんが私を強くしてくれたということなんだなと気付いて。だったら「みんなからもらった強さを、今使わなかったらなんの意味があるんだ」「今度はみんなのために私の強さを使いたい」と思って「Storyteller」を制作しました。

真正面から受け止めてもらいたい

──同じくTwitterで、「Storyteller」は「私自身の歌」であり「私からみんなへ贈る唄」とも発言していましたね。

私は、本当に憧れだけを抱えてこの世界に転生してきたんですけど、「響け!ユーフォニアム」と出会って「DREAM SOLISTER」(2015年4月発売の4thシングル)を作ったとき、改めて私自身、音楽を奏でる楽しさを教えてもらって。その頃から「自分自身の歌を作らなければ、私に主題歌を委ねてくれている作品に対しても失礼だ」と思うようになって、作り方が変化していったんです。そして今は、誰よりも作品を理解して、作品に対して誠実であることは大前提なんですけれども、そのうえで作品の先にいる人たちにメッセージを伝えるための歌を作ろうと心がけています。

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──雑な感想になってしまいますが、「Storyteller」はシンプルにスカッとする曲ですよね。

無条件に背中をポンと押せるような強さがある楽曲だと思うから、みんなにも真正面から受け止めていただきたいです。そして、みんなが受け止めたものをまた私に言葉で返してほしい。オフラインでもオンラインでも、どんな手段でもいいから。そうやって思いを重ね合っていくことで、さらに新しいものを生み出していきたいなって思います。

──そのやりとり、いいですね。

ファンの皆さんもすごく素直に気持ちをぶつけてくださるんですよ。例えばライブでは、さっきまで涙を流して聴いてくださっていた方が、盛り上がるパートになったら思い切り拳を突き上げてくれたり。それこそ今お話しした「DREAM SOLISTER」では泣き笑いしながら一緒に手を振ってくれる。お互いに感情のすべてをぶつけ合える場になっているので、中野サンプラザで再会できるのが本当に楽しみです。

──ちなみに「Storyteller」というワードはどこから出てきたんですか?

私の人生は自分で描いていかなければいけないし、それは「転スラ」を応援してくださっている皆さんや、私を支えてくださっている皆さんにとってもきっとそうだと思います。突き進んでいく強さみたいなものを表現したくて、初めから“自分が自分の人生の語り部だ”というテーマで作ろうと決めていたんですが、「Storyteller」というキーワードは初めから浮かんでいました。あと、これは記事にできるかどうかちょっとわからないんですけど……。

──お聞きするだけお聞きしていいですか?

「転スラ」第2期のエンディング主題歌をSTEREO DIVE FOUNDATION(R・O・Nのサウンドメイキングプロジェクト)さんが担当されるんですけど、R・O・Nさんが作られた楽曲のタイトルも、当初「Storyteller」だったみたいなんです。

──すごい偶然ですね。

「そんなことあるんだ!?」って私も驚きました。曲調も歌詞の世界観も、もっと言えばアーティストとしてのスタンスもまったく違う私たちなのに、まったく同じタイトルを付けてしまうって、それだけ「転スラ」という作品が強いテーマ性を持っているということなんだなと思いました。