飲む前はなんかパフォーマンス低かったですよね(笑)
──岡村靖幸さんとBase Ball Bear小出祐介さんのラジオ番組「PREMIUM ONE」に先日ゲスト出演してきたそうで。収録はどうだったんですか?
最近どこに行ってもダメ人間的なテンプレを求められてるところがあったんで、最初そういう感じで行こうとしたら、わりと思ったより真剣に話をしてくれたんです。で、ちょっと感動しちゃいました、なんか。こんなに俺のことを考えてくれてる……って。
──あはは(笑)。こんな俺に興味を持って。
そうそうそう!(飲酒効果で、このあたりから声のボリュームが大きくなる)
──テンプレ対応はもう慣れてるんですか?
そうですね。学生のときから、自分と外界の合うところを探してきたんで、その結果ダメ人間っていうのを押し出して自虐でいくっていう。わりと日常的にそうしてますね。
──それを思うと歌詞がああなのも納得しますね。
確かにダメ人間系の歌詞が多いですね。僕がカッコいいこと言っても意味ないし。
──カッコいいこと言いたい部分はあるんですか?
うーん、今はもう想像できないです。カッコいいこと言って聴衆がこうワーってなってる感じが。前はもっと想像してた気がするんですけど。
──ワーっとしないお客さんを育てましたからね。
そうですね(笑)。ワーっとしないのにライブに来てくれてありがたいなって感じですね。
──小出さんはずっと吉田さんのことを絶賛してますよね。
なんか、絶賛してくれてましたね。歌詞について、人にこうでしょって言われてもそこまで深く考えてないよって場合もあるんですけど、小出さんが言ってくれたことはわりと実際思ってたことが多くて、「あ、ほぼ100%伝わってるな」って感じで。
──ちなみにラジオに出るときも基本飲むんですか?
まあ軽くビール1杯くらいですけど。1回プロデューサーの人に本気でキレられたことがあったんで気を付けてはいます。
──テレビのときはどうしてるんですか?
テレビのときもちょっと飲んでます。でも、こういうことを言ったら昔気質のプロデューサーが呼んでくれなくなるかもしれないですね(笑)。
──まあ地上波ゴールデンとかだったらアレですけど、深夜なら大丈夫だと思いますよ。
飲まずにいられない感じではないですけど(笑)、飲んだほうがパフォーマンスを発揮できるんじゃないかなっていう。あくまでも自分ができる仕事をちゃんとやるために飲んでるっていう感じです。
──わかりますよ。だって今も、飲んだら明らかに声のボリュームが上がったじゃないですか。
ああ、そうですね。さっきまではなんかパフォーマンス低かったですよね。あはは(笑)。でも、飲むと思ってもないこと言っちゃうときがあって次の日後悔することも多い。それが怖いです。
──それはサービスなんですか? それとも心の底に何か眠ってるやつ?
うーん。まあサービスもありますし……でも心のどこかで思ってはいるんでしょうね。許されるラインっていうか、人が引くラインを超えちゃう感じで調子に乗っちゃう。今日はそこまで、泥酔はしないですけど(笑)。
──「共感百景」でのあのすばらしいパフォーマンスも基本はお酒の力?
お酒の力だけではないですよ。僕の力もある(笑)。
──もちろんベースにはそれがありながら、実力を発揮させるには何かがないとスイッチが押せない。
2回目(※2016年1月1日にテレビ東京系で放送された特番。吉田は東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを終え、そのまま番組収録に駆け付けた)に出たときは、ライブ直後の収録だったので、ホントにかなり飲んでたし全然緊張しなかったですね。1回目はビール1杯だけなんで、実際はあんまり酔ってなかったと思うんですけど、気持ちですよね。プラシーボ的な。
──精神安定剤に近いと言うか、飲むことで「もうこれで大丈夫、テンションが上がった」と思い込む。
そうですね。お酒を飲むと変身できるんじゃないかっていう希望みたいなものがあるんですよね、昔から。
──ライブ前はどれくらい飲むんですか?
ライブ前は250mlくらいのコンビニに売ってる焼酎を1つくらいですね。そこまでめちゃめちゃ酔うわけじゃないですけど、気持ち的に「あ、今オレ高まってるな」って思えるくらい。最初はウイスキーの小瓶を2本開けて飲んでたんですけど、体がマジで壊れそうになったので。ちょうどいい量を探った結果、今はそれくらいになってます。
──体を壊しそうになったんですか?
2日酔いがずっと抜けなかったり、道で寝ちゃったりとか。今は若いからいいけど、10年くらい経ったらたぶん肝臓がどうにかなるなと思って、もう抑えました。そこまで飲んでもいい効果は生まれないなっていうのはわかったし。
たぶん異常なんですよ。体質がおかしいんです
──そろそろアルバムの話をちゃんとしましょうか。自分の中で好きな曲はどれなんですか?
聴いてて一番胸がざわざわしないのが「野球選手になるために」。
──「ざわざわしない」っていうのはどういうことですか?
録り終わってしばらくの間は自分で聴くと、自分の歌とか歌詞とかちょっと気持ち悪いなって感じるんですけど。「野球選手になるために」は冷静に聴けるっていう。
──それ以外はざわざわしちゃう、と。
慣れないんですよね。ちょっと寝かして、距離を置いて聴きたいっていう。みんなたぶん、自分のCDも聴いてると思うんですけど。
──時間が経てば聴けるようになるんですか?
そうですね。最近、知人の店に行ったら3枚目のCDを勝手に流されたことがあって、「いいじゃんこのCD」って思いました。発売したばかりの頃は「ここをこうしたい」とか思ってたんですけど、1年半くらい経つと意外といいっていう。
──つまりパブリシティでいろいろ自分が話さなきゃいけない時期が一番話せないっていう(笑)。
あはは(笑)。あー、そうですね。でも今回のアルバムは、録ったのが1年ぐらい前なんです。その間ミックスとかがあんま進んでなくて。
──じゃあ、もうそれなりに距離もできてるはずじゃないですか。
まあそうなんですけど。ミックスを待ってる間あんまり聴いてなかったんで、まだちょっとキツいです。たぶん異常なんですよ。体質がおかしいんです。でも……小出さんとかがいいって言ってくれたんで、少しずつ落ち着いてきました。
──大喜利とかのほうがまだ自画自賛できる?
大喜利はシンプルなんで、「この答えはよかった」って気持ちになることはあります。自分の声とか肉体的なものが関わってないからかもしれないですけど。
──曲はもっとややこしいんですね。
自分に絡み付いてるみたいな感じですね……インタビューでそういうこと言うのも、ちょっとよくないですよね。
──まあ、らしくていいじゃないですか。
「この曲は最高だよ」って言ってほしいですよね、聴いてる人は。
──ミュージシャンは皆さん言いますよね、「今回が最高傑作です!」って。
たぶんみんな本当にそう思ってるんでしょうけど。僕はちょっとダメなんですよね。
──その距離感も面白いですよ。そんなにざわざわしてるんだ、みたいな。
そうですよね。ライブだと、曲を聴くのはその1日だけだからまだいいんですけど、CDはずっと聴かれることになるから。怖いっすよね。
──まあ、何回も聴くのが前提ですもんね。
そうなんですよ。そこに向き合うとプレッシャーがあって冷静に聴けない。
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今は売れなくても、10年後に聴いてダサくなんない音楽
- トリプルファイヤー「FIRE」
- 2017年11月2日発売 / アクティブの会
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[CD]
2160円/ WAVE-04
- 収録曲
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- 中一からやり直したい
- 人生を変える言葉
- はずれのヘルス嬢
- 野球選手になるために
- 有名な病気
- 漁師の手
- コインとキノコ
- 銀行に行った日
- じじいの同窓会
- 人生を変えた言葉
- 普通は走り出す
- Mac DeMarco Japan Tour 2018
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2018年1月22日(月)東京都 LIQUIDROOM
2018年1月23日(火)大阪府 梅田CLUB QUATTRO<出演者>
マック・デマルコ / トリプルファイヤー(サポートアクト)
- 「CAMPFIRE vol.1」
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2018年2月9日(金)東京都 TSUTAYA O-nest
<出演者>
トリプルファイヤー / 柴田聡子inFIRE
- トリプルファイヤー
- 吉田靖直(Vo)、鳥居真道(G)、山本慶幸(B)、大垣翔(Dr)からなるロックバンド。2006年に早稲田大学の音楽サークルで結成され、2010年に鳥居が加入して現在の編成になる。2012年5月初のアルバム「エキサイティングフラッシュ」をリリース。ソリッドな演奏とシュールな歌詞を組み合わせた今までにない作風で注目を集め、2014年2月発売の「スキルアップ」、2015年9月発売の「エピタフ」が話題作となる。2014年公開の今泉力哉監督映画「サッドティー」では劇伴を担当し、2016年には紗倉まな&小島みなみによるユニット・おとといフライデーにシングル表題曲「私ほとんどスカイフィッシュ」を提供。2017年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」への出演を果たした。吉田はテレビ番組へもたびたび出演しており、2017年10月にはテレビ朝日系「タモリ倶楽部」にて全編にわたって吉田を特集。2018年1月より日本テレビでスタートするジャニーズWESTの藤井流星&濱田崇裕主演ドラマ「卒業バカメンタリー」へのレギュラー出演も決定している。最新作は2017年11月発売のアルバム「FIRE」。