ナタリー PowerPush - TOWA TEI
平熱の日常に最高の喜びを。自然体グッドミュージック誕生
3400円のフリースソックス
——年齢を重ねていくと、ロハスとかスローライフとか言い出す人も多いですけど。
はいはい(笑)。
——テイさんはそういう感じでもないですよね。
そうですねえ。ロハスって最近聞かないですね。最近はなんだろう、あの、ガールズバーとかああいう新しいものにもすごく興味がありますし。
——(笑)。
だからそう、かわいい女の子とかぜんぜん好きだし。面倒くさいんで面倒なことはしないですけど(笑)。ブランドもモノによっては好きだし。ファッション興味ないって言ってるけど、スタイルってものには興味あるし。あとなんだろう。冷え性なんで、どうやったら足暖かくなるかな、とか。
——あ、ブログで見ましたよ。すごく暖かそうな室内履きを買ってましたよね。
そうそうそう(笑)。でもあれ買った次の次の日にネット見たらもう売ってなくてね。たぶん今期の型じゃないんですよ。それがショックですごく焦って、軽井沢のショッピングモール行ってぜんぶ買いましたね。Mサイズ。大人買いっつうんですか?
——(笑)。
売ってるの見つけてすっごい嬉しくて。まあそんな何足もないですけど、在庫4、5足買って。1足3400円だったんですよ。だからまあ1万円ちょいじゃないですか。僕は必要なものは普段あんまり値段とか考えないで買っちゃうんですけど、そのときになんとなく「これもし34000円だったら買うかな?」って考えて、これだったら買うなあと思ったんです。
——なるほど(笑)。
あー、ぜんぜん買うわ、みたいな。で、これが34万だったら買うかなって。それもやっぱり買うなって思ったの。
——はい。
340万はうーん微妙。3400万なら絶対買わねえって思ったんですよ。そういうことを考えるのが楽しかったりしてね。
——面白いですね。
なんか自分にとってのお金の価値とかそういうこと。だからブランドっていうのも、工場同じで、たぶん50円くらいでできてるものをさ、5万円とかで売ってるわけですよ。アートもそうでしょ。ピロピロっとノリで描いてくれた絵が、すぐ100万円とかになっちゃうわけだから。1万円で売ってたアンディ・ウォーホールの版画ももう300万くらいじゃないですか。なんかそういう錬金術みたいなことにもすごく興味ある。だから僕にとっての、その今期売ってないL.L.Beanのフリース部屋履き、フリースソックスっつーんですか? 出会えてよかったって思っちゃったなあ。
「FLASH」が姉で「BIG FUN」が弟
——まあ、でも3400円のフリースソックスも素敵ですけど、このCD(初回限定盤)も3300円出せば誰でも買うことができるわけで、それもいい話ですよね。
でしょ? それはホント書いちゃって。10回くらい。
——(笑)。
コピペして10回くらい書いて、どんどんクレーム受けちゃってください(笑)。だから僕はそういうことは考えてますよ。あの、原盤が何%で何万で仕事受けてとかはあんまり考えないけどね。ざっくりと制作費があったら、よし、ぜんぶバリー・マッギーに渡しちゃえとにかく、みたいなことは思う。
——そういえば今回も「FLASH」同様ジャケットアートはバリー・マッギーですよね。内容的にも「FLASH」と地続きな部分はあるんでしょうか?
作っていて「FLASH」と今回の間に大きく変わった自分もいるなって思ったし、なんか気分的に近いところもあるな、という感じですね。作りはぜんぜん違うけど。ただその「Future Listening!」「Sound Museum」「Last Century Modern」「FLASH」っていう流れを考えると、そこには1枚ごとにすごく、パンパンっと変わるエレメントがあったんですよね。ドラムンベースにすごい影響を受けつつ自分なりに消化したい部分とか、みんなラウンジの人だと思ってるんだけど気分はもうバッドボーイプロダクションみたいな感じだったりとか。これまではそういうズレっていうか、パブリックイメージと自分のやりたいこととのズレみたいな意識があったんだけど、今回はそれがぜんぜんなくて。21世紀に入ってから「FLASH」と「BIG FUN」を作ったけど、「FLASH」がお姉ちゃんで「BIG FUN」が弟っていうイメージなんです。
——姉弟ですか。
「FLASH」作ってるときは別に男も女もなかったんだけど、今から思うとお姉さんという感じですね。
——なるほど。
2枚のジャケットを描いてもらったバリー・マッギーは、僕が世界で一番好きなアーティストなんです。だから、さっきロハスに行かないって言ったのは、ロハス以外にも世の中面白いことがあるからなんですよ。L.L.Beanのフリースソックスとか、バリー・マッギーとか、六本木・西麻布界隈のガールズバーのシステムとかね。そういうことを面白いなあと思って、また曲を作る。エネルギー交換ですね。音楽を聴いて音楽を作ることもあるし、もちろん他の音楽家から受ける刺激もすごいし。単純に聴いてて気持ちよくて寝ちゃうとか。それで次の日フレッシュに自分の音楽をやるとかね。そういう毎日を面白がりながら、またいい音楽を作っていきたいですね。
CD収録曲
- Y.O.R. feat. MADEMOISELLE YULIA & VERBAL
- Taste of You feat. Taprikk Sweezee
- Out of My Addiction of Love feat. Miho Hatori & Peggy Honeywell
- Lyricist feat. MEG
- Twinkle Twinkle Little Star feat. Mitsuko Koike
- A.O.R. feat. Lina Ohta
- Ch. Galaxy
- Mind Wall feat.Miho Hatori
- Siesta
- All
初回限定盤DVD収録内容
ビデオクリップ3曲収録
TOWA TEI(DJ/音楽プロデューサー)
1990年にDeee-Liteのメンバーとして、アルバム「ワールド・クリーク」で全米デビュー。世界各国で大絶賛される。1994年から活動の拠点を日本に置き、アルバム「Future Listening!」でソロデビュー。2007年には自身の音楽プロダクションを設立し、レーベル立ち上げにも参加。自身が主催するイベント「MOTIVATION」での定期的なDJ活動のほか、アーティストや製品に対するサウンドプロデュースなど、ますます磨きをかけた豊かなセンスで、DJやトラックメイカー、プロデューサーとして多彩な活動を行っている。2009年2月には5枚目のオリジナルアルバム「BIG FUN」を発表。