ナタリー PowerPush - Toshl
洗脳のサブテキスト
X JAPAN脱退
──それでも「DAHLIA」は完成して、リリースされました。
はい。そうです。
──しかしバンドは、その後すぐ解散に向かっていきます。本でも書かれていますが、まずはToshlさんがメンバーに脱退を告げる。
ええ。
──この場面、話しているときのHIDEさんの表情や、YOSHIKIさんが黙ってギターを弾きながら話を聞いている様子などが克明に描かれていました。
YOSHIKIが自分のシグネチャーモデルのギターを手に持って……あの薔薇の。それでピックでアルペジオを弾いているっていう(笑)。
──そういう部分からもわかる通り、この本はX JAPANのファンが読んでも「そうだったんだ」「そんなやりとりがあったんだ」って思うような部分が多いと感じました。
そうかもしれませんね。以前YOSHIKIはYOSHIKIの視点で「YOSHIKI/佳樹」という本を出していますけど、今回は僕の視点。実はこの本の執筆にあたり、完成したものの4倍くらいの量の原稿を書いているんです。自分の生い立ちやX JAPAN結成のことまでぶわーっと書いて。でも「洗脳」というタイトルに決めましたので、「洗脳」っていうところに絞って、X JAPANのストーリーブック的な内容だったり、僕のアーティストブック的な内容にならないようにしていったんです。だからこの本で書かれているX JAPANの描写も、洗脳に関係ある部分ですね。僕がひどい暴力を受けている中でHIDEのお葬式に行く場面とか、Xのラストコンサートの場面とか……それらはコントロール下にいた頃の話だったので書いてありますけど、それ以外は全部抜いて。
──膨大な量の原稿から人生で最もつらかったであろう十何年間を抜き出して、ぎゅっと凝縮させた。
そうですね。こういう本を書くのは初めてだったので、とにかく書く、書いてみるって感じで。だから縮める作業のほうが大変でした。
Toshlってまだ洗脳されているんじゃないの?
──そんな思いまでしてこの本を出す意図というのは、先ほどToshlさんがおっしゃっていた通り「これ以上被害者を増やしたくない」という思いのほかに、改めて「完全に洗脳から抜けたんだぞ」と世の中に伝える意図もあるのかなと感じました。
ええ、中には「Toshlってまだ洗脳されているんじゃないの?」とか「どうなのかな?」って思っていらっしゃるファンの方もたくさんいると思います(笑)。だから応援してくださっている方々に「ちゃんと抜けたんだ」って報告する意味もありますね。けじめとして。
──なるほど。
それと、この本に出てくるMASAYAやホームオブハートだけじゃなく、同じような団体の被害に遭っている人もたくさんいるんです。大きな団体じゃなくても少人数から搾取していくものもありますし、弁護士の先生からもそういう話をたくさん聞きます。そういう人たちってなぜ被害に遭ってしまうのかというと、やっぱり不安なんですよね。自分の未来にビジョンや希望が持てなかったりして。そんな人たちに対して「どうすれば引っかからないで人生の選択をしていけるのか」っていうメッセージを自分の経験をもとに伝えられたらなって。よく「いろいろと経験したほうがいい」とかっていう話もありますけど、経験しないほうがいいこともたくさんあるんですよ(笑)。
──確かにそうかもしれませんね。
取り返しのつかないことになってしまうんで。不安な心を持った人がこの本で僕の経験を知ることで、詐欺や洗脳の被害に陥らなければいいなあと思っています。
──Toshlさんが言うところの“お父様”のように、自身の心の重しとなる存在を見つけて、道を踏み外さないように生きていける人が増えればいいと。
ええ。そうですね。
──この本を読んで、ToshlさんにとってYOSHIKIさんもそういう存在なんじゃないかと思いました。
そうですね。やっぱりYOSHIKIとは腐れ縁と言いますか、幼稚園の頃からずっと一緒にいるものですから……いろんなことがありました。そんな仲間って、自分の人生の中でもあまりないなあって。こういう関係も珍しいものでしょうし。
──Toshlさんが破産手続きをする直前、YOSHIKIさんが「実は俺もいろいろあって大変だったんだ……」とToshlさんに語りかけるシーンが印象的でした。本ではYOSHIKIさんの「いろいろ」は明かされていませんが、あの会話に2人の関係性を見たような気がして。
あのときにYOSHIKIがそういう状態じゃなかったら、X JAPANの活動再開もなかったかもしれないですね。僕は完全にXから離れたかもしれない。それって本当に人生のタイミングが合ったような感じで、YOSHIKIもいろいろなことがあって、僕もいろいろなことがあって……お互いがそういう体験をしてちょっと経験を積んだから、次へ進もうっていう。あのときはなぜかそういうタイミングだったんです。
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内容
- 父のこと
- X JAPAN脱退と解散
- HIDEの死
- ホームオブハートとの出会い
- 巧妙な勧誘
- 執拗な暴力と罵倒による洗脳
- 「洗脳騒動」
- 呪縛と搾取
- YOSHIKIとの10年ぶりの出会い
- X JAPANの再結成
- 自己破産、衝撃の真実
- 脱会の決意と戦いの日々
- 奇跡の出会い
- そして、今……
- 配信シングル「未来をEYEしてる」 / 2014年6月18日発売
- 「未来をEYEしてる」
- 下記サイトにて配信中!
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- OTOTOY
- Amazon.co.jp
- mora
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Toshl SUMMER LIVE「ロート製薬PRESENTS Vロート50th ANNIVERSARY CRYSTAL ROCK NIGHT SUMMER LIVE IN DAIBA 未来をEYEしてるゼ」
2014年8月25日(月)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
<CRYSTAL ROCK KNIGHTS>
Toshl(Vo) / Shinya(Dr / DIR EN GREY) / 圭(G / バロック) / 結生(G / MERRY) / 明徳(B / lynch.) / Kate(Cho / My Fairytale)/ 小瀧俊治(Piano)
「洗脳~地獄の12年からの生還~」刊行記念
Toshlサイン本お渡し&握手会
2014年8月10日(日)
大阪府 紀伊國屋書店 グランフロント大阪店 店内特設会場
START 14:30
Toshl(トシ)
1989年にX JAPAN(当時はX名義)のボーカリストとしてメジャーデビュー。1992年にシングル「made in HEAVEN」と同名のアルバムをリリースし、ソロでの活動もスタートさせる。1997年にX JAPANを脱退し、ソロアーティストとしての活動を本格化させることを表明した。2007年にX JAPANが再結成を発表すると、2008年には東京ドームで3日間にわたる再結成ライブ「攻撃再開 2008 I.V.~破滅に向かって~」を成功させた。翌年には体調不良から一時活動を休止するも、2010年に名前をToshlと改め本格的に活動を再開。以降、X JAPANの活動とソロワークを並行して行っている。2014年6月にはソロシングル「未来をEYEしてる」を配信リリース。7月には、MASAYAが主宰するホームオブハートからマインドコントロールを受けていたという12年間の日々をつづった著書「洗脳~地獄の12年からの生還~」を上梓した。