ナタリー PowerPush - Toshl
洗脳のサブテキスト
MCもコントロールされていたX JAPAN再結成ライブ
──ちょっと話が変わってしまうんですけど、僕は2000年頃に地元のスーパーでToshlさんがライブをしているのを観たことがあって、さらに2008年のX JAPANの再結成ライブを東京ドームで観ています。そして先日行われたソロライブ(参照:Toshl、力強い歌声響かせた七夕の夜)も拝見したんですけど、ライブのMCの雰囲気が以前とは全然違っていると思いました。
はははは(笑)。そうですか。
──ちなみに2000年頃に僕が観たスーパーでのライブは、本の中でホームオブハートの資金を捻出するために全国を回っていたと書いている「詩旅」の一環だったんでしょうか?
地元はどこですか?
──山形です。
じゃあまさにそうですね、ちなみに山形のスーパー覚えてます(笑)。本にも書いていますが、「詩旅」と2008年のX JAPANの再結成ライブでのMCでは、MASAYAとホームオブハートに言わされていること以外は吐けなかったんです。コントロールされている中でしたから。
──ライブで話す言葉をも指示されていたという部分、読んで驚きました。ちなみに先日のライブのMCは「詩旅」やX JAPANの再結成ライブのときよりも親しみやすい雰囲気でした。
現在では本当に気楽に……気楽にというか、まったくフリーな状態でライブに臨んでいます。8月25日にもソロのライブが決まっていますけど、今は単純に1回1回のコンサートを大事にしようと思っていて。あんまり先が長くないというか、何度も何度もできないって思っているんです。
──それはどういう意味ですか?
歌を歌うって作業が何度もできないなって思っているんですね。歳もとっていますし、自分の限界も見えていますし。
──限界が見えているんですか?
そうですね。歌に関して言えばですけど。「まだまだやれるぞ」って気持ちもありますが、衰えてきている部分もありますから。それで歌うことを1回1回大切にするようになったし、あとはお客さんとのコミュニケーションだったり、こういうインタビューの機会も限られてくるじゃないですか。だからその場その場をより楽しく、気持ちがよくなったり、活力になったり、そういうものにしたいなって。肩肘張っているわけじゃないんですけど、そういう思いが深くなっていっています。
“お父様”との出会い
──この本はToshlさんの実のお父さんについて書かれたプロローグから始まりますが、そのあとは裏切りや暴力や搾取などの厳しい描写が続いていきます。そして壮絶な日々を経て、Toshlさんが本の中で「お父様」と呼ぶ人物と出会い、マインドコントロールの日々から救われていくという流れで。
そうですね。
──あれだけの裏切りや搾取を体験しながら、それでもまたToshlさんが人間を信じ、人間に救われていくという構造が興味深かったです。
今でも日本に帰ったらそのお父様の元を訪ねているんです。お父様の影響で僕もお茶を始めたりして(笑)。その方は元々警察官でいらっしゃったんです。
──会ったときは、どんな話をしているんですか?
お父様の昔のことなど。僕は最期に立ち会うこともできない状態で実父を亡くしてしまっているんですけど、男の子って、父親が自分の若い頃の話なんかをしてくれたら「親父もこうだったんだ」ってパワーがわいてくるところがあると思うんです。たとえダメ親父であっても。子供ってやっぱり将来のこと不安だし、寂しいですからね。
──Toshlさんもその方から、本当の父子の会話のような力を得ていることがうかがえます。
お父様に出会ったことで、心にドンッと大きな重しを置いてもらった。人生の指針というか、1つ中心ができた感じがするというか。
──本からも伝わってきました。
先日、北海道の上川町という所で講演会をする機会があったんです。普段からお世話になっている三國(清三)シェフのご紹介で町長さんにお会いしたら、中高生の前で講演会をしてくださいって言われて。上川町はスキージャンプの高梨沙羅ちゃんの地元なんですけど。
──子供たちにどんな話をしたんですか?
実父とのことや、お父様との出会いなんかについて話してきて。それで講演会後に子供たちから感想文を300人分くらいいただいたんですけど、その中に「私もお父様みたいな人になりたいです」という感想がけっこうあって驚きました。僕、「Forever Love」とか歌ったりもしたんですけど……歌の感想はほとんど書いていなくて(笑)。
──子供たちの心には“お父様”の話が響いたんでしょうね。
「自分も大人になったら、人を助けられる大人になりたいです」っていう感想もあって。僕自身が勇気をもらいました。僕は深い傷を負った人間ですけど、こういうことをやると誰かの力になれるんだなって。自分の経験を伝える……これからはそんな活動を主軸にしていきたいなって思っているんです。
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内容
- 父のこと
- X JAPAN脱退と解散
- HIDEの死
- ホームオブハートとの出会い
- 巧妙な勧誘
- 執拗な暴力と罵倒による洗脳
- 「洗脳騒動」
- 呪縛と搾取
- YOSHIKIとの10年ぶりの出会い
- X JAPANの再結成
- 自己破産、衝撃の真実
- 脱会の決意と戦いの日々
- 奇跡の出会い
- そして、今……
- 配信シングル「未来をEYEしてる」 / 2014年6月18日発売
- 「未来をEYEしてる」
- 下記サイトにて配信中!
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- OTOTOY
- Amazon.co.jp
- mora
- KKBOX
Toshl SUMMER LIVE「ロート製薬PRESENTS Vロート50th ANNIVERSARY CRYSTAL ROCK NIGHT SUMMER LIVE IN DAIBA 未来をEYEしてるゼ」
2014年8月25日(月)
東京都 Zepp DiverCity TOKYO
<CRYSTAL ROCK KNIGHTS>
Toshl(Vo) / Shinya(Dr / DIR EN GREY) / 圭(G / バロック) / 結生(G / MERRY) / 明徳(B / lynch.) / Kate(Cho / My Fairytale)/ 小瀧俊治(Piano)
「洗脳~地獄の12年からの生還~」刊行記念
Toshlサイン本お渡し&握手会
2014年8月10日(日)
大阪府 紀伊國屋書店 グランフロント大阪店 店内特設会場
START 14:30
Toshl(トシ)
1989年にX JAPAN(当時はX名義)のボーカリストとしてメジャーデビュー。1992年にシングル「made in HEAVEN」と同名のアルバムをリリースし、ソロでの活動もスタートさせる。1997年にX JAPANを脱退し、ソロアーティストとしての活動を本格化させることを表明した。2007年にX JAPANが再結成を発表すると、2008年には東京ドームで3日間にわたる再結成ライブ「攻撃再開 2008 I.V.~破滅に向かって~」を成功させた。翌年には体調不良から一時活動を休止するも、2010年に名前をToshlと改め本格的に活動を再開。以降、X JAPANの活動とソロワークを並行して行っている。2014年6月にはソロシングル「未来をEYEしてる」を配信リリース。7月には、MASAYAが主宰するホームオブハートからマインドコントロールを受けていたという12年間の日々をつづった著書「洗脳~地獄の12年からの生還~」を上梓した。