THE ORAL CIGARETTES山中拓也が「トップガン マーヴェリック」に感じる“人生”とロマン、主題歌や劇伴の魅力も解説 (2/2)

「トップガン マーヴェリック」に見る“人生”

──今作はマーヴェリックが教官という立場で若きトップガンたちと向き合うという構図の物語ですが、THE ORAL CIGARETTESも結成から10年を超えて、ロックシーンを牽引する存在として見られる場面も多々あると思います。そんな中で、自分たちより下の世代との関わり方などを意識することはありますか?

めちゃくちゃ考えますね。あえてストーリーになぞらえるわけじゃないですけど、マーヴェリックはもともとかなり尖っているというか、とにかく怖いもの知らずなキャラクターじゃないですか。僕らも若い頃は、右も左もわからずに、噛み付きたいところに噛み付いて、言いたいことを言って炎上して(笑)、ということばかりやっていたんですよ。でも、やっぱりある程度人生経験を積んでいくうちに少し考え方が変わるというか。自分たちで「これが武器だ」と思っていても、年月を重ねるごとにその武器の説得力が増していないと、バンドとして生き残っていくことができないと思っていて。今は自分たちより若いバンドが俺らに噛み付いてきたり、シーンに噛み付いていたりしていても、「なんや」と思うんじゃなくて、「こいつらのことをどういうふうに次のロックシーンにつなげていこうか」と考えるようにしていますね。

──そういう意識の変化は、バンドとして活動を重ねてきたことで芽生えてきたのでしょうか。

それもあると思いますけど、周りの人と信頼関係を結べるようになったことが大きい気がします。若い頃はとにかく上を見ながら突っ走っていたんですけど、気付いたらフェスでトリを任せていただいたり、重要な場面で俺らのことを起用していただけたりするようになっていて。そういう立ち位置にいられるのは、周りから期待されているからこそだと思うんですよ。であれば一旦周囲を見渡して、周りが今どういう状況なのか、一度立ち止まって考えないといけないなと。そして自分たちがその周りの状況にレスポンスしていかないといけない。そういうことはコロナ禍になって以降、より考えさせられていますね。「日本のロックはダサい」と思われないように、「ただただカッコいいものを追求していきましょう」というマインドを先輩後輩関係なく、共有するのが大事なのかなって。今はそういう意識を周りと一緒に持つことに力を注いでいます。

山中拓也
山中拓也

──先ほど、「トップガン」が“マーヴェリックの話”から“マーヴェリックとその周りの人たちの話”になったというお話がありましたけど、山中さんもまさにそれと近い状況にいるんですね。

そうですね。それこそが人生なのかもしれないですね(笑)。そういう意味でも、この作品は単純にアクションがすごいというだけではなくて、観る側の人生と重ね合わせることができる映画になっているなと思います。

──マーヴェリックと新世代トップガンたちの対立も描かれていますけど、山中さんはどちらかと言うとマーヴェリックに感情移入して観ていた?

僕は完全にマーヴェリック目線で観てました。「こういうやつおんなあ」とか、「こいつとペア組みたくないとか言ってるけど、最終的に仲よくなるんやろ」とか(笑)。そういうことって、僕らみたいな特殊な環境にいる人に限らず社会のいろんなところで起きていることだと思うので、かなり共感性の高い映画でもあるのかなと思います。

山中が抱く映画音楽へのリスペクト

──先ほど「Danger Zone」のお話も出てきましたけど、「トップガン」と言えば音楽も重要なポイントの1つですよね。アーティストである山中さんから見て、「トップガン」の音楽の魅力はどういったところにあると思いますか?

僕らの世代は特にそうだと思うんですけど、「Danger Zone」は映画を観ていなくてもどこかで必ず聴いたことがあるんですよね。子供の頃に運動会なんかでも流れてましたし。全体的にアメリカ西海岸のロックがよく使われているんですけど、ちょうど僕らの世代があまり触れていない音楽というか、どちらかと言うと親世代が触れてきた音楽だと思うんですよ。そういう音楽は、自分も歳を重ねていくうちにどんどん魅力的に思えてきて、前作を観返したときに改めてそのよさに気付いたんですね。それでサントラを聴いてみたら、マーヴェリックたちがビーチバレーをするシーンで流れている音楽がめちゃくちゃよくて。音楽単体でもすごく楽しめる映画やなと思います。

──レディー・ガガが書き下ろした主題歌「Hold My Hand」についてはいかがですか?

やっぱりすごいな、わかってるなあ、と思いましたね。最後に曲が流れるタイミングも完璧で。前作のエンディングテーマとはまったく違う雰囲気で、でも「トップガン」にぴったり合った曲を仕上げてきたのは、シンプルに「すごいなあ」と思いました。

──「トップガン」に限らず、映画と音楽が密接に関わった作品は数多くあると思うんですが、映画音楽というものにはどういった印象を持たれていますか?

あえてこういう言い方をしますけど、映画音楽ってずるいんですよね(笑)。僕も好きな映画のサントラをよく聴くんですけど、楽曲自体に映画のストーリーや映像がくっついた状態で脳に認識されるというか。映像のイメージと重なるから普通に音楽を聴くよりもエモーションを高められるんですよ。映画の中で出会えたからこそ、その曲を何回もリピートして聴いてしまう、というのが自分自身も多々あって。そういう意味では、ずるいなと思います(笑)。

──作り手の目線から見るといかがでしょうか。

普通の音楽と劇伴を作るのではまったく別の技能が必要だと思いますね。やっぱり映画ありきのものだから、どのシーンのどのタイミングで流れるかを常に考えて作らないといけないだろうし。物語の起承転結や起伏に合わせて曲を作るのは、かなり難しいことだろうなと思います。僕はデヴィッド・リンチの映画が好きなんですけど、30秒くらいの音楽でも、そのシーンの空気感をより盛り立てられるように計算され尽くしているんですよね。そういうのは、普段から常に音楽について考えていないとできないことだろうし、映画音楽を作る人のことはかなりリスペクトしています。

山中拓也

──山中さんもいつか映画の劇伴を手がけてみたいという思いはありますか?

興味はめちゃくちゃあるんですけど、劇伴を作ってる友達から大変やって聞いているんですよね(笑)。でも自分たちも“勝手に映画主題歌”というコンセプトで曲を作ることがあるので、もっと映画との関わりが増えていったらいいなとは思っています。

──ちなみに作るとしたらどういうジャンルの作品の劇伴を作ってみたいですか?

昔やったら(アルフレッド・)ヒッチコックとかデヴィッド・リンチとか、自分の好きな映画に合うようなめちゃくちゃドープな音楽を作りたがっていたと思うんですけど、最近は歳を重ねるにつれて「これぞ王道!」という映画ばっかり観るようになってるんですよ(笑)。それこそ「トップガン」のような超大作アクションの音楽なんかも作ってみたいですし、「アルマゲドン」ばりに壮大な曲も作ってみたい。

絶対に映画館で観てください

──今作は前作を観ていない方や、前作公開時にまだ生まれていない方もたくさん観られると思いますが、そのような方々に伝えておきたいことはありますか?

まずは「前作を観ろ」、これに尽きます! もちろん今作だけでもめちゃくちゃ面白いけど、特に自分が惹かれたのは前作から引き継がれている部分だったので、甘えんとまずは前作を観ろ!と言いたいです(笑)。

──ちなみに山中さんは普段映画を観られるときは、映画館と配信どちらで観ることが多いですか?

どっちも変わらないくらいかな。スケジュールにもよりますけど、時間に余裕があるときは「映画館で何か観ようかな」と思って調べたりしますし、「この映画は絶対に映画館で観ないと損するな」と思ったときは必ず劇場に足を運ぶようにしてます。

──それで言うとまさに「トップガン マーヴェリック」は絶対に映画館で観ないとダメな作品ですよね。

絶対にダメですね! 今日観させていただいた試写はIMAXだったので、特に臨場感がすごくて。この記事を読んでる人は、絶対に映画館で観てください!

山中拓也

プロフィール

THE ORAL CIGARETTES(ジオーラルシガレッツ)

山中拓也(Vo, G)、鈴木重伸(G)、あきらかにあきら(B, Cho)、中西雅哉(Dr)からなる4人組ロックバンド。2010年に奈良で結成される。2012年にオーディション「MASH FIGHT!」にて初代グランプリを獲得し、2014年7月にシングル「起死回生STORY」でメジャーデビュー。2017年6月に初の東京・日本武道館公演、2018年2月に大阪・大阪城ホール公演を開催。2019年5月には初のアジアツアーを開催し、8月に初のベストアルバム「Before It’s Too Late」をリリース。9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外イベント「PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~」を実施。2020年4月に5thアルバム「SUCK MY WORLD」を、2021年6月から12月にかけて放送されたテレビアニメ「SCARLET NEXUS」のオープニングテーマ「Red Criminal」「MACHINEGUN」をリリース。2022年には1月から3月にかけて初のホールツアー「Hall Tour 2022『SUCK MY WORLD』」を開催し、4月には豪華アーティストを客演に迎えたEP「Bullets Into The Pipe」をリリース。10月に埼玉・さいたまスーパーアリーナで主催イベント「PARASITE DEJAVU 2022 ~2DAYS ARENA SHOW in SAITAMA~」を行う。