TOMOO「Cinderella」インタビュー|異なる価値観に揺さぶられる感情、ソウルフルなラブバラードで描きたかったもの (2/2)

“ダイヤ”に込めた思い

──曲の後半には「見たかったのは1つだけ 君の胸に隠れたダイヤ」というフレーズが出てきますが、この“ダイヤ”というワードは何を象徴しているんですか?

私にとってのダイヤは「普遍性のある誰にも壊せない透明なもの」というイメージなんですよ。なので清濁の境目というか、“清”も“濁”も関係ない、人の美しい部分という意味で使っています。価値観や考え方の違う人と出会ったときって、自分のことを“清”、相手のことを“濁”と思ってしまうことがある。だからこそ、この主人公は相手から逃げてしまったんだと思うんですよね。でも、“濁”だと思っていた相手のもっと向こう側、もっと深い部分には何物にも損なわれない純粋で素敵な部分もきっとあったんじゃないかなって。それを見たかったということですね。

──歌詞で言うと2Aの「最寄り駅に着いたら 霧雨がタクシーの列冷やしてる」のところがすごくいいなと思いました。一見、単なる情景描写のようですけど、実は主人公の気持ちがクールダウンしていく様子を表していたりもして。

そうですね。終電後のタクシーの列に並んでいる人たちって、その前にいろんな出来事があったと思うんですよ。楽しく飲んでいた人もいるだろうし。でも、タクシーの列に並びながら霧雨に冷やされると、いやでも現実へと引き戻されるじゃないですか(笑)。それと同じように主人公の相手への思いもここでスッとクールダウンする。もう関係性に幕が下りてしまった、みたいな。

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BREIMEN・高木祥太の制作

──サウンドプロデュースはBREIMENの高木祥太さんが手がけていますね。

高木さんとの付き合いはすごく長いので、けっこう感覚的な話ばっかりをしながら方向性を決めていきました。まず全体的な雰囲気として、「生音の感じと現代の質感をミックスしてほしい」というお願いはしました。そのうえで、先ほどお話した歌詞の話にもつながるんですけど、「“清”と“濁”のどちらも感じさせるサウンドにしたいんです」とお伝えして。さらにもう1つ、デモはピアノの弾き語りで作っていたから単なるバラードに聞こえるかもしれないけど、そこにブラックミュージックのニュアンスを足してもらいたかったんですよね。私がブラックミュージックに憧れ始めたくらいの時期にできた曲でもあったので、そこはどうしても反映させたかったんです。なので「あの頃、プリンスとかをよく聴いてたんだよね」みたいなお話はさせてもらいました。

──高木さんにサウンドプロデュースをお願いしたのは、そういった明確なアレンジのイメージがあったからですか?

はい。高木さんならきっとイメージ通りの形にしてくれるだろうなと思いました。私は高木さんの弦のアレンジがすごく好きなんですよ。弦を使ったドラマチックな感情表現がすごくお上手な方なので、ブラックミュージックの持つ肉体的な雰囲気と、弦による少し気高くて気品のある雰囲気のどっちも盛り込んでもらえたらなって。

──ブラックミュージックの雰囲気をまといながらも、さまざまなエッセンスを感じられる絶妙なアレンジだと思います。

そうですね。ピアノ1本のデモの段階でけっこういろんな要素が混じっている印象があったんですよ。で、高木さんは1つのジャンルをルーツ的に絞ってやるのではなく、いろんなものをごちゃ混ぜにしているイメージが昔からあったので、この曲をお願いするなら高木さんしかいないなって。そこも大きな理由でした。

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5年経ったからこそ表現できた

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

ボーカルのディレクションも高木さんにやってもらったんですよ。細かいニュアンスや情感にもこだわっていろいろアドバイスをいただけるので、そこに導かれながら歌っていった気がします。

──デモの段階でご自身なりに見定めていた表現もあったんですか?

いや、デモのときは雰囲気でなんとなく歌ってたんですよ。歌に関してもブラックミュージックのニュアンスを出したいというイメージはあったんですけど、当時の自分には「まだ無理だな」と思っていたところがあったんですよね。

──そういう意味では、曲の大本が生まれてから5年が経った今だからこそイメージ通りの形に仕上げられたということなんでしょうね。

そうですね。最近はほんの少しずつですが、洋楽っぽい、ブラックミュージックっぽい歌い方も体に馴染んできたような感覚があります。今回はあまりそこに寄せようと意識したり、カッコつけたりすることもなく、自然と歌うことでそういう表現ができたかもしれない。全体的に感情を放出しすぎず、でも放出してもいい瞬間をちゃんと見定めることだけ気を付けて歌っていた感じです。基本的にすごく感情的な曲なので、あまりトゥーマッチになりすぎないように。

──ご自身的に感情をもっとも放出させたところはどこになりますか?

中盤の「あの夏の二人はいない」のところと、最後のサビの「変われないままの私を許してさ」のところかな。特に最後のサビに関しては感情的な部分に加えて、流れるように歌うことを意識したんですよ。口の開け方で語が変わってはいるけど、1本の大きな川のように歌が流れていくっていう。それもプリンスからの影響なんですけど、今回は少しうまくできたんじゃないかって(笑)。

──Aメロの2ライン目の語尾でちょっとため息っぽい声が入っていますよね。あそこもすごく印象的でした。

あれはデモの段階から入れていたんですけど、自分的にはだいぶ照れるやつで。当時の自分は「こんなのもいいかな」と思い切ったんでしょうね(笑)。

──2023年の幕開けを飾る本作が、どうリスナーのもとへ届くのかが楽しみですね。

実はこの曲、去年の頭にやったワンマンライブで一度弾き語りでやっているんですよ。そのときは「Cigarette」というタイトルで、コード感も今とは少し違ったんですけど、「もう一度聴きたいです」と言ってくれるファンの方がけっこういらっしゃったので、こうやってリリースできるのがとてもうれしいです。どう聴いていただけるかは想像できないところもありますけど、自分の曲の中であまり同じ系統が見当たらない仕上がりになったし、私としてはすごく好きな曲なので、たくさんの方に届いてくれたらいいなと願っています。

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ライブ情報

TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 "BEAT"

  • 2022年12月16日(金)福岡県 DRUM Be-1
  • 2022年12月24日(土)北海道 cube garden
  • 2023年1月7日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2023年1月8日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2023年1月15日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

TOMOO(トモオ)

1995年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。6歳からピアノを弾き始め、高校時代にYAMAHA主催のコンテスト「The 6th Music Revolution」ジャパンファイナルに進出した。大学進学後に本格的に音楽活動をスタートさせ、2016年8月に1stミニアルバム「Wanna V」を発表。2021年8月に発表したシングル「Ginger」がさまざまなアーティストから注目され、ミュージックビデオは170万回以上再生されている。2022年8月にポニーキャニオン内のIRORI Recordsより配信シングル「オセロ」でメジャーデビューを果たし、同月にキャリア史上最大規模の会場である東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でワンマンライブ「TOMOO one-man live "Estuary" at LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)」を開催。2023年1月には新曲「Cinderella」を配信リリースした。現在は全国ツアー「TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 "BEAT"」を開催中。

衣装協力
ドレス / 47300円(AMBERGLEAM)
トップス / 9900円(AMBERGLEAM)