ナタリー PowerPush - Tommy february6

川瀬智子15周年を飾る“原点回帰”盤

フェブラリーとヘヴンリーの間の部分にスポットを

──では今作の話をすると、15年という節目の年になぜフェブラリーとしてのリリースを選んだんでしょうか?

Tommy february6

ひとつのことを続けてきているわけじゃない、the brilliant green、february6、heavenly6という3つの名前でやってきた川瀬智子の15周年っていうのが自分にとって一番しっくりくるなって思っていたから、いっそ3タイトル出したいなって。だから年内であと2枚はリリースする予定です。

──年内で!!

予定です(笑)。3枚目は年を越すかもしれませんけど。スタッフサイドにも「できるなら出してください(笑)」って言っていただけました。ここから先はまだほとんどノーアイデアなんですけどね(笑)。がんばります。

──今作は歌詞を読むと、今までのフェブラリーとは違った、ちょっとダークな世界観がありますよね。川瀬さん自身もTwitterで「新しい段階に突入します」と解説していましたが。

ヘヴンリーが登場して、フェブラリー作品で闇を表現する必要がなくなって以来、本体である自分の中では単純に「天使のささやき」と「悪魔のささやき」みたいな割り振りで世界観を描くようになっていったんですが、今回は次作にヘヴンリーのフルアルバムが控えていたので、2人の間の部分にスポットを当てようと思いました。in betweenというか、ゆっくりヘヴンリーにフェードインしていく段階のフェブラリーっていうのかな。そもそもフェブラリーは建前的な部分の表現が強くて、フェブラリー自身の理想の自分なのか、勝手に私はこう見られている、これを求められていると自分の世界を作り込んでそれに縛られて勝手にストレスをためているようなイメージがあるんです。そのバロメーターが一定数を超えたときに混乱が生じて、お酒や甘いお菓子で紛らわせないフラストレーションの爆発状態がへヴンリーの世界観かな。今回はフェブラリーの作品の中で混乱や闇の本質も歌っているので、はっきりとフェブラリーとヘヴンリーのつながりを感じてもらえる作品になっていると思います。サウンド的にも、トランス感、EDMの存在感が大きい作風なので、そのへんのアッパーなテンションのダンス系音楽が好きな人にも聴いてもらいたいです。

いつか英語詞だけの完全版を作ることが目標

──1曲目の「FAIRY DUST」の冒頭から「君が通り抜けて来た苦しみを知っている」とか、「ANGEL FADE」での「混乱…分裂…これが私」とか、フェブラリーらしくない言葉使いが目立ちますよね。

「ANGEL FADE」は、まさにヘヴンリーの前段階をイメージして聴いてもらいたいです。ストレス状態からだんだん荒んできて、普段は好きなガーリーなパステルな世界観が崩れていく様を冷静に見つめて、チェンジすることを受け入れているような……本当の私は……っていう感じで、作品の中ですでにほとんどヘヴンリーに乗っ取られかけている感じ(笑)。「FAIRY DUST」もそうで、対訳を読んでもらえると、フェブラリーが本当はどういうキャラクターなのか想像してもらいやすいと思います!(笑)

──全曲英語詞にしたい意向もあったんですよね?

うん、本当はね。でもいろんな意見があって実現しなかったので、いつかはこのアルバムの英語詞だけの完全版を作ることが新しい目標。難しいかもしれないけど挑戦してみたい夢です。

──英語で詞を書くよさってなんでしょう?

英語詞のほうが合うと思った曲には英語詞を付けて歌ったほうが、曲を生かせると思うんです。やっぱり音楽って、まず音を楽しむってことだと思うから、聴いてくれた人にもそれが伝わるアルバムになっているとうれしいです。あとは、英語詞ならストーリーやメッセージも想像しやすいし、声があるから、ちゃんとフィーリングで伝わるんじゃないかなって思うんです。対訳を付けることで内容も伝わるし。

──川瀬さん自身も洋楽がお好きなんですもんね。

そうそう。だから英語で歌うことが好きだし、英語で歌うことが前提の作品作りをしたい気持ちはデビュー前からずっとあります。日本語詞を書いて歌うのも好きになりましたけど、英語の響きのほうが好きです。対訳を考えるのも好きです。でもね、やっぱり英語詞を書くのは難しい(笑)。今回は特に言いたいことがたくさんあったし、ちゃんと英語の曲として聴けるものにしたかったから、友達(イギリス人、アメリカ人の音楽関係者)に手伝ってもらって、歌いたい内容を正確な英語の歌詞にしてもらいました。こういう共作は世界観も広がるし、格段にクオリティが上がるのでうれしかったし楽しかったです。その分歌うのはめちゃくちゃ難しかったんですけど、挑戦するのもゲーム感覚で面白いし、英語詞で歌えて歌に対しての情熱を再認識できた気がします。

──歌いたい内容というのは、フェブラリーからヘヴンリーに変わっていくストーリー性?

そうですね。「FAIRY DUST」「RUNAWAY」「ANGEL FADE」は特に意味を持たせた曲です。

ゴールはいつも見えているから、どう作るかの勝負

──15年という記念の作品でもありますし、フェブラリー=天使、ヘヴンリー=悪魔という今まで通りのわかりやすい世界観で作る選択もあったと思うんです。なぜ今回はこういった展開に?

Tommy february6

ある意味では原点回帰なんだと思う。もともとフェブラリーはいい子のフリをしているけど、心の中には闇を抱えているキャラなので、ちょっとシニカルな表現や毒っ気も表現していきたいプロジェクトだったんですけど、ヘヴンリーが登場してダークサイドを表現したことで、フェブラリーは自分の闇を表現する必要性がなくなって、そうしたら毒っ気の抜けたフェブラリーと自分の重なるところがあまりなくなって、何を表現したらいいかわからなくなったんです。だから今回は原点に戻って、彼女の本質がチラチラ見える作品にしようと。英語で歌うっていうところも私にとっては原点回帰だし。

──ジャケットにもかなりこだわっていて、特に今回だとピンク色を出すのに時間がかかったと聞きました。

そのジャケットの表1(※オモテ面)候補だった写真は、初回盤デジパックの中に移動して使いましたので「ああこれかっ」て見てもらえるといいかも(笑)。最初の色のままだとボツだったけど、ちゃんと好きな感じに直してあります(笑)。結局表1は、デザイン自体を考え直して今のデザインになりました。もともとステッカー用に物撮りでシェイクやパフェを撮っていて、その写真がすごく好きだったのでもうこれしかないなと思って。いつも一応、イメージのゴールは見えているから、どうそれを現物として作るかの勝負なんです。

──アートワークも譲れない部分なんですね。

特にフェブラリーとヘヴンリーは自分の中ではっきりしたイメージや立ち位置があるから、それに合っているか間違っていないかジャッジします。最終的に判断するのは私だから、アートディレクションは自分でやったほうが早いっていうのもありますね。

ニューアルバム「TOMMY CANDY SHOP SUGAR ME」 / 2013年6月12日発売 / Warner Music Japan / 初回限定盤 [CD+DVD] / 4300円 / WPZL-30596~7
初回限定盤 [CD+DVD] / 4300円 / WPZL-30596~7
通常盤 [CD] / 3150円 / WPCL-11416
通常盤 [CD] / 3150円 / WPCL-11416
CD収録曲
  1. FAIRY DUST
  2. SUGAR ME
  3. RUNAWAY
  4. ANGEL FADE
  5. SPACEY COWGIRL
  6. PINK ARMY
  7. AI NO AI NO HOSHI
  8. MY VACATION
  9. SUMMER BUBBLES
  10. BE MY VALENTINE
初回限定盤DVD収録内容
  1. SUGAR ME(Music Video)
  2. RUNAWAY(Music Video)
  3. SUGAR ME(Dance Video)
  4. RUNAWAY(Dance Video)
ニコニコ生放送「Tommy february6 NEW ALBUMリリースパーティ~CANDY SHOPへようこそ!!~」

配信日時:2013年6月14日(金)21:00~

Tommy february6(とみーふぇぶらりー)

the brilliant greenのボーカリスト・川瀬智子によるソロプロジェクトのひとつ。明るくポップでフェミニンなキャラクター設定を持つ。2001年に活動を始め、デビューシングル「EVERYDAY AT THE BUS STOP」ではチアガールのコスプレで話題を集める。2012年2月、Tommy february6のダークサイドであるTommy heavenly6との共同名義によるアルバム「FEBRUARY & HEAVENLY」で約7年ぶりに再始動した。これ以降活発にリリース活動を行っており、2013年6月にはニューアルバム「TOMMY CANDY SHOP  SUGAR ME」をリリース。